MTGパウパーという対戦環境に触れてみた! その率直な感想。
こんにちは。今回は、マジックザギャザリング界における低レアリティ限定構築、パウパーという世界に身を置くようになってから受けた印象を綴りたいと思います。環境解説と言えるほど御大層なものではなく、あくまでもゼロから始めた元未経験者の感想という体でお読みください。
特にMTGアリーナやスタンダードでのみプレイしている方で、安価に始められやすいフォーマットは無いかな? と考えてらっしゃる場合には参考意見の一つになってもらえると嬉しいです。
私がパウパーという遊び方があると知って、真っ先に作ったのがこのようなデッキでした。
ターン1、飛びかかるジャガー!
ターン2、怨恨を張り付けてパワー4でアタック! 食らえ!
小学生の頃に読んだデュエルマスターズの漫画版で、初期の切札勝舞くんがやっていた思い出のシーンを再現したい。そういう意図がダダ漏れしているビートダウンデッキでした。私はパウパーという遊び方はこういうものだと思っていましたし、折角古いカード群が触り放題なのですから、銘々思い思いのクリーチャー戦を行っていくものかと思っていました。
しかし、違ったのです。まず大前提として、このフォーマットはエターナル環境に属します。いわゆる下環境、レガシー等と同じです。過去30年分の膨大な枚数のカードが使える……。目を通しきれませんが?
それどころか、モダンホライゾンのような下環境向けセット、統率者マスターズ等のような特殊セットすらリストに含まれます。
(製作した当時の)スタンダード+思い入れのある古いクリーチャーでは……到底カードパワーが足りません。
そして、私のような「普段出会えない体験を求めてパウパーにやってきた」「こういう勝負がしたい! という憧れがある」タイプの人間を理想追求型としましょう。
それに対し「メタゲームを分析し、30年分すべてをフル動員して最適解を求め続ける」タイプの方々が居ます。環境分析型とでも表現しましょうか。新しいカードが発表されると「25年も前の、一回だけ印刷されたマイナーカードとシナジーがあるぞ!」と発見し、嬉々として買い集めるようなタイプの方がそれに該当します。
理想追求型の人間は、良くも悪くも自分が持つ好みの色や、プレイスタイルに引っ張られます。「構え、はっけよーい、のこったのこった!」というぶつかり合いを求めたりしますから、例えばこのようなイニシアチブには抵抗感があるのです。
イニシアチブおよび統治者(奪われない限り無料で毎ターンドロー)は、何故かパウパー環境でも許されている強力なマウント取りメカニズムです。火遊びや稲妻のような直接火力をプレイヤーに当てても奪え返せず、必ずクリーチャーでの戦闘でプレイヤーにダメージを通す必要があります。相手に奪われなければ、毎ターン勝手に図のダンジョンが進むのです。するとどうでしょう。以下のようにイニシアチブを得るクリーチャーを最速1ターン目に唱えてくるプレイヤーが大発生したのです。
4マナを1ターン目に? 妙だな……。
沼セット、暗黒の儀式+水蓮の花びらor猿人の指導霊。
これでなんと4マナ稼げるのです。オドロキオドラデクー。MTG30年史は伊達じゃない。
そのうえ、レガシー環境に近いと言いましたが、いわゆる意思の力的な0ターン目に使えるカウンターは飛び交っていません。撃退と言う、カード2枚を消費して唱える1対3交換はありますが、大損すぎてあまり使われていません。先攻を取ってマナ加速したら、ほぼほぼ唱え得です。
あとはクリーチャー除去を構えながら待っているだけでも、一度取得したイニシアチブ由来のダンジョン探索は毎ターン無料で進んでくれるのです。
このカードは流石に禁止となりました。ですが、5マナかかるイニシアチブ生物は未だ禁止となっていません。
グルール(赤緑)アグロを組んだのなら、もっと速度に寄せて速攻持ちを並べればいいじゃないか! イニシアチブが始まったら取返しに行け! と、思われたかたも居るかもしれません。実際私はパイオニア環境で赤タッチ緑のアタルカ・レッドを愛用しています。その考えには賛同したいものです。
しかし、パウパーにおける2色構築の構造的欠陥が大きく影を落としているのです。
それは「アンタップインできる2色土地が存在しない」という点です。これには参りました。ファストランドやペインランド、ショックランドのような「デメリットが有ってもいいからアンタップインさせてくれ」という願いは叶わないのです。
すると、グルールやゴルガリ(黒緑)のような比較的クリーチャーパワーに頼ったような構築が難しくなります。できることはできるのですが、安定性を求めると1ターン目はタップインの2色土地を置くことから始まります。ターンスキップとまでは言いませんが、攻撃的なアグロ構築で初動をパスするというのは、いかにも不味いやり方になってしまいます。そのため、2色や3色のデッキを使いたいと思った場合、どうしても想定キルターンをパイオニアやモダンよりも2~3ターンほど後にズラした組み方になってしまうのです。ミッドレンジ的な動きに自然と寄ってしまうかもしれません。
では結果として速攻デッキはパウパーに存在しないのか? となります。
いえ、多色は難しいのです。単色ならばいけます。ド定番かつ、奥が深い。赤単の出番です。
1~2マナの優秀なカード、主にゴブリンクリーチャーですが、それらを駆使して速攻片を付ける構築が、私のようなぶつかり合いを好む人間を満足させてくれる力を持っています。レガシーに近いという部分で言及しますと、稲妻の連鎖および火炎破の二種がパウパーでも使える点で拍車をかけています。最速で回った場合、理論値3ターンキルです。文句なしのトップティアクラス。強い。
他にも、以前紹介記事を書いたような白単ウィニーや、
黒単バーン、緑単ストンピィ等、単色+速度重視の構築はあります。
さて。ここからはもっと踏み込んだ考察といきましょう。
パウパー環境について一通り書いてきましたが、おしなべて平等に言える事が出てきます。それは……。
ライフレース、重視しがちじゃない?
先に例を挙げた赤単が分かりやすいです。まずあなたがパウパーのデッキを組もう、カードを買ってみようとなった際にアドバイスしたいのは
「で、そのデッキで赤単に勝てるの?」です。
現在(24年6月)のスタンダード環境でもそれに近い現象はありますね。熊野と渇苛斬の対峙や僧院の早槍が暴れているのですから、ピン除去やブロッカー、ライフゲイン手段を持ち合わせていないと、後攻の5ターン目なんてやって来ない有様ですよね。
パウパーにおけるクリーチャーの方向性として多いのは、早い段階で出る優秀なスタッツです。アーティファクト土地をタップして出したゴブリンの墓荒らしは1マナ2/2速攻の強力な攻め手です。他にも
4/4のマイアの処罰者を3ターン目に0マナで唱えたら強いと思いませんか? 残ったマナは相手クリーチャーへの除去に使えばいいのです。
トレイリアの恐怖は最安1マナの5/5生物です。スタンダードに登場してから一気にパウパー界のスター選手になりました。
さらにさらに、6/5でトランプルまで持っている恐竜はいかがですか? この続唱は二匹のサイが出てくるとかではなく、純粋なアドバンテージ獲得としての続唱です。でも魅力的じゃないですか。マッシブでダイナミック。アタックすれば痛快ですよ。
――とまあ、一通り挙げてみましたが、一様にどれも能力自体はシンプルですよね? 戦闘でのやり取りでPT値が高い方が当然有利で、コンバットトリックを仕掛けようかな、なんて算段したり。
能力マシマシ長文テキスト生物が跳梁跋扈していない戦闘空間。
2/1の猿が勝手にカードパクッていったり、ピーピングハンデスしながら墓地に落ちたはずの生物が復活して同じこと繰り返し、こちらは悲嘆に明け暮れたり……しない。
この部分が最もパウパーに求めていたところでもありました。パウパーの最も楽しい要素です。
しかし、裏を返すと、殴り合いのダメージさえ軽減できればいいのです。
暗黒の儀式が使えても、納墓から再活性でアトラクサを釣ってきて爆裂アドを稼いだりしない。
実物提示教育をしようぜ? と持ち掛けられて、全知からエムラクールを唱えるなどと展開されたりはしない。
原始のタイタンが出てきたと思ったら「ヴァラクート噴火して12点飛びますね」などと宣言されたりはしない。
「このクリーチャーが通ったら負け」とか、「場に出た時点でほぼほぼ仕事は終わっている」といったパターンが非常に少ないのです。前述のイニシアチブ生物は限りなくそれに近かったのですが、度重なる弱体化で、最速ビートダウンプランには使いづらくなりました。
スタンダードで例えましょう。赤単は早い。しかしサイド後、相手は除去枚数を増やしてくる。そうしたらの場合の対策はキチンと存在していますね?
毎ターンクリーチャー・トークンを生み出すウラブラスクの溶鉱炉等がそれに当たります。相手からすると、僧院の早僧に対するピン除去+いつ出てくるか分からない置物への打ち消し・破壊の二正面作戦を強いられるのです。
このような優秀な置物がパウパーにもあれば良かったのですが……。元々はリミテッド戦での活躍を期待されたレアリティ。そんなものあるはずもなく。
終いには、動く土地、ミシュラランドすらありません。無いものだらけです。
結果として、パウパー環境下で非無限コンボデッキが戦おうとすると、単純な正面からのライフのやり取りに終始する場合が非常に多い。それに加え、バーンデッキ有する稲妻や裂け目の稲妻、火炎破、黒のドレイン呪文らに対抗すべく、ライフ回復できるか否かも重要な分岐点になっています。
クリーチャー除去と回復――。受ける側がそれを構えてずーっと待っていたとして、相手がモダンのトロンだったら。ワームとぐろエンジンが出てきて除去を3枚要求されるか、解放カーンが出てきてゲームを滅茶苦茶にされるでしょう。カーンが強くてニューゲームを始めるぞと宣告していているのに「ライフを35まで回復して耐えています」と返しても何もならないですよね?
強烈な勝ち手段があるデッキが四方八方にミサイルを向け合っていて、クリーチャー除去をしているだけでは何も勝ち取れないような状況。
そう、デッキの多様性こそが隙間産業的にシンプルなクリーチャー戦闘を活かしていたのです。否が応でも残ライフを気にする必要のあるパウパーでは、赤単を筆頭とした直線的な動きの印象が強烈すぎて、逆に対策する側のガードも上がっている。そこが良くもあり、悪くもある部分なのです。
ライフ回復するだけのカードは弱い。実際そう言われていて、守備的なカードは能力が盛られていたりします。
嵐の乗り切りはいい例です。パウパー下では、攻撃的なストーム呪文は軒並み禁止されています。ぶどう弾や巣穴からの総出がそれに該当します。
しかし、ストームでの回復は許される。これも相当困ります。
対策への対策? 頭蓋割りによるライフ回復阻止、ありません。ストームを阻止する狼狽の嵐、ありません。使われる前に強迫で抜くか、使われた上から9点でも12点でも余計に殴りつける。それしかないのです。
もちろん、私自身がコンボ/コントロールデッキを用いる機会はあります。その際はライフレースに逐一気を配っています。
感じたのは、あくまでも「思ったよりも牧歌的・地味なやり取りに終始していないな」という点です。3/3バニラの訓練されたアーモドンでキャッキャしていた世代からすると隔世の感があります。
近年は特に、物価上昇と共に製品としてのMTGも値上がりを続けています。パック価格が上がると、それに伴ってシングル取引の平均価格も上がってしまいます。
だからこそ、手軽に、少ない投資で始められる、お友達や家族間でも共有しやすいコモン限定構築・パウパーを勧めたいと思っています。
もし予算1万円以下という縛りで紙のMTGを始めるなら、間違いなく最適なフォーマットに値するでしょう。ですので、忘れないでください。競技性の強い、環境分析型のプレイヤーが多く集う場では、ぶつかり合いを求めても除去と回復の嵐でボコボコに負ける恐れがあります。
私は、なんとか自分のプレイスタイルに折り合いをつけて、地元の大会でならば優勝する程度にはパウパーの道を進めています。安価なフォーマットとして広く普及してほしいと願うのは、勝手な思い込みかもしれません。
ですが、そこに至るまでに葛藤はあった。その記録を次のプレイヤーさんに繋げたかったのです。
これこれこういう理由で納得してる、面白いフォーマットだ。その一端を感じ取っていただけたでしょうか。
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