Real Face episode.0「さっちょん」
企画を立ち上げた翌日。
たまたまさっちょんと撮影しようと約束していたので、撮らせてもらおうと思い立った。
なんとなく初めての被写体は彼女がいいと思っていたので、ちょうど良かった。
さっちょんは、カメラマンの女の子だ。
セミヌードなどのセクシーなポートレートを得意としている彼女の写真は、独特のパワーと毒があって、わたしはいつも魅了される。
二回撮影してもらった時も、素敵な写真をたくさん撮ってくれた。
以降、彼女の悩みを聞いたり、一緒にお買い物に行ったりして、仲良くなった。
天王寺。
待ち合わせ場所に現れたさっちょんは珍しく覇気がなかった。
なんとなくくたびれた顔をしている。
聞くと、なんだか最近調子が出ないらしい。
カメラにせよ、仕事のことにせよ。
どうにもうまくいかんと。
なるほど。
天王寺駅から徒歩5分ほどのところにある、昭和レトロなラブホに入った。
まずお風呂に入りたいという彼女のリクエストで、お風呂にお湯を溜める。
溜めながらさっちょんはずっとこんな塩梅で待ってた。
わたしは全裸。
お風呂は狭くて、ひとりしか入れなかったけど、先に体を洗い終えたわたしが湯船に浸かって、さっちょんは頭を洗っていた。
ひとがシャワーを浴びるのをまじまじと見るのが久しぶりで、なんだか不思議な気分。
お風呂でも写真を撮った。
さっちょんが防水のデジカメを持ってきていて、きゃあきゃあ言いながら写真を撮った。
上がった後。
だらだらと写真を撮られながら話をした。
「写真やめよかな」
と彼女は言う。
「やめられないよ。さっちょんは。」
わたしは返す。
「なんで?」
「さっちょんは写真がないと生きていけないからね。」
二回目の撮影の時、長居公園で一時間くらい彼女の悩みを聞いた。
仕事のこと、写真のこと、好きな人のことなど、とりとめもなく話す彼女を見ながら、わたしはとてもいらいらしたのを覚えている。
だってさっちょんは、悩んで悩んで泣いてはいたけど、カメラを持っていたからだ。
写真やめたい、て言ってるのに、彼女はわたしを撮りにきた。
それが答えだろう。
彼女は撮るのをやめられない。
そのことを彼女自身はわかってない。
だからいらいらしたのだ。
「さっちょんは馬鹿だよ。」
わたしは言った。
「自分が本能で求めてることを理解できてない。先走る心をいつも探して迷ってる。馬鹿だよ。」
さっちょんは、寂しそうな顔をしていた。
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