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猫にまみれて、癒されてほしい。猫愛にあふれる猫本専門の本屋「necoya books」

東京都立川市。住宅とお店が立ち並ぶ通りの一角に現れる、大きな「本」。扉を開けると、そこにはずらっと本が並んでいる。

そして、その本のほとんどが「猫」に関する本だった。

2022年8月8日「世界猫の日」にオープンした、猫の本を専門的に扱う本屋『necoya books』・店主の柳智恩(ユウジウン)さん自身も、3匹の猫たちと暮らす大の猫好き。数年前に飼い始めた猫をキッカケに、保護猫や「いのち」について考えるようになったと言います。

今回は柳さんに、猫本専門の本屋を開業しようと考えたキッカケやおすすめの猫本、これから実現したいことをお話ししていただきます。

猫本の在庫数は1000冊以上!猫の本専門の本屋 

――necoya booksは どんなお店ですか。

『necoya books』は、東京都立川市にある「猫の本」専門の本屋です。1階は猫に関する本と猫雑貨、2階はギャラリーになっています。本の在庫数は常時1,000冊以上。絵本や児童書、小説、写真集、猫のマンガまで、さまざまなジャンルの猫本を扱っています。

猫の本専門の本屋といえば神保町や三軒茶屋にありますが「海外の絵本」を楽しめるのは、necoya booksならではです。私自身がソウル生まれの韓国籍であること、16歳から数年アメリカで過ごした経験から韓国語や英語の本も多く扱っています。

日本は「猫=かわいい」のような絵本が多いですが、海外の絵本は驚くほど悪い猫も登場します。そういった国や文化による違いを楽しめるのもnecoya booksの特徴です。

夫がひと目惚れした猫が人生を変えた

ーー柳さんはもともと猫好きでしたか?

今でこそ猫愛があふれていますが、猫歴はあまり長くありません。猫が大好きになったのは、結婚して猫を飼いはじめてからです。夫がペットショップで結婚した日に産まれた猫と出会い、それに運命を感じて迎えた結果、私のほうが猫好きになりました。

今ではロシアンブルーのミヤ、ベンガルのレオ、そして黒猫のコロの3匹が家族です。

ミヤとレオは、ペットショップから迎えました。当時はまだ「猫はペットショップで購入する生き物」と思っていて。「保護猫を引き取る」という選択肢を知ってから迎えたのが、コロです。不安もありましたが、コロは本当に天使のような猫。もともと仲が悪いミヤとレオの両方と仲良しで、いつも家族の真ん中にいます。

コロと出会って「もっと保護猫について知ってほしい」と思うようになりました。

――なぜ本屋だったのでしょうか?

「猫が好き」「絵本が好き」という気持ちが、猫の本専門店という形になりました。母として子どもに読み聞かせをするなかで、絵本に夢中になった経験がベースにあります。そんなとき韓国の猫専門書店と出会って、猫の本専門店の開業を考えはじめました。

いよいよ開業を決めたのは、2022年2月22日の「スーパー猫の日」です。「保護猫活動を支援できるお店にしたい」という思いで、オープン日の8月8日「世界猫の日」まで準備を進めました。

ーーすごい行動力ですね!不安は感じませんでしたか?

よく言われますが、深く関わった経験がないからこそだと思います。出版業界について詳しくないし、仕事として関わった経験もありません。本屋を始めるにあたって、最初は分からないことだらけでした。

だからこそ先入観にとらわれず「直感を信じて、自分のやり方でやってみよう!」って割り切れた部分が大きい。最初から広く頑張ろうとせず、身近な人たちの保護猫活動から支援していきたいです。

猫好きさんはみんな猫っぽい?!

――どんなお客さんが多いのでしょうか?
年齢は40代以上の女性が多いですね。たまに一人で来店する男性もいます。お客さんを見ていると、みんな「どこか猫っぽい」ですよ。猫歩きというか足音を立てずに、動きもコソコソ。猫好きって、みんな性格が猫っぽいのかもしれませんね。

ただ猫の話題となれば、途端に話し出すから面白い!愛猫のこと、ペットロスのこと、高齢だから飼えないこと……necoya booksで出会った人は、どんな人でも猫の話で盛り上がれるから不思議です。

――おすすめや人気の猫本を教えてください。

おすすめは、坂本千明さんの『ねこのねえ』です。猫たちの命の時間は、私たちよりはるかに短いですよね。毎日一緒にいると、つい忘れてしまいますが……。

この作品を読むと「猫との限られた時間を大切にしよう」と思えます。少し胸をギュッとつかまれるけど、猫を飼っている人、これから飼いたい人に読んで欲しい。売り上げの一部を、猫のために寄付しているところも素敵な作品です。

猫と猫を愛する人たちを応援したい

――どんな保護猫団体に寄付をされていますか?

『LOVE & Co.』に寄付しています。LOVE & Co.は猫たちの保護を目的に設立された会社で、necoya booksで販売しているコーヒーとハーブティーの仕入れ先です。猫をオフィスで保護していたり、売り上げの一部を保護猫たちの医療費などに充てていると知り、寄付を決めました。

また、立川市にて個人で保護猫活動をされている砂川猫も支援しています。この方は、現在お家にいる黒猫のコロを保護してくれた方でもあります。これからも実際の活動を見たり、イベントに足を運びながら寄付先を決めていきたいです。

これからも実際の活動を見たり、イベントに足を運びながら寄付先を決めていきたいです。

necoya booksで販売する猫雑貨を選ぶときは「できる限り保護猫活動を支援している会社かどうか」を確認します。猫と保護活動をがんばる人たちに向けた、私なりの応援の形です。

“お客さんとの会話”に新しいアイディアが隠れている

――necoya booksのお気に入りポイントを教えてください。

自分の猫の写真を貼れる「WALL OF FAME(ウォール・オブ・フェーム)」というコーナーです。掲示する際に印刷代含めて220円いただきますが、すべて保護猫団体に寄付しています。

自分の猫の写真を貼って、それがまた猫のためになる。自分の猫の写真に会うために、またnecoya booksに来てくれる。

ただ写真を貼って終わりではない「循環している感覚」があり、気に入っています。いつか猫の写真で壁がいっぱいになればうれしいですね。

――面白い取り組みですね。アイディアはどこから生まれるのでしょうか?

「私が行きたい本屋」のイメージが、まずベースにあります。もともと本屋は好きでしたが、普通の本屋は少し物足りないと感じていました。

新しいアイディアや面白い企画は、お客さんとの会話からヒントをもらっています。例えば先日開催した朗読会も、そのひとつです。「ハープ奏者とチェロ奏者で、絵本の読み聞かせを行っている」と聞き、ぜひnecoya booksでも開催してほしいとお願いしました。

今の私には想像できないことも、これから新しい出会いによって実現するかもしれません。

「まっさらなスペース」で続ける新しいチャレンジ

――これからチャレンジしたいことはありますか?

2階のギャラリーを、もっと活用したいと思っています。「新しい何か」を考えるために用意した「まっさらなスペース」です。いまは、展示会や座談会を約3週間区切りで開催していますが、猫に関するワークショップや大人向けのイベントも検討しています。

展示会がない期間は、一般の人にも貸し出しています。使用条件は「猫に関する催し」または「主催者が猫好きであること」だけです。気になる人は、ぜひお声がけください。

また、私が韓国語に翻訳した絵本の原画展も実現したいことの一つです。今の状況が落ち着いたら、韓国や海外のお客さんにも来てほしいですね。

――最後にPRなどあればお願いします。

necoya booksは訪れた人に「猫パワーで幸せな気持ちになってほしい」「ちょっと癒されて帰ってほしい」と思いながら、空間作りをしています。ちょっとお茶しながら、ときめく一冊を探してみてください。

もちろん猫について、あまり知らない人も大歓迎です!ふらっと来て、猫にまみれて、どっぷり猫に癒されて帰ってほしいですね。


necoya booksは猫専門の本屋というだけあり、猫本の在庫数は約1,500冊。絵本、小説、エッセイなど、ジャンルを問わず楽しめます。販売する雑貨や装飾まで猫にこだわり、猫好きの人はもちろん、猫に詳しくない人でも癒される空間です。 

今回お話を伺って、何より柳さんの行動力と集中力に驚かされました。未経験から開業を決めて、実際に約半年で実現させるなど、大変なことも多かったと思います。

それでも終始笑顔で猫愛を語る柳さんを見て、目標実現に必要なことは準備ではなく、気持ちと熱量なんだと感じました。貴重なお話、ありがとうございました。


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