瞑想章(Gītā Dhyānam)和訳
バガヴァッドギーターの瞑想章(Gītā Dhyānam)は、バガヴァッドギーターの前書きに当たるものですが、和訳が省かれる傾向にあり、ネット上で探してもほとんど見つかりません。そこでここに勝手に翻訳しました。サンスクリット初心者なので誤訳は多いと思いますが悪しからず。本文は京都・ハーバード方式で書いております。訳注あり。
上記のリンクは瞑想章の詠唱動画です。参考に。
pArthAya pratibodhitAM bhagavatA nArAyanena svayam
vyAsena grathitAM purANa-muninA madhye mahA-bhAratam
advaitAmRta-varSiNIM bhagavatIm aSTAdazAdhyAyinIm
amba tvAm-anusandadhAmi bhagavad-gite bhava-dveSiNIm(1)
プリターの御子に世尊たるナーラーヤナは自ら説きたもうて、
聖賢ヴィヤーサがマハーバーラタの中にて編みぬ。 無二なる甘露を降らす神聖なる18章を。
母よ、汝を探し求めん。バガヴァッド・ギーターにて輪廻より逃れんことを。(1)
(1)アルジュナ。マハーバーラタの主人公でパーンダヴァの一人。プリターは母親であるクンティーの別名。
(2)ヴィシュヌ神、すなわちクリシュナのこと
(3)バガヴァッド・ギーターは叙事詩「マハーバーラタ」に挿入された哲学的対話篇である。そしてこの叙事詩は聖仙ヴィヤーサが作者だとされている。
(4)アムリタとは飲むものに不死を与えるという伝説的な飲料。乳海攪拌神話で語られ、神々はこのアムリタを飲んでいるがゆえに不死であるという。ヴェーダに見えるソーマとしばしば同一視される。
namo'stu te vyAsa vizAlabuddhe phullAravindAyAta-pattra-netra
yena tvayA bhArata-taila-pUrNaH prajvalito jJAnamayaH pradIpaH(2)
汝に敬礼あれ、ヴィヤーサ。大いなる知恵、満開の蓮の如き目の者よ。
汝はバーラタ族の油で満つる知恵の灯を燃やすなり。(2)
(5)バーラタ族は伝説的な英雄バラタを祖先とする部族。「マハーバーラタ」はそのバーラタ族が中心となって引き起こす大戦争の物語である。
prapanna-pArijAtAya totra-vetraika-pANaye
jJAna-mudrAya kRSNAya gItAmRta-duhe namaH(3)
梯梧をもたらせし者に、駆り立てる棒持つ一本の手に、
喜ばしき英知に、クリシュナに、甘露なるギーターをもたらす者に敬礼。(3)
(6)パーリジャータは乳海攪拌の時に得られた神樹。願いをかなえる力があり、インドラが所有していたが、クリシュナが盗んでルクミニーに与えた逸話がある。モニエル辞書によればパーリジャータは梯梧を指すという。
sarvopaniSado gAvo dogdhA gopAla-nandanaH
pArtho vatsaH sudhIr bhoktA dugdhaM gItAmRtaM mahat(4)
全てのウパニシャッドは喜びの牛飼に乳絞られたる牝牛。
子牛の王子は知恵を吸う。大いなる不死なるギーターを絞るが如く。(4)
(7)クリシュナ。牛飼いという別名を持つ
(8)アルジュナ
vasudeva-sutaM devaM kaMsa-cAnUra-mardanam
devakI-paramAnandaM kRSNaM vande jagad-gurum(5)
神なるかなヴァスデーヴァの子。カンサとチャーヌーラを滅ぼせし者よ。
デーヴァキーの至福、現世の尊者、クリシュナに敬礼。(5)
(9)クリシュナの父。アルジュナの母クンティーの兄弟でもあるので、実はアルジュナとクリシュナは従兄弟同士。
(10)ヤーダヴァ族の邪悪な王。従姉妹のデーヴァキーの子に殺されるという予言を恐れて次々と生まれた子を殺害するが最終的にクリシュナに殺される。
(11)カンサに仕えたアスラ。クリシュナに殺される。
(12)クリシュナの母。カンサとは従兄弟同士。
bhISma-droNa-taTA jayadratha-jalA gAndhAra-nIlotpalA
zalya-grAhavatI kRpeNa vahanI karNena velAkulA
azvattAma-vikarNa-ghora-makarA duryodhanAvartinI
sottIrNA khalu-pANDavai raNa-nadI kaivartakaH kezavaH(6)
ビーシュマとドローナの岸。ジャヤドラタの水。ガーンダーラの青き蓮。
シャリヤの大鰐、クリパの流れ。カルナの大波。
アシュヴァッターマン、ヴィカルナの恐ろしき大魚。ドゥルヨーダナの渦。
まことに、パーンダヴァは大戦という大河をケーシャヴァを船頭として渡るなり。(6)
(13)アルジュナの祖父(正確には大叔父)に当たる人物。カウラヴァ軍最強の老将であり、ヴェーダを体得した人格者でもあった。
(14)カウラヴァの軍師。パーンダヴァにも兵法を教えたバラモン階級の武人。
(15)カウラヴァ側についたシンドゥ国の王。ドラウパディー(パーンダヴァ共通の妻)関連でアルジュナと因縁がある。
(16)シャクニ。カウラヴァ側の戦士。ドゥルヨーダナの叔父。骰子を自在に操れる能力を持ち、かつてパーンダヴァを骰子賭博で王国から追放した。
(17)マドラ国王、パーンダヴァの甥にあたるがドゥルヨーダナの懐柔策によってカウラヴァ側につく。
(18)カウラヴァ側の軍師。パーンダヴァにも兵法と武器の扱いを教えたバラモン階級の武人。
(19)ドゥルヨーダナに仕える武人。パーンダヴァと生き別れの兄にあたるが、カウラヴァ側につく。
(20)ドローナの息子。カウラヴァ側につく。
(21)カウラヴァ百王子の三男。邪悪な兄弟とは違い、正義感にあふれる性格をしている。
(22)原文はmakarA、伝説上の怪魚でヴァルナおよびガンガーの乗り物。またはワニといった水生の獰猛な生き物。
(23)カウラヴァ百王子の長男。天魔カリの化身であり、すべての元凶。甥にあたるパーンダヴァを猛烈に憎んでおり、様々な手段をもって殺そうとし、最終的にはクルクシェートラの戦いを引き起こした。
(24)パーンドゥの子の5兄弟。則ちユディシティラ、ビーマ、アルジュナ、ナクラ、サハデーヴァの五人。マハーバーラタの主人公。
(25)クリシュナ。「毛髪の濃い者」を意味する。
pArAzarya-vacaH sarojam amalaM gItArtha-gandhotkaTaM
nAnAkhyAnaka-kezaraM hari-kathA-sambodhanAbodhitam
loke sajjana-SaTpadair aharahaH pepIyamAnaM mudA
bhUyAd bhArata-paGkajaM kali-mala-pradhvaMsi naH zreyase(7)
パラーシャラの御子の御言葉は穢れざる蓮の如く、ギーターの実利は芳醇な香りの如く、
諸々の英知は雄蕊の如し。ハリの物語によりて目覚めを目覚めさせ、
世の美徳の虫たちは、日々喜びて飲みに飲む。
天魔カリを滅ぼし、蓮なるバーラタの詩が我らに善しくならんことを。(7)
(26)ヴィヤーサ。パラーシャラはその父。
(27)ヴィシュヌ神。則ちクリシュナのこと。
(28)不運や不和、争い、戦争を人格化した魔物。悪徳時代を支配するという。
mUkaM karoti vAcAlaM paGguM laGghAyate girim
yatkRpA tam ahaM vande paramAnanda-mAdhavam(8)
啞者を話さしめ、足無しに山を越えさしむ、
その御恵みを以て我は敬礼し給う。至福のマーダヴァ様よ。(8)
(29)クリシュナのこと。「春をもたらすもの」を意味する。
yaM brahmA varuNendra-rudra-marutaH stunvanti divyaiH stavaiH
vedaiH sAGga-pada-kramopaniSadair gAyanti yaM sAmagAH
dhyAnAvasthita-tad-gatena manasA pazyanti yaM yogino
yasyAntaM na viduH surAsuragaNA devAya tasmai namaH(9)
ブラフマン、ヴァルナ、インドラ、ルドラ、マルトの神々が神聖賛歌を以て讃えたる者に、
ヴェーダ、手足となるウパニシャッドでサーマ・ヴェーダに歌われる者に、
瞑想に居りて行く心を以て、行者どもが見る者に、
彼の終わりを、神々とアスラにすら知り得ぬ神に敬礼。(9)
(31)シヴァ。
(32)sAmagaとは「サーマ・ヴェーダを歌うバラモン」という意味なので直訳すれば「~でサーマ・ヴェーダを歌うバラモンが歌う者に…」となる。