見出し画像

生命がある

今、お腹に命を授かっておるのだが、私にはきっと一生に一度しかないであろうこの体験を記しておきたい。

まず、私の身体は子宮奇形(単角子宮)と言って、生まれつき子宮の形・サイズが人とは違っており、尚且つ卵管が片方しかないというものである。
不妊治療前の造影検査で判明した。

排卵というのは卵巣から卵管を卵が通るものだが、私は片方しかないので、恐らく正常な排卵ができていなかったと思う。
そのせいか長らく不妊に悩まされ、人工授精を経て体外受精まで進んだのだが、2回化学流産している。
今回は3回目の移植で安定期までやってこられた。ありがたい。

つわりは多分軽かった方だと思う。
結局一度も吐いたりせず、食欲不振で体重が減った程度で終わった。
(もしかしたら後期にあるかもだけど)

世の妊婦さん同様、やたらフライドポテトが食べたくなったのには驚いた。謎…
野菜、肉、米が食べられなくなり、パンや冷凍グラタン、麺類で食を繋いだ。
小麦粉よ、ありがとう。

水が苦くなり、麦茶も不味くて飲めず、ノンカフェインの緑茶を箱で買い、水分を繋いだ。
私のつわりはこのくらい。だいぶ軽い。

不妊治療をしていた病院では週一だった健診が、産科に転院したら月一になり「赤ちゃんはちゃんと生きているのか…?」と、不安に押し潰されながら毎日を過ごす。
この、行き場のない不安の対処が非常に困難だった。
気を紛らわせようにも、ホルモンのせいなのか何もする気が起きず、誰に会う気も起きず、たまに不安に耐えれず泣きながら一日を過ごすしかなかった。

産科はもしもの時の対応がスムーズなように、設備が揃っている総合病院にした。

先生から、
「子宮奇形なので帝王切開、早産になります。早くて28週、30週はもたせたい。34週までもてば万々歳」
「後半は入院して週数を伸ばします」
「普通の妊娠だと思わないでください。なるべくゆっくり過ごしてね」
などと言われる。

ただでさえ、高齢出産、精神薬処方、体外受精でバリバリのハイリスクスコアなのにさらに大変なことになってしまった。
とは思いつつも、今なにかできることはないので、走ったりなるべく重いものは持たないようにしている。
ゆっくりってどうすればいいんだ。

16週頃から胎動が始まった。
たまにポコポコと動くようになると、以前あった不安はいくらかマシになり、生々しい生命を感じるようになった。

子を授かる前は「自分の身体にもう一人、人間がいる感覚は薄気味悪いのではなかろうか…」という、ぼんやりした恐怖があったが、いざこうして生命を感じてみるとひたすら面白く、可愛いだけだった。もう会いたい。

私の妊娠は、もしかしたら途中でお別れをすることになるかもしれないし、産まれても満足に生きていけるか分からない可能性が人より高いと覚悟している。

だから、後から見返せるように、たまにこうやって記して記録できたらと思います。