泉鏡花と赤門派
『論集泉鏡花』第7集(和泉書院、2022)所収の鈴木啓子「本郷台の青春挽歌―『湯島詣』と赤門派についての覚書―」で高山樗牛が出て来る。著者からお送りいただいた。
鏡花の小説『湯島詣』の登場人物が当時の帝大の学生をモデルにしている、という話についての考証である。とても勉強になった。
なかでも吉田賢龍、笹川臨風、畔柳芥舟のほか、柳田国男も出てくるという。
キーマンが笹川臨風で、笹川が明治28年頃寄宿舎に住んでいた折、姉崎正治と畔柳芥舟と笹川が同じ四人部屋で、高山樗牛もいたけど出ていったので、三人で占拠していた。そこに泉鏡花が時々やってきた、と笹川臨風の『明治還魂紙』に出てくるのである。
だから樗牛と鏡花の直接の接点があるというわけではない。すれ違いのような形である。
寄宿舎に泉鏡花が時々来ていた話は姉崎正治の自伝にも出て来る。親しかったのは臨風だという。
著者は樗牛の伝記である工藤恒治『文豪高山樗牛』に見られる樗牛引っ越しの日時と、臨風の回想の微妙な矛盾を解釈しようと試みている。
このあたりのことは余り突っ込んで調べていなかったが、樗牛伝の材料としては非常に重要なものとなってくるはずで、しっかり考えをまとめたい。