指導教官

文学研究、とは言っても色々なやり方がある。が、私の分野で多いのは作家を決めてその作家の作品を掘り下げていくというやり方だ。しかし、作家といっても無数にいるではないか。じゃあ自分の選んだ作家・テーマに詳しい先生に指導をお願いしようか。

文学研究の場合、実験装置などの縛りがないからどの大学でも研究することができます(図書館の蔵書には差があるけど)。なので、外国文学を専攻することのできる院そのものが限られているとはいえ、選択肢は非常に開かれていると思います。そして文学専攻を設置しているようなところの先生は大体どんな作家であっても、一定のレベルで指導をすることができるんじゃないでしょうか。そこまでは言い過ぎだとしても、先生の専門の作家の世紀くらいは守備範囲と言っていいと思います。

指導教官選びで悩むのが、自分が専門的に研究したい作家を専門としている先生に指導を仰ぐのか、あるいは「まぁあの先生の守備範囲内かな」くらいの感じの先生を選ぶのか、という問題です。これは特に、学部から修士に進学するとき、大学を変える場合に悩むことになると思います。あるいは留学する時かな。

一番いいのは「自分と(テーマは違うが)専門が同じで、世界的レベルで研究を行なっていて、指導熱心だけど学生の執筆スタイルを尊重してくれる、でもしっかりプレッシャーをかけてくれる」という先生だと思います。ただしここまで条件が揃っていることはないので、ここから妥協できるとこを削っていくことになります。

人によっては、先生と作家が被ってない方がいい、という人もいます。作家が被っていると、先生が細かいところに目が届きすぎて、こちらが勢いよく書けない、ってなパターンです。それとか、先生が極限まで放置してくれる方がいいとか、色々います。例えば東大だと、基本的に指導教官はハンコを押す人って認識だそうです。学生のレベルを信用しているのもあるのかもしれませんが、先生が忙しいって話。忙しいといえば、とあるネイティブの先生は、指導教官が超有名人でとある学術機関の空いた席に立候補していたから修論が書き終わるまでに二、三回しか会わなかった上に、コメントも「いい感じだ。がんばれ」くらいしかもらえなかったそうです。それも極端な例ですが、自分に自信がある人以外は、忙しすぎず面倒見のいい先生を探した方がいいと私は思います。あるいは留学することを見越して、留学先を紹介してくれそうな先生を選ぶという場合もあるかもしれません。

修士から博士で大学を移る、そして指導教官を変えるって自分の周りでは聞いたことないですが、学部、修士、博士でそれぞれ指導教官の選び方、距離感は全然違うと思います。修士までは専門がガッツリ被ってなくてもいいんじゃないでしょうか。むしろ先生との相性の方が大事ですね。 これも博士課程への進学をするのかどうかで全然話が違ってきます。あと、博士行くなら退官が近くないか注意。

場合わけすると(算数的には正しくない場合わけですが)

①学部A先生→修士A先生→博士A先生:学部のときに卒論をみてくれた人がそのまま博士まで面倒見てくれるパターン。多分先生との相性が良くて居心地がいいのでは?先生が有名人、専門が同じならアリ。あるいは、有名人で忙しいけど、留学先を紹介してくれるとか。そもそも学部から博士出るまでって最短でいって9年かかるので、単純に先生が退官する可能性がある。

②学部A先生→修士A先生→博士B先生:博士から専門にする作家を変えるならあるかもしれません。散文→詩とか。あるいは、大学院自体をチェンジする場合。その時はB先生はガッツリ専門が同じ人にする場合が多いのではないか。

③学部A先生→修士B先生→博士B先生:私はこのパターンで、修士から博士で同じ先生にお世話になっています。修士で同じ専門の先生を選び、相性がよかった人は大体こうなるんじゃないでしょうか。

④学部A先生→修士B先生→博士C先生:このパターンは指導教官に拘らない大学、あるいは専門を変えた、専門の同じ先生を求めて博士で大学院を変えたって人だと思います。

⑤学部A先生→修士A先生→就職:よくいます。多分先生の指導方法があっていて、それで修士もやろうと思ったのでしょう、いいと思います。

⑥学部A先生→修士B先生→就職:人によりますが、私は専門が離れすぎていなければ、気持ちよく書かせてくれる先生でいいんじゃないかと思います。このパターンで大事なのは、専門領域内で厳密な裏付けのある成果を出すというよりは、面白い読解を参考文献をうまく使って導き出すことだと思います。もちろん一定レベルの学術性はなければ行けませんが、大学院が機能しているレベルの大学にいる先生ならそこはクリアできるように持っていってくれるはずです。

修士って一年生の頃は授業も多くて専門の勉強をあまりできない、二年生になると就活が始まるって感じで、全然時間ないと思います。時間的な制約がある中で自分のやりたい方向に行こうとすると、専門が同じ先生よりも相性が大事な気がします。確かに専門が同じ先生だと、読んだ方がいい参考文献とか的確に提示してくれるんですけどね、逆に視野が狭まることってありますから。誤読ギリギリむしろアウトくらいの面白いものの方がいいですよ、修士論文。

結論:修士論文は楽しんで書きましょう。


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