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見つける喜び。

「あぁ、生きていた。良かった。」

真っ先に出てきた感想が、この言葉でした。私が落語に興味をもったのが2013年頃。それから、なんとなく有名な噺家さんの有名な落語を聞いたりしているうちに、なんとなく噺家さんの出るテレビ番組が気になり、なんとなく番組欄で見つけた有名な噺家さんとお弟子さん、若手の方々が出演する深夜番組を録画して、なんとなくゴロゴロしながら見ていたのでした。

それがまぁ、めちゃくちゃ面白かった、のです。

その時、大喜利みたいなコーナーに出ていた端正な顔立ちの、いわゆるイケメンな噺家さんに、私は釘付けになったのでした。いや、イケメンだから釘付けになったのではないけれど。いや、それも語弊がある様な気がするけれど。(笑)

語り口は飄々としているのに、何故だか陰をもっていて、なんとも言えない毒を振り撒いて、誰にも心を開かない野生動物、のように見えたのでした。(あくまでも私にはそう"見えた"だけで、ご本人がどうかはまた別の話)そして何より、声が、とても良かった。あれはまさに、ひと聴き惚れ、だったのかもしれません。

「あぁ、この人の落語をいつか生で聞いてみたいなぁ」

とぼんやり思いながら、いつしかそのテレビ番組も終了し、あっという間に時が経ち、確かあれは2016年頃だったかな。

え、引退……してる?!

と、その噺家さんのツイートに気付いたのでした。とても簡潔な、そしてやはり飄々とした雰囲気の「引退しました」という旨の文言だったと記憶しています。

「会いたい人には会えるうちに」、「行きたいライブは行けるうちに」を唱えていたくせに、「いつか生で落語を聞いてみたい」を叶えられなかった自分を、どこかでぼんやりと情けなく思っていたのでした。

さらに時が経ち2020年。12月、なんなら今日。さらに言うならば、さっき。ほんの気まぐれで、私は、その噺家さんのかつての芸名を検索したのでした。本当になんとなく。今までどうしてそうしなかったのか分からないけれど、きっと虫の声でもしたのでしょう。

「あぁ、生きていた。良かった。」

ずいぶんと前から作家さんをされていて、今は劇団も主宰されていました。実はYouTubeに動画もあったのですが、私はどうしても、生で観たい。そして、かつての私がひと聴き惚れしたあの声を、生で聞きたい。ので、まだ再生ボタンは押していません。

今度こそは。

ナツノカモ
https://natsunokamo.jp

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