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妊娠がわかったときのこと

「人生何が起こるかわからんな」と思うような出来事が何度かあります。ひとつは「結婚」、そして最も驚くべき出来事が「妊娠・出産」。

以前の記事にも書いた通り、20代のころの私はそこそこいろんなことを拗らせて生きてきており、私はこのまま結婚もしないし、子どももたないだろう、などと疑いもなく思っていました(母もそういうことはあまり望んでいなさそうだし、他の家族にも昔から「あんたと付き合う人は大変」だとさんざん言われてきた)。

ひとりのほうが気楽だ、と強がりでもなく思っていたし、結婚とか出産とか、「相手がいないとどうにもならないもの」を人生の予定として考えることがどうしてもできなかったのです。

そんな私がひょんなことから(?)今の夫と出会い、驚くほど順調にお付き合いを重ね、一緒に暮らすようになり、結婚するまではあっという間とは言わないまでも、まぁ「とんとん」と進みました。うまくいくときはそんなもんやで、と誰かが言っていました。

そして、妊娠したとわかったのは、結婚式を挙げた年の夏の終わりでした。入籍・結婚式・新婚旅行などの予定していた新婚イベントがすべて終わった後のことでした。

これは科学的根拠は何もないことなのですが、私たち夫婦は、自分たちに子どもはあまり期待できないだろうと疑いもなく思っていました。私たちはとても若いとういうわけではなく、かといって子どもをつくるには歳をとりすぎているというわけでもなかったのですが、周囲の友人たちを見ても、子どもをつくるというのはそう簡単なものではないと無意識に感じていたからかもしれません。

そもそも、結婚するという道を選んだのは「2人で生きる」ことそのものが大事だと考えていましたし、子どもを作ることが結婚の目的ではない、という思いがありましたので、「子どもはどっちでもいい」というスタンスでした。

あの頃は2人でいることがとても楽しかった時期で、よく2人で飲みにも行きました。趣味を楽しんだり、友人たちと遊んだりと充実していましたし、お互いに仕事も楽しくなってきた頃で、個々の目標のために頑張っていたという事情もあり…。

そんなわけで、すぐに子ども、と言う発想にもなりませんでしたし、先ほども書いた通りすごく若いわけでもなかったので、「子どもがいなくても楽しいよね」「子どもがもしできなくても大丈夫」という共通認識ができていました(そして私はあまり子どもの相手が得意ではないので、進んで子どもが欲しい!と言う気持ちではなかったのもあり)。

そんな中でのまさかの妊娠でしたので(そりゃやることやってりゃできるときはできるわなと今なら思う)、なんというか、私も夫も子どもを作れる身体だったんだなぁと妙に感心したものでした。

妊娠検査薬なるものを初めて買い、結果が出るまでに何分、という所定の時間を待たずしてくっきりと青いすじが浮かんだのは忘れられません。

妊娠がわかった時は、うれしいというよりも「どうしよう」と言う気持ちの方が強かったです。まずは仕事のことが心配でした。当時、社内の異動で新たな仕事についたばかりでしたので。1年もしないうちに産休・育休をとるのか?そんなことして大丈夫なんだろうか。くっきり陽性を示している妊娠検査薬を眺めながらぐるぐると考えていました。

妊娠したっぽい、と夫に伝えたところ、あまり驚いているようには見えませんでした。普段の私の様子を見て、妊娠しているのではないかと言ってきたのは夫だったので、そこそこ覚悟はしていたのかもしれません。少し考えるような顔をした後、夫は私にこう言いました。

「どうしたい?産みたい?」

それを聞いてハッとしました。子どもはあまりほしいと思わないだの子どもは苦手だの言っておきながら、私は授かった子どもを産む前提で悩んでいたのでした。なるほど。産まないという選択肢もある、と夫は言っている。夫は、私が異動したばかりで仕事に意欲を燃やしていることや、子どもがあまり得意じゃない性格もわかっているはずで、その上で、どうしたいか、私の意思を尊重しようとしてくれている。

それでも、私の答えは「できたからには、産みたい」でした。この時点ではまだ産みたいというよりも、産まなきゃいけないという義務感のほうが勝っていたけれども、ともあれ、産まないという選択は私にはできませんでした。心配ごとはあるけれども、では産むために最善のことをしよう、という考え方にこのとき切り替わったと思います。覚悟が決まったという感じでしょうか。産む、と答えた私に「ありがとう」と言った夫は、その後もよく私をサポートしてくれました(まぁ、それでもいろいろとやらかしてくれましたが、それはまた別の機会に)。

幸いなことに、私の職場はかなり育児の面では協力的ではありましたので、仕事は辞めません、十分に産休・育休をとって戻ってきますとだけ伝えたらあとは問題なく、上司も同僚もサポートしてくれました(ちなみに、上司にはつわりがしんどくなってきた妊娠3か月ほどで伝え、その他の同僚にはお腹が隠せなくなってきた頃にきちんと伝えました)。

今となっては子どものいない生活は考えられませんが、ときどき考えるのです。子どもがいなかったらどうだったんだろうって。でも、たぶん、そこそこ楽しく暮らしていたような気がします。考え方は人それぞれですし、子どもがいないからかわいそうなどということもないし、子どもがいるから幸せだということもないでしょう。2人だけなら2人なりの幸せがあり、子どもが産まれればまた違う幸せがあるのではないかと。

あの時、夫が「産まない」という選択肢に気づかせてくれたことは、結局産むことを選ぶにせよ、私にとって心の支えになりました。そして子どもを産むことを選んだ私に感謝してくれたことも。この人の子どもだからこそ私は産みたいと思ったのかもしれません。幸い、やっぱり子ども産まなきゃよかったと思うことは今のところありません。

2人だけでもきっと楽しかったと思うけれど、今は息子も加えた3人でまた違った愉快な生活を送れていることもまた幸せなことです。

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洋梨
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