猫のいる喫茶と美術室
「保護猫カフェで働くのが夢なんだ。」
2019年12月。
幼馴染(後のnecoma店長)と久々の夕食で聞いたこの言葉がキッカケとなり、「保護猫喫茶 necoma」は始まった。
何から始めればいいか全くわからない0からのスタート。
猫カフェって、飲食店?動物業?どうやって始めればいいんだろうか。
まずは事業主の視点になって、改めて猫カフェや保護動物シェルターに行くことにする。
どんな飲食を提供しているか、どんな猫アイテムがあるか、どんな内装か、どのくらいお客さんがいるか、どんなイベントがあるか、利用金額はいくらか、スタッフの人数は 等・・・。
当時、僕は犬派だった。(今は完全な動物派)
実家で飼っていたMダックスのナナが、目の前で天国に旅立ってから
「もう動物を飼うことはないだろうな、、」
となんとなく決めていて、たまに友人宅のわんちゃんを連れてキャンプに行くぐらいだった僕の心には、小学生の時「獣医になりたい」という夢があった頃から、社会人になっても持ち続けていた「いつか動物に関わる仕事に、、」という思いに、幼馴染の「保護猫カフェで働きたい」という言葉で背中を押されたことで、完全に「勢い」で行動開始したのを覚えている。
「自分達で作ろう。」
物件、資金、内装、資金、許認可、資金、資金。。。
何かを始める時に「事業計画」が大事なことはわかっていた。ただ、綿密な計画で未来を予想し、「保護猫カフェがうまくいくかどうか」なんて考えても仕方なく思えた。夢なんだから、とりあえず始めよう。なんとかなる。(店長、こんな考えからで申し訳ない)
資金集めで注目を浴びていて咄嗟に思いつく「クラウドファンディング」を利用することは止めた。
何も実現していないのに人を説得できる気がしないし、キングコング西野の「クラファンは信用の両替機」という言葉に翻弄され、両替できるような信用を持ち合わせていなかったし、何より他の保護動物プロジェクトを見て、先輩方のプロジェクトに匹敵するプロジェクトにする自信がなかった。
やってみなきゃわからない。やりながら考える。安易な出発だったかもしれない。
「クラファンは止めよう。またいつか、、」
夫婦二人三脚で会社設立から5年間。毎月少しずつ貯めた共済掛金があったので、それを全部使って足りない分は頑張ろう、という気持ちで心を落ち着かせた。(妻よ、本当にご迷惑かけます)
内装をお願いしたい内装業者は決めていた。そこに絶対にお願いしたかったし、電話して、代表自ら担当してくれると連絡がきた時は本当に嬉しかった。
そして、内装するのがTANKさんというのを聞くと、アートディレクターの妻が興味を示す。
「こんな空間はどうか」
「こんなアイテムはどうか」
「こんな企画はどうか」
やはり美大出身の感性というのは、「他と違うスタイル」を追い求める思考なのだ。すごい。necomaは彼女が生み出したと言って間違いない。妻が参加してくれて本当によかった。
necomaの猫たちは、山梨にあるNPO法人リトルキャッツさんからの受け入れをしている。店長と車で山梨までご挨拶に行き、ドアベルを鳴らす時のあの緊張感は、恐らく新卒の入社面接以来だったと思う。
僕と店長が勝手に姉御と呼んでいる、駒沢大学の保護猫カフェ「駒猫」の吉田さんから話も聞いていて、絶対にリトルキャッツさんからの受け入れをしたかったし、許可していただいた時の感動は、間違いなく入社試験合格以上だった。
「夢が実現できる。」
necomaで働いてくれているスタッフは、予想を越えて応募してくださった何十名という応募者の中から、店長と妻と僕とで選出させていただいた。
保護猫カフェという店舗は、多頭飼いの環境で入れ替わりが頻繁にある猫の体調管理、店舗空間の衛生管理、新猫を人間と他の猫たちに慣れさせるトレーニング、お客さんへの接客コミュニケーション、企画イベントの対応など、本当に大変な現場だと感じる。
何より一番大変なのは、猫のトラブルに気を張りながらも譲渡面談や店舗運営の責任を持っている店長だが、その右腕となってくれるスタッフは、どんな人材にメンバーになってもらうべきか、たくさん議論した。
お店の体力的にも雇える人数に限りがあったことが申し訳ないと今でも思っているが、選ばせていただいたスタッフは、それぞれに個性があり、優しさと気配りがあり、何より猫と人への愛情がある。このスタッフ達に出会うことができて本当によかった。
保護猫喫茶 necomaという場所は、当初から「どんな空間にすべきか」を何度も何度も話し合い続けている。
それは「どんな空間を僕らが作りたいか」と同じことで、作りたいものを作れば、楽しい場所は常にアップデートされ、皆に楽しんでもらうことができる。
necomaにいる猫は、一生を人間と暮らすことになるのだから、一緒に暮らす人間にも幸せになってほしい。人の心が幸せになれば、一緒に暮らす猫も幸せになれる。そう思っている。
necomaを始めたことで、「猫が好き」「保護猫を助けたい」という共通の想いだけで、本当にたくさんの人が声をかけてくれる。目的が同じだと、こんなにも人は力を合わせることができるのかと驚き、本当に感謝しかない。
浦和からバスで1時間かけ、支援物資を届けてくれる人がいる。
「こんな猫カフェに来たかった」と言ってくれる獣医師会の職員がいる。
僕らの考えに賛同して作品を作ってくれる作家さんがいる。
「真っ白な空間に写真が映える」と写真を撮るインスタグラマーがいる。
「アート展示を見に来ました」と、保護猫を知らなかった人が猫と触れ合い楽しんでくれる。
より多くの人に保護猫を知ってもらう為、「necomaに行ってみよう」と言われる一期一会の空間作りを目指し、それを持続させることに力を注ぎ、収益は次の為に貯めておく。僕にとって、こんな情熱を注げる事業はない。始めてよかった。本当に。
necomaは、
店長の「保護猫カフェ」と
妻の「アートギャラリー」と
僕の「動物事業」という
全員の夢が1つになっている。
そして、
necomaに関わりたいと考えてくれる人達の想いで、necomaをもっと良くすることができる。
足を運んでくれる人にとって、家でも会社でもない「第3の場所」を作りたい。「保護猫」という言葉が無くならない限り、necomaを拡大させていきたい。僕の頭にあるアイディアを全て実現させ、その全てを猫と人に還元したい。
縁あってnecomaに来た猫は、「最後の家族」を見つける為に、necomaで里親を待っている。「その子がどんな性格で、何が好きで、何が苦手で、どんな健康状態で、どの里親さんの元で生涯を暮らしてほしいか。」それを見つける為、店長とスタッフの毎日の努力が続いている。
僕には、この場所を持続させ、拡張させ、人々が楽しいと感じてくれる場にする責任がある。
人生をかけて頑張ろう。
皆んなの「やってみたい」の全てを実現させるために。
necoma
小栗
保護猫喫茶 necoma
東京都目黒区中町1-33-3-3F
平日:13:00〜20:00 土日祝:11:00〜20:00
木曜定休(祝日営業)
https://necoma.co