わたしの世界を旅する-コーカサス発トルコ経由南欧行(4)
6月19日:昨日ツーリストインフォメーションで教えられた、北に7㎞ほどあるDidube駅の前にあるバスターミナルに行き、各方面へのバスについて情報を仕入れに歩いた。これくらいの距離なら物見遊山ついでに歩くのだった。
バスターミナルでは、カズベギとバトゥーミ行のバスについて情報を得ることができた。ただし、早朝深夜以外は大体人がそろったら出発する、という予想通りの発車の仕方だった。ただ、今日の人の数を見る限り、すごく長い時間まちぼうけ、ということはなさそうだった。
トビリシで有名な温泉(公衆浴場)に行ってみようかと、メテヒ教会のあたりに戻ってきた。その入り口の辺りで昼から一杯やっている若者たちがいて、遠くにいる自分を大声で呼んでいた。近づくと、どこから来たんだ、奢るから一緒に飲もうといった。彼らは三人組で大学生だった。シシャモのような川魚をつまみにウォッカを飲んでいた。坂の上に見える建物の二階から顔を出した知り合いのおばさんに愛してるよと投げキッスをした。たどたどしい英語でFワードを言った。その内の一番酔っぱらった一人が、自分の一眼レフを貸してくれと言った。他の二人が大丈夫、絶対に悪いことはさせないからというので貸すと、自分に向けて何枚もシャッターを切った。あとから見ると全然ピントが合っていなかった。彼は、いよいよ酒が回って自分や友達にも悪態をつくようになった。ウォッカは確かに強く喉が熱くなった。しだいに金をくれ、と何回も言うようになって、いよいよ面倒なので帰ろうかと思った。他の二人は最初、自分の名前を言って、本当にごめん、恥ずかしいよ、実際にもらったりはしないから、と言っていたが、最後には、今日のタバコ代だけでも恵んでくれないかと言った。少しお金を置いてその場を離れた。
彼らはもちろん日本人(アジア人)に対して見下したり差別したりしなかった。しかし、日本が経済的に豊かであることに対する見方には諦めと羨望のようなものがあった(一眼レフの値段をドル換算でいうと彼らは驚いた)。言葉の端々にそれがあって、実際は国と国の経済規模の違いなのに自分と彼らの間に越えられない隔たりがあるような気になった。次の日は早かったので、帰路についた。