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ふりかえるとよみがえる(#毎週ショートショートnote)

殺るなと命令されていたのに…

「馬鹿野郎!仕方ねぇからこれ使え!」
差し出された小袋。
「ふりか……とよみがえるから。使えるのは一度きりだぞ!」
昨日からの強風にかき消され、よく聞こえなかったが、この袋の中の粉をふりかければ良いのか?どこに?どうやって?
アニキは遠くで誰かと連絡を取っている。


その頃、アニキは焦っていた。
あの粉の使い方を本当は覚えていない。
先代から譲られたのは18年前だ。
以来、一度も使ったことはなかった。

よみがえるということは覚えている。
だから渡したが、今さら使い方が分からないなどと言える訳がない。
マズイな…

ふりかえるとアイツは自信なさげに粉を死体にふりかけていた。
突然記憶がよみがえる。

「食うんだ!」

アニキの怒鳴り声が聞こえた。
粉はまだ半分ある。
俺は慌てて残りの粉を口に入れた。
マズイな…

袋を見ると「ふりかけるとよみがえる母の味」の文字。

賞味期限は17年前の丁度今日であった。

#毎週ショートショートnote

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大熊猫
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