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相手へピンポイントに要求する難しさ

少し前,味が評判のある飲食店(ビルの2階にあったお店)の階段前に,こんな表示と貼り紙がありました.

「ただいま満員」
「店内外を問わず行列禁止」
「他店の前での行列は迷惑になるので禁止」……等々

他にもいろいろと説明の貼り紙はあったのですが,これらを見て家人と顔を見合わせても,お店側にとって端的に何がダメなのかどうして欲しいのか,すぐには分かりませんでした.

階段の途中などにメニュー表などもあったので,それらを見るとなしに佇んでいたら,2階の店内からバイト風情の若い店員さんが現れ

👦「いま満員になったばかりで,しばらく入れません」

…とだけ告げ,再び階段を上って店内に戻っていきました.

…これは2人組では列になるのでダメとか?例えば代表して1人で立っているならOKなのだろうか?……あるいは他店への迷惑になるから敷地外での並びはダメで階段は大丈夫なのか,いやそもそも店内ってどこだ,この階段も店内相当なのだろうか……あるいは遠くから注視して誰かが出てきたら即座に行けば入れ替わりに入れるのだろうか,それともこの空間が見える範囲に待機することいっさいがっさいダメなのだろうか,果たして…🤔

…なんてことを家人と話していたら,バイトさんというにはちょっと年上か,ポジションももう少し上に見える店員さんが現れ,

👨「…うち,待つのダメなんで……」

と至極不機嫌そうに告げ,「この貼り紙の数々を見ても分からないのか」とでも言いたげでした.その話しっぷりからしたら店長だったのか,社員さんだったのか.でも伝わらなかったものは伝わらないのでしょうがない,残念ながら.

ここで思い出したものが,さる本のこと(少々古いけれど).

「トンネルのかなたのあかり」のところでしょうか.ついつい説明が長くなってしまいがちな自分が,なるべくシンプル/短い言葉で誰にでも誤解無く伝わる表現とは何か,そんなことを考えるときに思い出す著作です.

あの飲食店の前にあった表示の代わりに,どのようなものが差し出されていたら,わたしたちは混乱せずに済んだのでしょうか……

「"満員"の看板がある時はお帰り下さい」
「"入店可能"の表示がある時のみ店内の店員にお声がけ下さい」
「"満員"の看板が見える範囲での待機は一切禁止とさせていただきます」

……うーん,どれも決定打に欠けるなー.そのあとも時々思い出してはつらつら考えてみるのですが,良い案は出ていません.


さて,食事時に近所まで行ったのでちょっと寄り道してみるか~という訪問でしたが,料理に対する口コミの評判は高く,「食べてみたいなあ!」という高まった気持ちはこの記憶の中で一気に薄れ,「ここにまた来ることは無いかなあ…」と何となく思いながら店をあとにしました.きっとあのお店には縁が無かったのでしょう.


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