栗本薫さんのこと――没後十年と『転移』に寄せて
中島梓/栗本薫さんの闘病記・絶筆である『転移』を読む。まず何よりも彼女が亡くなったのが既に十年前であることに(迂闊ながら)驚いてしまった。旦那さんによる「私の奥さんは他界してしまいました」というコメントはよく覚えていたので、せいぜい数年前のことのように思い込んでいたのだが、あれも mixiでのコメントだったらしく、私はミャンマーに渡航する前にそれを目にしたのだということになる。
読了直後の感想を端的に言えば、誰もが指摘することだが、やはり「書くこと」への中島/栗本さんの熱を強く感じた。2009年の5月26日に亡くなっているのだが、その前月の4月にも180枚ほどの原稿を書いていたそうだし、昏睡状態に陥る直前まで闘病記を書こうとして、その最後の痕跡が絶筆になっている。
以下、既に亡くなった方について率直な個人的感懐や評価を色々と書くので、面倒を避けるために有料としておく。私は中島梓さんというか、栗本薫さんの代表作である『グイン・サーガ』の、だいたい50巻くらいまでのファンなのだけど、この書き方でピンとくる人にはピンとくるだろうから、そのあたりで、購読したりしなかったりのご判断をいただければと思う。
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