隅っこで丸まっていたきみが、“おしりポンポン”をさせてくれた日。おしとやかな「レディ」
優しさを受け取ることって時に勇気がいること。
だって、そこには少なからず「信じる」行為が必要で、信じるために手放しになる瞬間が怖い。
NPO法人もりねこにいる保護猫「レディ」も同じ気持ちを経て、今があるのだろうか。
「レディ」への献身的な2年間
ーー 今日はもりねこにいる保護猫「レディ」についてお聞きしようと思います。はじめに、「もりねこ」についてお伺いさせてください。
かんたさん:
NPO法人であるもりねこには、保護猫カフェとは別でシェルターがあります。なので、2つの建物にそれぞれ猫がいる状況です。今、レディはシェルターのほうで暮らしています。
ーー 現在このシェルターには、レディ以外に何匹くらいの猫が暮らしてるんですか?
最大だと15匹ほどですかね。今は、入れ替えなどの関係もあって13匹がシェルターで暮らしています。
ーー 僕も先月までネコリパブリックに住み込みで生活してたので、お世話の大変さを想像しちゃいます。僕がお手伝いしていたときも、1日2回のお世話が1回3時間とかかかっていました。
はい、急に体調が悪なる子がいたりすると、お世話もより大変で……。
それにこれからの時期、また子猫も増えてくるので、家族で保護されると一度に頭数も増えるので、施設がてんやわんやしますね。
ーー レディとの出会いについてお伺いできますか?
2020年の6月に保護猫の施設を始めるため、もりねこで研修を受けました。その際、ケアルームにいたレディと出会ったのが初めての出会いでした。
初めて見たレディは、部屋の隅っこに隠れていて。おしとやかな子なので、人間が怖いんだろうなと。
研修を終え、2020年の8月にこの施設を始めました。その際に、レディと同じくケアルームにいた「しろたん」という猫を第1号として迎えて、その後レディもここにやってきました。
しかし、レディが来たばかりの頃は、ずっとベッドで丸まったままでベットから全然出てきてくれなくって。
ところが、しろたんと一緒に生活していくなかで少しずつ人間に対しても信頼を覚えくれたんです。
ーー レディはもう撫でさせてくれるんですね!
最初は引っ込み思案だったんですよ。ゆっくり時間をかけて、たくさん話しかけているうちに、2年が経って、やっと仲良くなれました!
今ではおしりもポンポンさせてくれますよ。昔ならブラッシングなんて絶対できなかったんですけど(笑)毎日のひなたぼっことブラッシングは必須なくらいの距離感になりました。
ーー 献身的な姿勢が伝わったんですかね。
そうだと嬉しいですね。
ぼんぼり尻尾がかわいいみんなのお母さん
ーー「怖がりだけど、おしとやか」なレディですが、他にどんな一面がありますか?
レディは高齢の方のお家で暮らしていましたが、一緒に生活できなくなりもりねこにやってきたんです。そして、どうやら前のお家で暮らしていたときに、一度出産の経験があるとわかって。
その経験もあってか面倒見がいいですね。たとえば、新しく施設にやってきたばかりの猫に、この部屋のルールを教えてあげています。さらっと他の猫の様子を気にかけてあげるような優しい性格の猫だなと。
ただやっぱり遠慮しがちな一面もありますね。自分が遊んでいたおもちゃも、他の猫が使おうとしてきたら、譲るような感じのコです。
なので、遠慮とひとくちにいっても、優しさからくる遠慮の形ですね。
最近は徐々に積極的におもちゃを使ったりするようになってきて、その様子を見れて嬉しいです。
ーー しろたん含め、他の猫から色々学んできたんですかね?
定期的に掃除にきてくれるスタッフさんがいるのですが、そのスタッフさんたちとの交流も含めて色んなことをゆっくりレディのペースで学んでるんだと思います。
掃除のスタッフさんたちの声かけも優しく丁寧なので、レディも部屋の隅に隠れたりしなくなりました。声を聞いただけで「隠れなくて大丈夫」とわかってくれてる感じ。
ーー いいですね。レディもきっとスタッフさんたちに対して安心感を抱いてるんでしょうね。レディの性格がゆっくり形成されていった過程がよくわかりました。
ーー レディの「推せるなぁ〜」ってポイントは他にありますか?
撫でるとお尻を上にあげるんですけど、その時のぼんぼり尻尾が可愛いんですよね。あとは、模様のせいで絶妙におじっさんっぽい口元に見えるところも可愛いです(笑)。
ーー 撫でてもらうとすぐに尻尾あげちゃうのは、こちらも見ていてたまらないです〜!!
そうですよね。けど、ここまでくるのにたくさん時間がかかりました。
それに、この施設にいる他の猫でも同じように接しても、いまだにボディタッチは絶対にできない猫もいます。その点では、レディは前の家族と一緒に暮らしていた経験や、出産の経験が、人への信頼感の形成に役立っているんだと思います。
ーー お話を伺っているとレディが前のご家庭ですごく愛されていたのかな?というのが伝わってきます。
多頭飼育崩壊の現場のような劣悪な環境からやってきたわけではないので、その点では飼い主さんからの愛情を受けていたんだろうと思いますね。
ーー しろたんとのエピソードが素敵だなと感じたんですが、他の猫とのエピソードなんかもあったりしますか?
そうですね。レディはしろたんに限らずいろんな猫と交流していますよ。
同じように人のことが比較的苦手な猫と追いかけっこをして遊んだり、ベットで一緒にお昼寝したりしています。とにかく、他の猫への面倒見がいいな〜という印象があります。
「外の空気が感じられるお家で、温かく見守ってあげてほしい」
ーー かんたさんから見て、レディの新しい家族にはどういうご家庭がよさそうだと感じますか?
レディは慎重な性格です。でも、以前の飼育環境が自由に外と屋内を出入りできるような環境だったみたいで、いまだに外への憧れがあるように見えます。
最近、施設内にサンルームを新しく設置して。サンルームは他のお部屋より外の匂いを感じられて、レディもそこでくつろぐ時間を楽しみにしてるみたい。
なので、屋内ながらもなるべく外の空気を感じられたりできるような配慮をしてくださるお家だといいなと。
ーー サンルームを譲渡条件の必須にしてもいいくらいですね(笑)。
そうかもしれないですね(笑)。初めてサンルームに入ったときなんですが、頑張って床を掘って脱走しようとしていたので、その時にレディの外への憧れを強く感じました。
ーー けど、やっぱり外に自由に出入りできてしまうのは事故に遭遇するなどの危険もあるので避けてほしいですね。それに、レディの性格を聞いていると、幼い子供もいて……といった家庭よりは、大人で落ち着いた生活を送ってるような家庭像がいいのかな?と思ったんですが、いかがですか?
そうですね。小さいお子さんの甲高い声なんかには少しびっくりはしてしまうかもしれないですね。
温かくレディを見守ってくれるような家庭であってほしい。
「優しく在る」ことの困難と向き合うこと
「この人はきっと大丈夫」と信頼するのは、いくつになっても簡単じゃない。むしろ年齢が上がるにつれて、多方面に予防線を張ってしまってる気がする。
だから、レディが臆病になる様に自分が重なる。
一方で、レディが周囲の猫たちに与える心遣いや優しさに尊敬の念を抱く。優しさを受け取るときだけでなく、優しさを手渡す時にも相手を「信じる」必要があると思うから。
レディの奥ゆかしい素振りは、こうした経験により形作られたのだろう。
そんなレディを見習って、損得勘定抜きの優しさを渡したり、与えたりするのも悪くないな、なんて思った。
レディのプロフィールはこちらから🐈