Live2D Creative Awards 2019 応募作品の制作振り返り
※今更ですが去年書いたブログのクロスポスト。
元記事は2019年12月7日に投稿した記事「Live2D Creative Awards 2019 応募作品の制作振り返り」です。
先日、Live2Dのイベントalive 2019が開催され、Live2D Creative Awards 2019の受賞作品が発表されました。
ここ数年、このAwardsに応募するのが毎年の私の恒例になっています。2017年にはクリエイティブ賞を受賞したりしました。
今年も、小品ながらなんとか作品を一つ作って応募することができました。残念ながらグランプリ最終候補には残れませんでしたが、沢山の方に見てもらえたみたいで嬉しいです。
今回は、この応募作品制作の振り返りをまとめたいと思います。
作品の概要
7月に描いたイラスト『Tropical Love in the air』をLive2Dで動かした作品です。
差し出される左手の動きと大きく前かがみになる所、 柔らかく自然なアニメーションに特に力を入れました。
目指したこと
「1枚絵をどこまで動かせるか」に挑戦しました。また、アニメーションでは「柔らかく自然な動き」を目指しました。
表現したかったのは、 「優しさや頼りがいのありそうな雰囲気」 。
表情や仕草で強さ・優しさ・柔らかさ、実在感を表現することにこだわりました。
かかった時間
・パーツ分け……4週間+3日(実質作業8日間)
・モデリング……5週間(実質作業19日間)
・アニメーション……1週間(実質作業5日間)
・動画作成……2日
・全制作期間……9/4~11/10
パーツ分けにめちゃくちゃ苦戦しました。画面全体にかかる光のエフェクトとか、最後の仕上げにかけた色調補正レイヤーとかグロー効果とかその他諸々の処理が面倒くさすぎて……いっそ全部1枚のレイヤーに統合してしまおうかと本気で悩みました。なんか楽に分ける良い方法無いですかね……。
とくにこだわったポイント
特にこだわったのは、
1. 差し出される左手のモデリング
2. 大きく前かがみになるところ
3. 柔らかく自然なアニメーション
の3点です。
差し出される左手のモデリング
左手は、「軽く指を曲げた状態から、手全体を広げてこちらへ差し伸べる」という動きを表現するために、指の各関節と手のひらをある程度自由に動かす必要があります。
とはいえ、完全にグーにしなくても良いので、基本的には肘関節の応用でなんとかなりました。
※参考記事↓
実際の手と同じように、第3関節だけ縦横の動きを付けて、第2・第1関節は1方向にだけ動くようにしてあります。
基本的にはデフォーマで位置合わせと変形をしています。ただし関節のつなぎ目は、グラデーションが綺麗につながるようにメッシュ変形で整えています。
Live2D アドベントカレンダーの 担当日である12月21日に もう少し詳しい解説を書きました! ぜひチェックしてください!
大きく前かがみにするためのパーツ分け
大きく前にかがむ動きをつけるために、鎖骨等の首周りと胴体や胸を細かめにパーツ分けしました。
・胸(左右)
・鎖骨(左右)
・首
・胴体上部
・胴体下部
・右肩
・僧帽筋
↑ 胸(左右)
↑ 鎖骨(左右)
↑ 首
↑ 胴体上部
↑ 胴体下部
↑ 右肩
↑ 僧帽筋(と水着肩紐奥)
また、実際に動かしてみると、両胸と胴体上部の間がのっぺりしているのが気になりました。
なので、胴体上部パーツに影色を塗り足して、肌のグラデーションが綺麗につながるようにしました。
原画から大きく動かす場合、必要な塗り足しや追加パーツが動かしてみて初めて判明する場合があります。今回も、何度もパーツを描き直したり新たに描き起こしたりすることになり、何度も心が折れそうになりました (ヽ´ω`)
柔らかく自然なアニメーション
■体の各部分同士の連動
柔らかく自然な動きを付けるために意識したことの1つが「連動」です。
指が動けば手のひらが動く、手が動けば腕が動く……等、指←→手←→腕←→体 相互の連動を付けるようにしました。
動きの順番は、基本的には体幹→末端の順に動くようにしています。
ただし、連動させすぎるとグニャグニャ動きすぎて違和感が出る場合もあります。なので、ある程度動きをつけたら全体を見ながら動きの足し引きのバランス調整をしました。
■動きすぎ・動かなすぎを軽減
↑で書いたこととも関連しますが、見てほしい部分以外はあまり動かさないようにしました。
全部が動いていると、注目すべき部分がぼやけて目立たなくなるからです。
一方で、あまりにも動かなすぎて違和感がある場合もあります。
その場合は、目立たないような小さい・ゆっくりした動きをつけて違和感を軽減しました。
■例:左手のアップ時
例えば今回の作品では、左手のアップ時に腕や手が動いているのに体が微動だにしないのが気になるな~と思いました。
そこで腕や体にも連動の動きを付けたのですが、それだと注目してほしい左手の動きが目立たなくなってしまいました。
なので、なるべく小さくゆっくりした動き・変化に変更してバランス調整しています。
その他工夫したこと
■帽子と髪の違和感を軽減
帽子の立体感を出すためにツバを前後2つのパーツに分けたのですが、顔を動かすとツバと横髪・後ろ髪の境目に違和感が……
これをごまかすために、不透明度を下げたマスクパーツを使い反転マスクを作りました。
■点滅する光の表現
太陽光のフレアや光の粒子がキラキラ点滅するように、以下のような設定をしました。
│点滅パラメータに5点のキーを設定
│各キーごとに光パーツの不透明度を、50% 0% 50% 0% 50%のように交互に変化させる
パラメータの1往復で何度も変化するようにしました。
│目の開閉と呼吸のパラメータに紐付けて物理演算を設定
これで、瞬きや一呼吸ごとに光がキラキラ点滅するようになりました。
分かったこと
■パーツ分けは、細かく分けて塗り足しもするとかなり時間がかかる
パーツ分けは、当初の想定では3週間(実質作業6日)と考えていました。これでも余裕を持って多めに見積もっていたつもりです。
が、実際には4週間強(実質作業8日)と、想定よりさらに時間がかかっていましました。
パーツ分けを始めてみたら、思ったより多く塗り足しが必要だったり、細かく分けなきゃいけない事に気づいたり……もっと経験をつんで、時間見積もりの精度を上げないといけないですね。
■XYの動きのクオリティを上げるには下絵が必須
今回は用意してなくて苦労しました。横着するんじゃなかった……次からは絶対下絵を用意しよう(´Д⊂グスン
■中途半端にパラメータを付けて後で修正しようとするとめちゃくちゃ大変
1つ1つのパラメータの動きを完璧にしてから次のパラメータへ移ったほうが良いなと思いました。後で修正するのはめちゃくちゃ大変。 (顔のXY途中で髪の動き→また途中で顔のXY修正→髪全部修正しなきゃいけない地獄)
イラストの色塗り等と違い、途中で別の部分へ移って全体を少しずつ進めていくやり方は向かないようです。
■アニメーション編集時に初めてモデルの不備や足りないパーツが分かる事がある
アニメーション編集時に初めてモデルの不備に気づき、モデリング作業に逆戻りすることが結構ありました。
けっこう締め切りギリギリのタイミングでもそういう事があるので、それを織り込んで余裕のあるスケジュールを立てる必要があります。
『ライフハック大全』のHACK 013『「時間の見積もり」は必ず失敗することを想定して2倍にする』を徹底しなきゃな……と思いました。
■締め切り直前とか変なタイミングでアプリをアップデートしようとしない。
After Effects等Adobeのアプリを締め切り2日前とかにアップデートしようとしたら上手くいかずアンインストールしたりなんだりドツボにはまって大変でした。
次にやること
直近では、12月21日にLive2Dアドカレで左手の動きの詳細解説をやる予定です。
また、来年から本格的にLive2Dのお仕事を募集するために、ポートフォリオ等の準備も進めていきたいなと思っています。
あとは顔の角度XYをもっと綺麗に作れるように、ベーシックな正面顔のモデルで練習したい。
まとめ
というわけで、Live2D Creative Awards 2019 の応募作品制作を振り返りました。
今回は去年よりも時間的な余裕があまり無い状態でしたが、そんな中でも力を出し切れたのではないかなと思います。
また、前かがみがちゃんと作れたのは収穫でした。
作業ログツイートはmin.tにまとめてあります。
Live2D沼の魅力
今回は、Live2Dで1枚の絵から時間とストーリーを生み出すことができました。
イラストは、あるワンシーンを切り取ることができます。
Live2Dは、そのワンシーンの前後を作り出して、より印象的にできるのが強みだと思います。
そしてそれをつないでいけば、1本の映像作品にもなります。
1枚の絵を入り口に、どんどん世界を広げられる。
ある意味とてつもなく深い沼へ個人を引きずり込む、恐ろしい魅力をLive2Dは持っています。
その証拠に、映像作品作りに全く興味のなかった人間が、気づけば毎年なんらかの映像作品をLive2Dで作っています。(私です)もはや脱出は不可能です。
Live2D Creative Awards 2018に応募しました。献身的な作品づくりを通して考えた事など。しかしまだまだLive2D沼はこんなもんじゃないはず。SDKなどはまだほとんど触ったことないし。でもアドカレ見てるとめっちゃ楽しそうだし。来年はゲーム作ってみようかしら……
自分はいったい何がしたいのか、どこへ向かっているのか、全く分かりません。
でも、来年もLive2Dのさらなる深みへハマっていくだろうことは確実です。
やったことがないこと、知らないことがたくさんあるのはワクワクしますね!
2020年が今から楽しみです!!(^ワ^)ノ
※冒頭でも書いたとおり、これは去年書いたブログのクロスポストです。
元記事は2019年12月7日に投稿した記事「Live2D Creative Awards 2019 応募作品の制作振り返り」です。