五百旗頭真『占領期』
いままでちゃんと読んでこなかった自分の不勉強を晒すようなのだが、先日、熊本学兄の『幣原喜重郎』に触発されてようやく、本当にようやく、五百旗頭真『占領期』を読んだ。つくばの古本屋で売っていて運命的な感じがしたのでその場で買った。この読売新聞社の「20世紀の日本」シリーズ、私が大学に上がるか上がらないかくらいの刊行なのだけれど、結構その後影響を与えた本が多いように思う。
まず文章がすごい。引き込まれる。危機の時代のリーダーシップについて、あれこれと考えさせられる。
例えば東久邇宮内閣下、陸軍少壮軍人による皇居占領計画の最中で、東久邇首相が首謀者にあって説得する場面。
あるいは、公職追放の指示に翻弄され抗議として総辞職を考えたが踏みとどまった幣原首相を評するつぎのくだり
政治信条の上では農地改革には反対なのだが、「しかしどうしてもやらなければいかんとあなたがおっしゃればやります」といって、和田博雄農相を庇う吉田首相への評価は結構高い。
片山内閣末期の様相も、この記述だけでも読むと思わず息が詰まる。
これらと比べるとその後の芦田首相評はかなり気の毒になる。評価が高いのはその後再登場した吉田首相だ。『劇画小説吉田学校』などでも名場面で書かれる山崎首班工作のあとで。
どなたかが、疲れたときに元気が出る英雄物語というような評をされていたが、確かにそんな感じだ。
どんな組織であれ、昨今の改革で疲れ切ったなかで、リーダーシップの理想について宰相たちの行動を見ると胸に沁みるのではないか。同時に、20代までしか歴史の勉強しないのはもったいないなと少し思った。こういう文章が書けるようになる気はまったくしないが・・・。
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