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神経系③ 伝導路

ここまでで、中枢神経と末梢神経の構造や機能を見てきたので、

続いて、中枢↔末梢間はどんなルートを通るのか(・・?
いわゆる「伝導路」についてみていきたい。

大枠は、
・命令を受けて動く(中枢→効果器)運動路と
・刺激を受けて感じる(受容器→中枢)感覚路
の話で、中枢神経の解剖を覚えておけば、名前もそのまんまのものばかり。
先人たちもちょっとでも覚えやすい名前を!と思ったのであろう。
何かしらの発見に人物名付けちゃった上に、いろいろ発見しすぎちゃって、後世の人がわけわからんなる現象を想えば、頑張って覚えようという気持ちになる。(決してクッシングさんのことを悪く言っているわけではない)

てことで、鍼で人差し指刺しちゃって
「いったー(;゚Д゚)」とかなったときは、
「C6分節にある高閾値機械受容器への刺激が
 Aδ(Ⅲ)線維を伝わったんだな…
 その線維って正中神経の一部だから
 円回内筋くぐって内側二頭筋溝とおって
 上って行ったんだなぁ…
 正中神経って腕神経叢からの枝だから
 頸もとで斜角筋隙くぐり抜けたんだなぁ…
 それから、C5-6間の椎間孔とおって
 脊髄後根から脊髄にinして
 後角の中枢神経細胞とシナプスったんだなぁ…
 その神経線維は反対に向かって、側索経由で
 脳幹とおって視床でシナプスってからの
 内包くぐり抜けて中心後回まで行ったなぁ…」
とか考えていると、神経系の復習ができるうえに、痛みによって生じるイライラや悲しみも忘れられる。

てことで、いい加減本題に入る。

ざっくり運動&感覚の経路

運動であろうが感覚であろうが、
中枢(大脳・脳幹・脊髄)
 ↔ 末梢(内臓・筋関節・皮膚)
のルートを通っている。
いくつか経路はあるが
 【運動】
 一次Nが中心回(運動野)から出て
 二次N(末梢N)と脊髄角でシナプス
 →効果器へ
 【感覚】
 一次N(末梢N)が受容器からの刺激を受けて
 二次Nと脊髄角or延髄索核でシナプス
 三次Nと視床でシナプスして中心回へ
大脳皮質の機能局在とかベル・マジャンディの法則で、どっちだったっけ?ってなったら
運動は前・感覚は後だけ覚えとけばいける。

ざっくり伝導路
~感覚神経側の線条体(被殻+尾状核)は見やすいように切り取ってみたので、心の目で見てほしい~

ざっくりみた時の運動路と感覚路の
共通点は
※投射線維である内包を通ること。
相違点は
※感覚路は中継地点視床でシナプスを作ること。
運動は神経2本で中枢→末梢(下行性/求心性
 感覚は神経3本で末梢→中枢(上行性/遠心性)に伝わること。

てことで、ここからは中枢Nから末梢Nのシナプス地点までのルートを運動路・感覚路それぞれ見ていく。
伝える信号によって神経の種類も使い分けてるので、そこも併せてCHECK!
↓神経細胞の基礎はこちらを参照↓


運動路(中枢→末梢)

運動路は中枢(脳)からの命令で末梢(筋肉)を動かすための経路で、
皮質延髄路(脳N)とか皮質脊髄路(脊髄N)
のような、上(脳)から下(脳幹・脊髄)に
向かう下行性伝導路がそれ。
皮質脊髄路は延髄錐体通るので錐体路ともいう。
対応する末梢Nは一番太い線維。考えたことを即実行に移す行動力を見習いたい。
ここでは、皮質脊髄路を中心に、皮質延髄路と錐体外路を補足として確認していく。

皮質脊髄路(錐体路)

まずはシンプルな錐体路から
手足や体幹を動かす皮質脊髄路は、
大脳皮質(中心前回)から出ていった
一次N(中枢N)内包とおって下行し
脊髄前角でシナプスして二次N(末梢N)
信号を伝えますよっていう回路。

皮質脊髄路
〜雑に描いたボディが思いがけずたくましい感じになってほどよく気持ち悪いイラストになった〜

延髄通過するときのルートで大きく2種類に分かれる。
8割がたは外側皮質脊髄路
・延髄錐体交叉で対側に向かい
・脊髄の外側(側索)を降りていく。
2割くらいは前皮質脊髄路
・ストレートに前角を目指して
・脊髄の前側(前索)を降りていく。
脳卒中で、片方の脳が障害されると、
対側の症状が目立つのは、
良く動かす四肢は外側皮質脊髄路
体幹は前皮質脊髄路がメインだから。

皮質延髄路(皮質核路)

運動線維が通る経路の脳神経ver.
脳卒中の症状には、手足の麻痺(片麻痺)の他に
顔面神経麻痺や舌偏位(歪斜)のような
脳N系のものもあるが、眼球の運動が障害されるとかは聞いたことないかも??
どゆこと?(。´・ω・)?ってなるのは、
皮質脊髄路では大半が
左右片方の脳が体の左右片方を支配するのに対し
皮質延髄路では大半が
左右両方の脳か左右どちらも支配しているから。
ちょっと何言ってるのかわかんない感じになったが、
イメージはこんな感じ↓

脳神経と脊髄神経の運動路
〜顔面神経は、前頭筋のみ両側支配〜

例外として
・左右片方の脳から同側に向かう
 →首を動かすN(副N)
・左右片方の脳から対側に向かう
 →顔・舌を動かすN(顔面N・舌下N)
  ※おでこ動かす顔面Nの枝除く
というパターンもあるので、脳Nが支配している顔面部でも症状が出やすい部分とそうでない部分がある。
細かいルートはいいとして、
特徴的で中枢性or末梢性の鑑別ができる
顔面Nはおさえておきたい。

顔面神経麻痺
~中枢性のほうが大変なのに、末梢性より顔面の症状だけで言えば軽い~


錐体外路

動くぞ!と思って動く場合(随意運動)は、錐体路を通るので、無意識に運動を制御している運動路を錐体外路という。
赤核脊髄路とか視蓋脊髄路とか前庭脊髄路とか網様体脊髄路とか…覚えられるかー!!!ってなるが、どれも上(脳幹)から下(脊髄)の名前で、錐体路で覚えた名前じゃないので、「錐体外路かな?」とお察しできる。
錐体外路は、無意識の運動調節でおなじみ大脳基底核を通るので、大脳基底核の障害でみられる不随意運動を錐体外路症状といったりもする。

感覚(末梢→中枢)

感覚路は、末梢(皮膚・筋肉・関節など)で受け取った刺激を中枢(脳)に伝える経路で、
脊髄視床路とか後索内側毛帯路(後索路)とか下(脊髄)から上(脳)に向かう上行性伝導路がそれ。
※視床は感覚の中経地点なので、名前についてなくても、もちろんここでシナプスる。
※例外で嗅覚には視床を通らない伝導路もある。

体性感覚は、皮膚感覚と深部感覚に分けられる。
 皮膚感覚:痛覚・温度覚・触圧覚
 深部感覚:深部痛覚・位置覚・運動覚・振動覚
とあるが、経路でみると
外側脊髄視床路←温度覚・痛覚
前脊髄視床路←粗大触圧覚
後索路←精密触圧覚・深部感覚
に分けられる。
ちなみに、意識に上らない運動の感覚は
脊髄小脳路を通る。

温痛覚~外側脊髄視床路~

外側脊髄視床路は、
①刺激を感知した一次N(末梢N)から
脊髄後角でシナプスして二次N(中枢N)
 
※ シナプス後、対側に向かい脊髄側索を上行
視床でまたシナプスして三次N(中枢N)
の流れで内包とおって大脳皮質(中心後回)
に信号を伝えますよっていう回路。

温痛覚
〜キツめの刺激は太めの繊維で速めに伝わる〜

温度覚や痛覚というのは
・冷たいor温かい
・鋭痛(一次痛)or鈍痛(二次痛)
を感じるわけだが、それらは
神経細胞の末端(自由神経終末)で感知する。
名前の通り決まった形状があるわけではないが、
・鋭い痛みを感じる高閾値機械受容器
・鈍い痛みや温度、化学的刺激を感じる
 ポリモーダル侵害受容器
に分けられる。
感知した刺激は
冷感・一次痛→Aδ線維(Ⅲ)
温感・二次痛→C線維(Ⅳ)
と伝わっていく。
線維の太さの違いについては
冷たい!痛いっっ(;゚Д゚)!のほうが
温か~い!いた~い( ;∀;)より
切羽詰まった感があるので納得。
ただし、熱痛(45℃超え)レベルになると
Aδ線維で伝わる。
これもリアル熱湯風呂を想像すると納得。

ちなみに、痛み(二次痛)による
自律神経症状や情動の変化などは、
脊髄網様体路を経由して起こる。
ルート:後角ー対側側索→延髄網様体
    →視床(痛い)
    →視床下部(自律N)
    →大脳辺縁系(情動)
    →中脳中心灰白質(鎮痛)※
※どうやらこのルートが鍼灸治療で痛みが治まる理由のひとつらしい。

触圧覚

触圧覚には、
どんなものがどこ触れているか分かる精細触圧覚と何か触ってる?くらいの粗大触圧覚がある。
温痛覚との違いは、伝わるルートだけでなく、
特定の形状の受容器が存在するところ。
 触覚:毛包受容器、マイスナー小体
 圧覚:メルケル盤・ルフィニ小体
 振動覚(深部感覚):パチニ小体
順応の速さは振動・触覚・圧覚の順。

触圧&深部感覚
〜横文字の中で異彩を放つ毛包受容器が気になって仕方ない〜

粗大触圧覚~前脊髄視床路~

前脊髄視床路は、
①刺激を感知した一次N(末梢N)から
②脊髄後角でシナプスして二次N(中枢N)
 
※ シナプス後、対側に向かい脊髄前索を上行
③視床でまたシナプスして三次N(中枢N)
の流れで内包とおって大脳皮質(中心後回)
に信号を伝えますよっていう回路。
そのくだり温痛覚のところで聞いたわ(# ゚Д゚)
デジャヴュ(。´・ω・)?
と思った人は間違い探しが苦手なはず…
粗大触圧覚は脊髄前索をとおる点が違う!

精細触圧覚・深部感覚~後索路~

後索路は、
①刺激を感知した一次N(末梢N)から
 ※同側の後索を上行
②延髄後索核でシナプスして二次N(中枢N)
 ※対側へ(内側毛帯を作りつつ…)
③視床でまたシナプスして三次N(中枢N)
の流れで内包とおって大脳皮質(中心後回)
に信号を伝えますよっていう回路。
脊髄視床路とは違い、脊髄ではなく延髄で
シナプスしてから対側に向かうのがポイント。

ちなみに、意識に上らない深部感覚
(筋や腱の引っ張られ具合とか)は、
脊髄小脳路を通る。
(ルート:脊髄後索→胸髄核→下小脳脚→小脳)

伝導路と脊髄の病変

運動や感覚の伝導路は中枢と末梢をつなぐ通路なので、手足に向かう神経は必ず脊髄を通過する。
てことは、脊髄のどこかに病変があるとそこで伝導路が通行止め状態になる。
なので、運動も感覚も全部やられる横断性の脊髄損傷は置いといて、この部分のこの感覚だけおかしい…みたいな場合は、どの辺がやられているのか推測できる。
Ex.)どんなものがどこに触れてるかとか、
  関節の曲がり具合とかは分かるけど、
  動かせないし、ちょっと感覚鈍いかも?
  =精細触圧覚・深部感覚は無事
   運動・粗大触圧覚・(温痛覚)✕
  →後角・後索〇前角・前(側)索✕
  →脊髄前の方に病変があるのかな?
あんまりお目にかかる機会はないけど、
伝導路が関係する特徴的な症状を示すものに、
脊髄片側の病変によるブラウン・セカール症候群
脊髄の中心部の病変による脊髄空洞症がある。

片側✕ ブラウン・セカール症候群

脊髄片側の障害によって
・同側の運動麻痺、深部感覚消失、触圧覚低下
・対側の温痛覚消失、触圧覚低下
といった症状がおこる。
これは、
・同側に症状が出る伝導路は脊髄内で交叉しない
・対側に症状が出る伝導路は脊髄内で交叉する
という違いによる。ブラウン・セカール

ブラウン・セカール症候群
~触圧覚は延髄で交叉するVer.と脊髄で交叉するver.があるので、消失ではなく低下~

中心部✕ 脊髄空洞症

脊髄内(灰白質部分)の一部に空洞ができ、
宙づり型の温痛覚障害が起こる。
この症状の出方は、
温痛覚の伝導路(外側脊髄視床路)が、脊髄内で中心付近を横切って対側に向かうことによる。
※頚髄に好発するため、上肢の症状が出がち。(cf.腕神経叢)

脊髄空洞症
~片手にぬくぬくおしぼり持ちながら片手刺されてる…居酒屋の客が酒飲んで暴れたのかな?~

伝導路まとめ

長々と書いてきたが、まとめて書いてみると意外とシンプルになった。

伝導路まとめ
~いろいろ端折ってるけど、シンプルに見たらこんな感じ~

というわけで、今回はここまで。
次回は自律神経をやって、ついに神経から解放される予定。

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