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ルカ・ドンチッチの移籍について思うこと
日本時間2月2日の日中、私は仕事中だったがふと携帯でXを眺めると、信じられない情報が目に入った。
ダラス・マーベリックスのスーパースター、ルカ・ドンチッチがトレードされたというのだ。
私は2009年くらいからマーベリックスを応援している。
きっかけはバスケをしていたこともあり始めたゲームで使っていから、というなんとでもない理由であったが、次第にエースであるダーク・ノビツキーを中心にまとまったわかりやすい構図で、天邪鬼な私は、当時のスーパースターであるコービー・ブライアントを擁するロサンゼルス・レイカーズや、BIG3を結成したボストン・セルティックスが優勝争いを繰り返す中、「その他の勢力」としてのポジション自体にも魅力を感じた。
マーベリックスはその後、2011年に優勝を果たした。
エースであるノビツキーが悲願を果たしたときであった。当時は高校生であり、リアルタイムで視聴も難しく、現在ほど放送環境も整っていなかったため、応援すると言ってもネットで結果を追って短いハイライトを見て、たまにあるBSでの録画放送を見るくらいであったが、それを録画しては見る程度だった。ただ、明確に「応援」していた。そんな中で掴み取った優勝は、とても嬉しいものであった。優勝記念Tシャツはクタクタになるまで着込んで学校に行った。
それから、優勝時には高齢であったこともあり、チームは低迷していった。エースのノビツキーの怪我も多くなったし、サポーティングキャストが優勝後に解体。その後は新たなサポーティングキャスト探しにあれやこれや試しては、どれもなかなか成功とは言いがたかった。その頃、大学生になりあまり試合をフル尺で見る機会が少なくなったので、段々と結果を気にするくらいになっていった。
また、Bリーグの誕生など国内の人気も相まり、NBAを追いかける時間も相対的に少なくなっていった。だが、NBAで応援しているチームは、間違いなくマーベリックスであった。
そんなチームが低迷している中、一人のスーパースターをドラフトで獲得した。それがルカ・ドンチッチである。
16歳でプロデビューを果たし、2017-18シーズンには、ユーロリーグの強豪、レアル・マドリードで優勝を果たし、最年少MVPを獲得しており、その実力は折り紙付きであった。
彼は順調に頭角を表していった。驚異的なスタッツを残し、子どものように無邪気にバスケットボールを楽しむ姿勢や、変幻自在なパスや広い視野から繰り出される奇想天外なプレーは、本当に見ていても楽しかった。
ノビツキーの次は彼を中心に20年フランチャイズを築く。そう思っていた。
なんなら、ドンチッチは毎年のようにMVPレースを繰り返し、何度も優勝してGOAT(史上最高の選手)論争に名前が出されるような選手になるだろう。
ノビツキーが引退を決めた。おそらくルカ・ドンチッチの加入もそのタイミングに影響しているだろう。
1つのクラブでNBA入から引退まで在籍し、優勝まで経験した、まさにフランチャイズプレーヤーと呼ぶにふさわしいキャリアで、ドンチッチのもそれを期待していた。
というのも、リック・カーライルHC、マーク・キューバンオーナー、ドニー・ネルソンGMの優勝した2011年から続く固定された体制が続く限りは、同じようにしてくれるという期待感もあった。
NBAではその時、エースが急にトレード要求したり、フロント批判をしたり、選手がGMのような動きをして寄せ集めチームを作る動きが増えてきていた。
ただ、マーベリックスは、エースを軸にチームを作る方針は変わらないと信じていた。
マーベリックスを応援することは、そのチームのエースと心中することと思っていた。
当然、ルカ・ドンチッチのプレーにイライラすることもあった。
不適切なシュートセレクションや、レフリングに対するボディランゲージの悪さ、怠慢なディフェンスなど、改善してほしい点はいくらでもあった。
ただ、それを改善していくことも含めて成長の物語であり、それを克服したうえで優勝するストーリーを思い描いていた。
リック・カーライルHCやドニー・ネルソンGMが辞任し、オーナーチェンジが行われ、ジェイレン・ブランソン、クリスタプス・ポルジンギスなどがチームを去ることは悲しかったが、ただドンチッチがいるから、ダラス・マーベリックスはダラス・マーベリックスであると信じていた。
カイリー・アービングのようなスターが来てもダラスはルカ・ドンチッチのチームであると、当たり前のように思っていた。
先述したように、チームを応援することはルカ・ドンチッチを応援することであり、アンタッチャブルとはまさにこのことであった。
昨シーズンファイナルまでいったこもあり、今シーズンに補強も行い、今シーズンこそは!と意気込んでいるところであった。
そんな中、突然トレードの知らせが入った。意味がわからなかった。
そんなことはあるはずがない。パニックになった。
何をどう考えたらそうなるのか、意味がわからなかった。
私からしたら、ルカ・ドンチッチをチームから失うということは、クラブとしてのアイデンティティを失うということであった。
応援しているプレーヤーとチームを同時に失う感覚になった。
少し時間をおいて、正確な情報だということがより確かになっていく。
だんだんと公式情報も出て、会見等も行われた。
情報が出ていくと、憤りが増していくばかりだ。
これは私だけかもしれないが、移籍先のレイカーズはかねてからあまり好きではない。というのも、大きな都市に本拠地を置く名門クラブであるということで、実力以上の力が働いて選手獲得をしていると思うことが往々にしてあるからだ。ファンも多いので、それだけ心無い言葉を投げる人間も多く、そういうカルチャーも好きではない。
これらの背景も相まり、このトレードはいかんともしがたい憤りと悲しさがある。
これからNBAをどう見ればいいのか迷っているのが私の現在地だ。
チームを応援し始めてから、常にエースとともに歩んできた。
ノビツキーからドンチッチに受け継がれたバトンは、どこに渡されるのか。
先述の理由の通り、ドンチッチを追いかけてレイカーズを応援する気にはならない。ただ、ドンチッチのトレード先がどこであろうと、果たしてドンチッチを追いかけて応援するのであろうか?
何年も追いかけ続けた青いユニフォーム以外を、いまさら鞍替えする気になるのだろうか?自分はチームに愛着を感じていたからこそ、ドンチッチの欠点を含めて愛していたのだ。
だからチームを引き続き応援するのか?と言われると、「一人のエースと心中して優勝を目指す」ストーリーが好きであっただけに、それが失われ、また変わってしまったフロント陣に、同様なストーリーを期待することはできない。
私は、NBAという海で船から突き落とされて海に漂っているような状態のように感じる。
クラブのアイデンティティは、選手なのか、ヘッドコーチなのか、オーナーなのか、フロントなのか、運営会社なのか、ファンなのか・・・
自分の仕事に顧みたときも色々と示唆深い出来事であった。
おそらく長年愛した青いユニフォームをこれからも見続けるだろうが、私としては今のフロント陣やオーナーの方針に賛同はしかねてしまう。
心に整理がつくまで、少し距離を置きつつ、NBAは見守りたい。
トレードで入ったアンソニー・デイビスが、ファンの気持を慮った発言をしてくれたのが救いだった。
まだこれからも応援する!と言えるような状態ではないけど、少しずつ愛着が湧いて、素直に応援できる日を待ちたい(それでトレードされてしまうのは本当に嫌だけど)
それまではユーロリーグでパルチザンを応援したり、Bリーグを見たり、NBAをフラットに見たりして、平穏を保ちたい。
おわり。