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番外編:「推し」とキンプリと私

『部屋とワイシャツと私』を若きティアラのお嬢さんたちはご存じなのだろうか……

先日のCDTV30周年SPでのKing & Princeのパフォーマンスを見て、不意に涙が出てきた。

元よりドラマと歌番組は積極的に観るタイプの人間だったので、キンプリ自体はデビューの時から知っていたし、彼らが歌番組で歌い踊るのも何度も見てきた。
“シンデレラガール”初披露時の彼らのきらきらした佇まいは、ファンではない人間から見ても本当にかっこよかった。
それと同時にあのイントロのない歌い出しにはらはらしていたことを覚えている。
花晴れ視聴者として主演の平野くんのことを親のような気持ちで応援していたことが懐かしい。
今はもう、歌い出しにはらはらすることはない。
平野くんが伸びやかに力強く歌い出せることを知っているから。

「君はシンデレラガール」とお茶の間に何度となく語りかけてくれてきた彼らがまさか、シンデレラのように期限付きでどこかへ行ってしまう存在になってしまうなんて思わなかったな。

正面左端の海ちゃんが1人離れ小島になっている、岩橋くんの場所を空けて歌う“シンデレラガール”を見るのだって、何も初めてじゃない。
岩橋くんが療養のため活動休止したと知った時は「早く元気になって戻ってきてくれるといいね」となんて、他人事ながら願っていた。

その空席はついに埋まらなかったし、そこからさらに空席が生まれることになるなんて、ファンでも何でもなかった私でも本当に信じられなかった。

本当に、ついこの間まで私にとってのKing & Princeは「巷で人気のアイドルグループ」に過ぎなかったのに。
何が起ころうが誰が抜けようが、ファンの人たちも気の毒になあ、くらいにしか思っていなかったのに。
そんな私が岸くんに沼ってしまった。

私は岸くんのことが好きだ。
King & Princeの岸優太が好きだ。
岸くんが大事にしているKing & Princeが好きだ。
先に退所している岩橋くんの含めてメンバー全員が大好きなのだ。

大好きだからこそ、彼らが選ぶ道を尊重したい。
彼らの生き様を肯定したい。
私の願いは彼らの健康と、彼らの今後の人生よ幸多きものであれと、それだけでしかない。

最近の彼らを見ていてふと思い出すことがある。

かつて私には推しがいた。
私の推しはバンドマンで、あるバンドでギターを弾いていた。
バンドの楽曲は推しとボーカルとで半々くらいの割合で作詞作曲を担当していた。
どの楽曲もとても素晴らしかったが、私は推しの描くメランコリーな世界観が好きだった。
推しはギタリストだけど時々自分で歌ったりもしていた。
推しのことが好きだった。
何より私はそのバンドが大好きだった。

そのバンドは結成10年目にして解散した。
バンド活動と並行してソロで何枚かアルバムを出していた推し。
推しが最後に発表したソロアルバムのタイトルは『人にはそれぞれ事情がある』
この意味深なタイトルのアルバムの発売からしばらくして、バンドは解散を発表。

このアルバムに“空席”という曲がある。

空席には
誰がやってくるんだろう
空席/真島昌利

ハスキーな歌声が繰り返すこのフレーズはどうしたって解散を予見させる。
この曲はメロディラインも歌詞も哀愁たっぷりでいつ聴いても苦しくなる。

誰も来ないかもしれない
そんな気も少しはしてる

かなわなかった約束が
腰をおろすのかもしれない
空席/真島昌利

今だからこそ余計に苦しい。
ぽっかりと空いた席に一抹の未練を隠そうともしない、この“空席”と言う曲がたまらなく好きだ。
寂しくて虚しくて、それでいて美しくて、吐きそうになる。
胸の支えか何なのか、この正体のわからない吐き気が喉の奥から込み上げると、なぜだか自分が生きていると思える。それがとても苦しいけれど、好きなのだ。

何年かぶりにこの曲をヘビロテしている。
推しのバンドが解散した時の苦しさが苦さとなって舌の上にじんわりと染みてくる。
そして、あとひと月ほどで主を失う3脚の玉座のことを考えている。

さて、名前を出してしまったのでこれ以上「推し」と敢えて名前を伏せることもない。
私の推しとはマーシーこと真島昌利さん。

“アンダルシアに憧れて”を作詞作曲したその人です。
この名前に聞き覚えのあるジャニーズファンの方がいたらとてもうれしい。
ジャニーズの皆さまが歌い継いでくださっていると遠く聞き及んでいますのもとてもうれしい。

マーシーのバンドとは言わずもがなTHE BLUE HEARTSである。
ブルーハーツのライブで、ヒロトが「マーシーが歌います!」と紹介してからマーシーのボーカル曲が始まるのがたまらなく好きだった。
ヒロトが作った”月の爆撃機“、そのアンサーソングのようなマーシーの”1000のバイオリン“が2曲つづけて披露されるセットリストは涙が出るほどエモくてかっこいい。
ライブが終わるとマーシーが必ず「またね」と言って去っていくのが本当に好きだった。

ブルーハーツは解散を発表するもまだレコード会社との契約が残っていたのでラストアルバムを発売する。
名義こそバンド名だが、中身は4人のメンバーがめいめい作ってきたものを集めた13曲、事実上のソロアルバムだった。

ブルーハーツ解散後、私の推し・マーシーはボーカルの甲本ヒロトさんを誘って新たなバンド
↑THE HIGH-LOWS↓を結成した。
ヒロトとマーシー、また2人の音楽を聴くことができるのは本当に幸せだった。
バンドは変わったけれど、推しは変わらずに推しだった。
マーシーの隣にヒロトがいてくれることが本当に嬉しかった。

メッセージ性の強いブルーハーツ時代と打って変わってシュールな作風が目立つハイロウズ楽曲だけれどそれが良かった。
所変われば品変わる。時間が経てば人は変わる。けれど根幹は揺らがない。
ヒロトとマーシー以外の何者でもない音と言葉がそこにあった。

しかしハイロウズも、結成10年目に活動を休止した。
事実上の解散。

二度目の解散時、私は受験生だった。
受験が終わったら絶対にライブに行くんだと楽しみにしていた矢先の解散発表に、私は絶望した。
紛らわしい書き方をしてしまったが私は彼らを20年追っていた訳ではない。
ブルーハーツに至っては存在を知った時にはすでに解散していた。
中学の時に友達に借りたCDで彼らのことを知り、のめりこみ、聞き漁った。
メルカリのなかったあの時代、マーシーのソロアルバムは方々のBOOKOFFを探し周りヤフオクを巡回し、やっとの思いで手に入れた。

ハイロウズは途中からリアルタイムで追いはじめた。
解散前、彼らが最後に出したのはベストアルバムという名のシングルヒット集。
シングルヒット=Bestと単純に言い切りたくないと逆張りする質の私だけど、泣けるくらい名曲揃い。

あの日の僕のレコードプレーヤーは
少しだけいばって こう言ったんだ
いつでもどんな時でも スイッチを入れろよ
そん時は必ずおまえ 十四才にしてやるぜ
十四才/ザ・ハイロウズ

ヒロトが作った“十四才”には私が音楽を聴く一番の理由が詰まっている。
そうなのだ。
音楽にはそれを聴いていたその時の自分が紐づけられている。だからハイロウズはいつだって私を十八才にしてくれる。

そして音楽は私をいつ、いくつにしてくれたっていい。
ハイロウズはリアルタイムで追っていたと言ったけれど、音楽は自分が初めて聴いた時が自分にとってのリアルタイムでいいと思う。
だけど本当の本当にリアルタイムで、同じ時代に生きられたのならそれはとても幸せなことだ。

だから、King & Princeのデビューからこれまでを見届け、これからを見守れる「今」を生きていられる私を、私は本当に幸運だと思う。

ハイロウズは活動休止したけれど、ヒロトとマーシーはその後わりとすぐにザ・クロマニヨンズとして私たちの前に帰ってきた。

なんか輪をかけてシュールになって帰ってきたけど、

わかったんじゃない
思い出したんだ
あさくらさんしょ/ザ・クロマニヨンズ

こういう言い回しはやっぱりマーシーのそれだから、今も私は変わらずに彼のことを推している。
クロマニヨンズも10年経ったら解散するのかな?なんて思ったりもしたけれど、なんと今年で17年目。
なんてこった。
気がついたら、私の推したちは還暦を越え今も元気にロックンロールしている。

ヒロトとマーシーは私の「推しへの向き合い方」の方向性を示してくれた。
あなたが元気で楽しく過ごせていることが、私にとっては何よりのファンサなんだと。

キンプリに残ることを決めた永瀬くん海ちゃんも、ジャニーズを離れることを決めた平野くん岸くん神くんも、一足お先に1人で頑張ってる岩橋くんも、みんなそう。
元気で楽しく、自分の好きな道を歩いてほしい。
それでいて末永く仲良くしてくれないかなって淡く期待している。きっと仲良しでいてくれるって自信も漠然とながら、ある。

その自信の根拠も、40年近く仲良くロックしている推しの存在があるからこそ。
ありがとうヒロトとマーシー。
これからも末永く元気で仲良くいてほしい。

私は女だから余計に、男の友情?みたいなやつはあってほしいんだよね。
そうあってほしいんだよね。
そうであってほしいんだよね。
男の友情ってやつ。

健康と幸せ以外何も望まないとか言いながらオタクは贅沢で強欲で嘘つきだから、今度はキンプリにそれを見せてほしいと願ってしまう。

青春と人生のほとんどをマーシーに捧げてきた私、いま岸くんにハマっていること自体がすでに訳がわからない。

でもまあ、訳がわからないことの連続だから、人生は素晴らしいんだろうな。
うーん。
噛み締める、ライフイズビューティフル。

考えすぎて眠れなくてだらだらと書き殴ってしまった感満載の文章を、ここまで読んでくださったあなた。ありがとう。

おやすみなさい。

またね。

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