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デッドロック

Deadlock (1970)
映画『デッドロック』公式サイト

 ローラント・クリック監督のウエスタン風クライムアクション映画。本邦初公開なんですかね。劇場で予告を見てから、上映開始を指折り数えて待っていました。出演は「暁のガンマン」「ミラノカリブロ9」のマリオ・アドルフ、「007は殺しの番号」のアンソニー・ドーソン、「聖なるパン助に注意」のマルクヴァルト・ボーム、「あやつり糸の世界」のマーシャ・ラベンほか。

 強盗で得た100万ドルを手にしたキッド(ボーム)、行き倒れた彼を拾ったダム(アドルフ)、キッドの強盗仲間サンシャイン(ドーソン)が、金を巡ってダーティー・非情かつ卑小な攻防を、ゴーストタウンを舞台に繰り広げるお話。

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 ひと言で言うなら、「続・夕陽のガンマン」を思わせるクズどもの三つ巴を、「エル・トポ」みたいな歪んだ白日夢感で描いたってとこでしょうかね。キッド=虚無、サンシャイン=非情と狂気、ダム=卑劣な小物と、クズそれぞれのキャラが貫かれています。さらに頭のネジのとれたオバちゃん(ベティ・シーガル)と、口の利けないその娘(ラベン)が絡んできます。あとは行商人と貨物列車の乗組員。登場人物は7人だけ。

 期待値を上げ過ぎたか、正直そんなにスゴイ映画だとは思えませんでしたが、ホドロフスキーの「ファンタスティックで、ビザールで、ギラついている」との評は嘘じゃありませんでした。娘がキッドのジャケットとシャツを脱がせた後に跪きカメラが下を向くと、キッドの下半身はすでにすっぽんぽんというラブシーンには、俺はいったい何を見せられているんだろうと。そもそも思い起こせば、お金の入ったスーツケースを抱えたキッドが荒野を彷徨うオープニングも、まっすぐ歩いてないだけで足取りはしっかりしてたんだよなあ。逃げたダムを射殺しようとするサンシャインを制しながら、続くシーンではキッドがサンシャインをめちゃくちゃ煽ってるとか、ラストは「金なんかどーでもいいんだあ!」とサンシャインがブチ切れるとか。映画的な整合性やクオリティーなんかクソくらえ、マカロニウエスタンもニュー・ジャーマン・シネマもクソくらえと言わんばかり、まさにやりたい放題のカルト映画。

 乾いた荒野やギラギラの太陽の白日夢感・黙示録感に、ジャーマンロックバンド:カンによるサウンドトラックが拍車をかけてます。本作で使われた3曲は1970年のアルバム「Soundtraks」に収められていまして、イエジー・スコリモフスキ監督「早春」に提供した「Mother Sky」なんかも収録されています。

 まずはダムに、次はサンシャインに奪われるキッドの銃はM1928A1、通称トミーガン。禁酒法時代のマフィアご用達の、垂直型フォアグリップとドラムマガジンを付けた「シカゴ・タイプライター」が有名ですが、そちらは民間にも販売された前モデル(M1921)になります。M1928A1はコスト高で大量生産に向かず、簡略化された改良モデルが第二次大戦で活躍したM1A1。「コンバット!」のサンダーズ軍曹や、「プライベート・ライアン」のミラー大尉が使った銃ですね。

 サンシャインの銃はモーゼルC96の派生型M712(またはM1932)。通常は単発・連発が切り替えられるシュネルフォイヤーというモデルなのですが、単発オンリーのモデルがごくごく少数あるようです。劇中では連発されていなかったと思いますが、使われたのはさすがにシュネルフォイヤーでしょう。

 カン、本作主題歌のライブ。ヴォーカルはダモ鈴木。ホルガー・シューカイもさすがに若いですね。

 こちらはジュークボックスのシーンで使われた「Tango Whiskyman」。公式ビデオではないですが、クラウス・キンスキー・コンピレーション!  いいセンスだ。


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