家を出る決意をした。月収は2万。
久しぶりに家族に腹が立った。
どうしようもないくらい怒鳴りたかった。
そのままどこかへ逃げようと思った。
何もできない自分にも腹が立った。
家を出よう、と思った。
昨日、久しぶりに家族で出かけた。
仲良く買い物を済ませて
久しぶりの外食を楽しんでたはずだった。
些細なことで両親が喧嘩した。
原因は母にもあったし、父にもあった。
料理の味は覚えていない。
食欲も失せて最後は父と弟に
ステーキを分け与えた。
私はそれとなく両親の間に入った。
それぞれに話しかけ、
それぞれの横を満遍なく歩いた。
私は悪くないのになんで
こんな嫌な思いしてるんだろ、
と何度も思った。
両親は普段は仲が良い。
ただ、些細な口喧嘩をきっかけに
空気が険悪になることがある。
その度に私は仲を取り持っていた。
ただし今回は違った。
私の中で「もういいや」と
諦める気持ちがあった。
帰りの車内の空気は最悪だった。
今すぐ降りて行きつけの酒場で
気分を晴らそうかとも考えた。
私の財布はそこまでの余裕が無くて諦めた。
自分が情けなく思った。
家に帰ってから両親は
何事もなかったかのように飄々としていた。
ただしお互い一言も会話はしない。
私か弟にだけ話しかけ、
さも「いつも通り」と言わんばかりに
過剰に話を続けようとした。
鬱陶しくなりすぐ部屋へと戻った。
どうしようもないほど
珍しくイライラしていた。
「クソだな」と心底思った。
「こんな家、出てやりたい」と思った。
最近、家族の言動が変わった。
父は言葉選びをしなくなったせいで
母との些細な言い合いが増えた。
母はやたら金の話をするようになり、
些細な言葉で不貞腐れることが増えた。
弟は、出かけることが多くなった。
家族のこの歪みは、
明らかに私が原因だとわかる。
私が1年以上も無職だから。
親の下でぬくぬくと
甘えた生活を続けているから。
家族の生活を逼迫し続けているから。
薄々ずっとわかってはいたけれど、
ぬるま湯の生活に慣れすぎて
努力や進歩を望まなくなっていた。
その結果、私は
「空気悪いから一人で帰るわ」
とタクシーに乗る事さえ叶わない
文無しの人間になっていた。
自分を甘やかしていた罰が当たったと
うんざりするほど思い知らされた。
仕事を辞めて1年、私は
ニートとして家で時間を過ごした。
最初の半年は何もしていなかった。
貯金が尽きるまで遊んだ。
半年してから家のことに手を出した。
炊事は母の仕事が遅い日に、
掃除は汚れが目に入ったら、
洗濯は溜まった服が山になったら。
そんな生活をするようになった。
1年が過ぎてライターを始めた。
求人サイトで見つけた会社と契約。
しかし仕事は思っていたより来ない。
ひと月に2,000円程だけだった。
2か月してフリーランス向けの
仲介サイトで仕事を始めた。
何度も依頼をくれるクライアントができた。
それでも月収は5,000円だった。
そこから2か月が経ち、
継続した仕事ができる契約を複数した。
サボり癖が強いせいで
毎回〆切ギリギリの納品だが
内容の評価は高かった。
以前契約した会社からも多く案件を
もらえるようになれた。
今月末、2万円が振り込まれる。
私の財布には、今は6,000円しかない。
口座には端数の数百円しかない。
来年度からは知人に立て替えてもらった
遊びのお金を毎月返していかねばならない。
今月は、まだ5,000円分しか働いていない。
「いつまでもあると思うな親と金」
この格言の本質が昨日初めて理解できた。
変わるしかない、甘えてられない、
やるしかないんだわ。
今まで散々甘え続けた自分と別れる。
情けない自分が嫌になった。
だから私は家を出たい。
今日という日は、働いて働いて働いて、
文字書きの仕事で独り立ちしたい、と
始めて思えた素晴らしい日だ。
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