![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/110388658/rectangle_large_type_2_2dc90b6d56054ccfd3aa419ceeb9ac47.png?width=1200)
【maruの道端ストーリー その4 オハヨウコンバンハのお花】
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/110312505/picture_pc_8034a1e054ceb279bfa28a14b9f5c233.jpg?width=1200)
オハヨウ。
私ね、花壇の咲いているお花なの。
植えた人は皆が癒されますようにって植えてくれたのよ。
私はね、その気持ちを受け取ったし、私たちお花も、皆を元気にしたいのよ。それが私の天から授かったお役目でもあるのよ。
私たち、いつも駅の下で声をかけてるのよ。
「オハヨウ」
「コンバンハ」って。
でもね、人も動物もは誰もお返事してくれないの。
みんな誰も気にも留めないの。
せっせと歩いて通り過ぎるの。
きっと、私がお花だからなのかな。
コンニチハが抜けてるのはね、
お日様の光を浴びている時は、
私たちのお休みの時間なのよ。
だから朝と夜だけご挨拶なの。
少し意外でしょう。
昼間はお日様の光を浴びて私たちお花の力を蓄えておく貴重な時間なのよ。
それにしても何でみんな気がついてくれないんだろう。
タイパって言葉が流行ってるのも知ってるわ。通りがった人が話しているのを偶然、聞いたの。
きっと、みんな、忙しいのね。
私たちお花は、人や動物達と心が通じ合うのよ。
そう思っていたら、
ある日を境に気がついて貰えるようになったのよ。
「オハヨウ」って言ったら、とても疲れた感じの女の人がしゃがんで私の目の前で「オハヨウ、挨拶ありがとう。」って返してくれたの。
そうして、クスって微笑んでくれたのよ。
そして、その女の人は私の香りを吸ってくれたのよ。
お花の香りにはパワーがあって心が元気になるのよ。
もちろん、私たちを見るだけでもパワーをあげることが出来るのよ。お休みをしている時も見てもらうだけでパワーをあげられるの。
お花を愛でるっていうでしょう。そういうことなのよ。
その女の人もそうだった。
「あなたのおかげで癒されたわ、私、転職したばかりで無理して、気持ちに余裕がなかったのね、ありがとう」ってお礼を言ってくれたの。
私、とっても嬉しくなっちゃったの。
初めて力になれたって思ったの。
お花冥利に尽きるわね。
ある晩はね、一匹の心配そうな顔をした猫さんが通ったの。私、「猫さん猫さん、コンバンハ」って言ってみたの。
そうしたら、「にゃっ」ってお返事してくれたのよ。どうやら、コンバンハって言っているってことが伝わったの。
猫さんは猫語なのでちょっと人とは言葉が違うのね。
猫さんが何で心配な顔をしているのかしらって思ったら、猫さんは「にゃにゃ、にゃにゃー!」ってお話してくれたの。猫さんは飼い猫で、飼い主さんの帰りが遅いから心配して、迎えに来たんですって。優しい猫さんなのね。
お花のポリシーとして、お花からは理由は聞かないことにしているの。そっと黙って寄り添うのがお花の役目なのよ。
猫さんも私の香りをくんくんしたら、「にゃにゃっー」と言った途端に、尻尾がぴーんと直角になって元気になったのよ。「飼い主さんの帰りが遅いから、お迎えに来たんだけれど、なかなか帰って来ないんだ。ボク、心配で心細くなって寂しくなっちゃったの。キミの香りで元気になった、もう少し飼い主さん待つよ、ありがとう。」
と言ってるのね、って伝わったわ。そして、猫さんも嬉しそうだったのよ。
猫さんの力にもなれてとっても嬉しかったわ。
暫くしたら、急いだ様子の男の人が猫さんを見つけて駆け寄って、「にゃんのすけ、お前、迎えにきたのかー!えらいなあ、すごいなあ、さみしい思いさせてごめんな、ありがとうな!」と抱きあげるのをみて、とってもホッとしたのよ。
いつも日が当たる時間は、私たちがお日様の日を浴びて微睡んでいるのだかれど、決まった時間に鈴の音が聞こえるの。
何でだろうって思いつつお日様の光を浴びていたら、やがて杖をついたおじいさんがやって来たの。杖に鈴がついているのよ。あ、この人の鈴の音なのね、って思ったわ。
おじいさんは、「おやおや、ここに可愛いお花が咲いていたのか。お花は可愛いねえ。足が丈夫な時はよくハイキングに行ったのを思い出すなあ。」って目を細めてくれたのよ。
私、薄目で、そっーと鈴を見てしまったの。
そうしたら、おじいさんが気がついてくれて、
「おや、お前さんはワタシの鈴が気になるのかね。この鈴は亡くなった女房が付けてくれたんだよ。今も付けていると女房と一緒に歩いている気がしてなあ。」とにこにこして話してくれたのよ。
鈴を見ていたのが分かってしまって、
ちょっぴり恥ずかしかったけれど、
奥様のと思い出の鈴なのね。
そうかあ、私を見て足が元気な時、ハイキングに行った楽しい思い出が蘇ったのね。良かった。嬉しいなあ。
あれから幾人かの人が通り過ぎ、気がつかない人が殆どだけれど、気がついた人や猫さんや犬さんや小鳥さん達ももいて、パワーをあげられたの。
そうこうしているうちに
日にちが過ぎて来るの。
そして、私たち、そろそろ、
空からお迎えが来る頃になったのよ。
お花はね、人や動物に元気をあげていると、いくらお日様から力を貰っても、その分、自分の力が減ってくるの。それが私たちの運命なのよ。
ほら見てみて。お空が綺麗でしょう。
役目を果たしたお花たちが行く場所、つまり、私たちが行く場所なのよ。
その前に私たちは次のお花が咲くように種を蒔いておくのよ。また同じ場所で咲いて、人や動物たち皆にパワーをあげるためにね。
私たちは人が植えた花壇のお花だけれど、道端に咲いているお花にも同じ力があるのよ。
小さな小さなお花も力になるので、どうか邪険にしないで欲しいの。
疲れたなあ、なんて思ったら私たちのことを見て欲しいの。
樹木のお花も同じよ。
きっとあなた達の気持ちに寄り添えると思うから。
私たちはいつだって静かに咲いて待っているのよ。
そろそろ空に向かう時間だわ。
お迎えの光が来たのよ。
ありがとう。
またね。
どんどはれ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/110312667/picture_pc_17f7e9def407b854249f2e05a2aabf27.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/110312647/picture_pc_d4674ce44423d91af42691d355678b63.jpg?width=1200)