鈴木涼美『JJとその時代』
著者の本を読むのは実は初めてだったのだが、雑誌研究の一事例として読んだ。ゼミ生でファッション誌の雑誌研究をしてみたいという子がいたら見せてみようと思う。女性誌については、坂本佳鶴恵『女性雑誌とファッションの歴史社会学』という本格的な学術書も出ていて、これは読んだことがある。
雑誌があまりにも多様だからだが、学生に「雑誌」とは?と言ったときにまあ論壇誌みたいなものを挙げる人はほとんどいなくて、コンビニでも売ってるファッション誌か、趣味の雑誌、漫画雑誌を連想する人が多い。この点はよほど気をつけないといけなくて、明治時代の『太陽』とかについて話している時にこの視点が抜けていると歴史は今とのつながりを欠いた、自分にとって価値のないつまらない情報として試験に出るから覚える対象になってしまう。
印象に残った箇所をいくつか。
JJ衰退期に関して
これは自分がファッション誌読まないからだな…と思ったりしたのだが、自分は明治時代の同人誌研究をしてきて、こういう視点を欠いてたのではないかと反省した。つまり雑誌によって「何者」かになるという視点は、虚を突かれたというか、「あっ」と声が出そうになったというか。
「誌友交際」といい、匿名コミュニケーションにある種の現代性に通じるものを見出しながら、いっぽうで「雑誌を使って何かをする(友達を作る、ふざける)」という側面だけを自分は切り取っていて、「何者かになる」面を無視してこなかったかとふと考えてしまった。男子中学生たちは、論壇で大きな顔をしている批評家には背を向けるものと決めつけて無視してこなかったか。彼らの中にも「ああやって評論を書いて有名になって周りにキャーキャー言われたい」という欲望があったかもしれないのに・・・と、本書を離れてしまったが、そういうところまで考えた読書体験だった。