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case ミスターマザー
その人は世の中が言うお母さん(普通のお母さんを私は知らないが)みたいな人で、いつも優しく穏やかで、趣味は可愛いエプロンをして料理をすること、こだわりの豆でコーヒーを淹れること、本を読むこと。お酒はあまり飲めなくて、日付が変わる前には眠くなる。
その人と出逢ったのは某出逢い婚活アプリ。
某有名コンサル会社に勤め、服はストリート系、若干人見知りで関西弁、そんな初対面の印象であった。
その頃の私はよっぽど酷くなかったら付き合ってそのまま結婚してしまおうと言う考えで、焦りに満ちた打算祭開催中であった。と、言うことで見た目も話した感じも全くピンとこなかったがお付き合いすることにした。
決め手は私がときめく人はロクな人ではないと言う揺るぎない自信。
全くときめかないこの人はきっと一般的に素晴らしい人なはず!!
結果、この自信と判断は今までの人生で後にも先にもない英断となった。
私は誰と付き合っても季節を一通り一緒に過ごすことができなかった。
桜を見て、プールに行って、紅葉を愛でて、初詣をする。
そんな繰り返しをしたことがなかった私がこのお母さんとは2周も季節を巡ったのだ。
お母さんはいつも穏やかで、怒らないし、諭さないし、強要もしないし、束縛もしない。
私は家事はしなくていいし、仕事もしなくていいし、何かを相談されることも、頼られることも甘えられることもほとんどなかった。
そう、私のお母さんはミスターサイボーグマザーだったのだ。
ある朝、私は彼のためにパンを焼いていた。
「熱っ‼︎」
オーブンで火傷をした。彼と目があった。
彼は無言で朝ごはんを食べ始めた。
「大丈夫?とかないの」と聞いてみた。
返答は「大丈夫?って言ったら治るの?」だった。
この事件を皮切りに「ありがとう」事件や「ごめんね」事件と続いていく。
色々考えて、調べて、有識者にも聞いてもらった。
予想はしていたけどサイボーグの正体はアスペルガーだった。多分。
私が断定できることではないしそれもまた個性だと今なら理解できるけどその当時の未熟過ぎるメンヘラ猫の私には難解過ぎる現実だった。
言葉の意味、その裏側、その雰囲気、空気を読むってやつが苦手な彼と暮らすのは思った以上に苦しく辛かった。
その反面、表裏がない彼にはたくさん救われた。
優しい時間、シンプルな意思疎通、ふわふわな毎日だった。
今でも感謝している。この人がいなかったら私は今いないかもしれない。
necoco
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