啖呵 その十

新品の服の老人お父さん
娘の着せ替え悪くないけど
どこかリカちゃんの彼氏みたいで不安になる

三回聞きに来て
笑って答える詰め替えシャンプー
どれがリンスなの？

雨の朝
昨日の短歌とあんバター
消えた蜘蛛の巣
名残惜しい

冷蔵庫
そのまま入れたアルマイト鍋
翌日味噌汁取って置く

消費欲と老人
こんなに金を使っていいのか
灯油代ばかり増える冬
ばれないようにと色違い

落ち着けよ
米もパンも肉もある
娘は親の料理人
冷蔵庫を開けて戦争ウクライナ
扉の時空が髙橋家

セーター着てよね
肌着で飯を食う父を
万感色でお見送り

何の為
誰の為の漂白か
トイレットペーパー再生紙

厚着した
今朝が暑いか寒いかもう分からない

このクリスマスでも何でもない
父のユニクロ手袋が
オイル戦争なのだと遂に知る

手術する
喪服のバックを買う金で
父の手袋買う晩秋

騙されろ
セーターズボンも色違い

三日に一回お風呂に入る
石鹸シャンプー愛用品
懐かしの衛生観念ほっとする

蒸しさつまいもに水を飲む
世界中
秋のおやつはこれでいい

菊を買う
仏壇にひっそりと
父のマイナカードが戒名無し

孫娘は写真家言えないなあ
ひっそりと父の遺影を見つけて安堵する

父新品
古着を買って
クリーニングでプレスする
寒くなったら羽織って歩く

虚実の実を取る人生に
五十になって短歌の花が咲く

鯵捌く
親のためでも自分のためでも無い料理
二時間掛けたらきっとあなたが虹の橋

十一月
去年の服と去年のカバン
恋人が死んで
探し物が終わる

絶望の日
給食ツイート
楽しみのひとつ

チバユウスケは笑わない
私のなりたいものは
給食のおばさんだった

チバユウスケ
死ぬ前に
蕎麦かうどんか聞きたくなる

老人を取り零す社会で
若者が今社会から取り零れる

無印のカバンを使う
この大きな紙袋は
そんなに女の憎しみなのか？
私のアレが無だった時
女のアレは産み捨てられた

スーパーダサいとスーパーモデル
ガリが廃墟を歩くファッションショー
ハンガーに掛かる一枚の白いシャツ
最期の日何も食べずに死んで下さい

言葉で撃つぞ日本人
ファッションとスーパーは世界戦争だ
不参加だと言え

キャベツひとつの値段が
戦争協定か
和平協定か
今日分からなくなった

札入れに新札が混ざる時
旧札の方が古い札
正札のソフトクリーム牛乳の

肌着がもっと欲しいです
衆議院議員選挙を境目に
日付変更線妄想の壁
ニッポンの時空が歪み始める

無印の胡桃スクラブ使う時
百年の恋
恋人に
遂にお里が知れる時

Hystericな見栄がぶら下がり
Hangarに食肉になって垂れ落ちる

シャブのせい
酒のせい
北朝鮮のせい
日本が悪いとなぜ言えない

あの日アレを食べたから太る
そんなことはありません

青いスエット着飾る私
青色の羽織袴を箪笥に隠す

下駄履きの
代わりに私を守る
あなたの黒いコンバース

十人を殺す爆撃更に金を産む

美味しいはずのクロワッサン
それがこんなに虚しいとは

インド綿の白いバックとナイロンリュック
これが戦争なのだとは
去年の私は思わなかった

ジーンズの股間に傷口を当てるファスナーと負傷者の縫合痕
世界はボタンフライで狂った

工業用ミシンとチャイナボタンと飲茶
戦争の音で服を縫う
ナイチンゲールの寓話しか
今の私には分からない

無印良品のA4のマイバックを
持ち手で巻いた
包

私には分かる世界では
巻くという行為は上等だった
サリー
着物
チャイナドレス
弾幕で脳に穴が開き
パソコン画像によだれを垂らす
ミイラを巻く布
錦神社
その価値も無いネット民

死んだチバの写真が胸を飾るTシャツが小金を稼ぎ
売る物が無い政治家が
私をGOTHで売ろうとする

メモ帳のわら半紙ひとつで
心を失う日本人

朝食のブルガリアヨーグルトに紅玉煮
ウクライナはちみつが無いと迷う母
ブルガリアは侵攻せず
甘いから何もかけなくていいよ

庭石は川に帰る
アントニーのパンもパンケーキ
イエスは石臼の教え
かまどのおきびでクッキーを焼くマリー
私たちは遺伝子のかす
おからを食べる仏教徒
泣かないで

お母さん
慰謝料ではなく年金の
還付金から歯医者代金

「あら剛士あなたのマンUどうしたの？」