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眼差しー猫撫×さくら写真集「夢中vol.0」に寄せてー

その日のことは、よく覚えている。
わたしが初めてカメラを持った日だからだ。
もちろん、家族写真とか、旅行中の風景とか、カメラを使ったことは多々あったけども。
眼差し、としてカメラを自覚したのは、その日が初めてだった。

その日。
さくらさんと、初めて会った。
さくらさんは、くりくりした黒い目でまっすぐわたしを見るひとだった。
カメラを持ってもそう。
ちょこちょことよく動き回って、いろんな角度からわたしをよく観察して、まっすぐわたしを写した。
煙草休憩をちょいちょい挟みながら、わたしも彼女を見た。
なんか、いいなぁ、と思った。
彼女はむちゃくちゃ楽しそうだった。
ああでもないこうでもないとぷつぷつ言いながら、シャッターを押す彼女の眼差しは真剣で。
まるで面白いおもちゃを触っているかのようだった。

あんまり楽しそうだったので、途中、さくらさんのカメラを触らせてもらった。
さくらさんにカメラを向けると、さくらさんは元被写体らしくちょっとだけポーズをとってくれた。
恐る恐るディスプレイを見ながらシャッターを押す。
写る。
「おおっ!」
たったそれだけの作業が、なんだか新鮮だった。
「撮れる!」
わたしはなんだか初めて文明に触れたみたいな反応しか返せなかった。
ファインダー越しに見る世界は、わたしが見る世界と少し違っていた。
もちろんさくらさんのカメラの設定云々もあったのだろうけど。
それはわたしが今まで散々写ってきた、現実とはまた別の世界。
写真の中の世界。

ああ、これが眼差しか、と思った。

「夢中vol.0」は、そんなさくらさんがわたしを見つめるまっすぐな眼差しを感じられる、素敵な写真集になっていた。
極めてピュアで、驚きと新鮮さがあり、わたしの肉体への賛美が詰まっている。
さくらさんが夢中でシャッターを押していたのを思い出す写真集だ。

ぜひ手に取って見てください。
わたしは、また写真が撮りたくてうずうずしている。

special thanks to さくら(twitter@sakuran_26)

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