EURO2024 オランダ代表総括

※個人的な感想文です。

・選出されたメンバーと成績

GK
Verbruggen 6試合出場 7失点
Bijlow     出場なし
Flekken     出場なし

DF
Van Dijk   6試合出場
De Vrij   6試合出場 1得点
Ake     6試合出場
Dumfries  5試合出場
Van de Ven 4試合出場
Frimpong    3試合出場
Geertruida  2試合出場
Blind      1試合出場
Maatsen      出場なし
De Ligt   出場なし

MF
Reijnders    6試合出場
Schouten    6試合出場
Simons       6試合出場 1得点
Veerman     6試合出場
Wijnaldum    3試合出場
Gravenberch 出場なし

FW
Gakpo   6試合出場 3得点
Menphis  6試合出場 1得点
Weghorst   6試合出場 1得点
Malen   4試合出場 2得点
Bergwign   2試合出場
Zirkzee    2試合出場
Brobbey  1試合出場

GL
ポーランド  2-1 Gakpo、Weghorst
フランス   0-0
オーストリア 2-3 Gakpo、Menphis
決勝トーナメント
Round16 ルーマニア  3-0 Gakpo、Malen2
準々決勝 トルコ    2-1 De Vrij、オウンゴール
準決勝  イングランド 1-2 Simons

準決勝敗退
総得点10(オウンゴール1)
総失点7

結果だけを見れば、EURO2004以来20年ぶりの準決勝進出と、決して悪くはない結果だった。
それどころか、大会前にFrenkie、Koopmeinersと言う中盤の主力2名が離脱してのこの成績は良い結果と言ってもよい。
とは言え、GLも決勝トーナメントも組み合わせに恵まれたこと、現行のEUROが3位でもグループを通過できるようになっていたおかげで突破できたことなど、自分たちの力だけで切り開けた結果では決してなかった。
そして、ハッキリと強豪と言えるフランスとイングランドには、フランスには引き分けたものの相手のフィニッシュの精度に助けられ、かつ終盤は引き分けに向けて予定調和となった試合で、真剣勝負となったイングランドには完全に中盤で力負け。Koemanの理想の形が見えたルーマニア戦と比較したら、明らかに中央で起点をほとんど作らせてもらえず、サイドでどうにかなんとかしようとすることしかできず、それも崩しではなく球際で競り勝った際に時たまチャンスになるだけという、打開力のなさを露呈することとなった。

・大会を通じて見えた課題

①CFの力不足

今大会では結局ずっとMenphisがスタメンに選ばれ、状況に応じWeghorstを投入する形がメインでしたが、ハッキリ言ってどちらも力不足でした。
Menphisに関しては正直彼の適性がここじゃないのが明確で、彼は3トップの真ん中ではなくむしろCFの周りを自由に動く方が活きるタイプ。彼をCFにしてしまうといつも彼の好きな足裏を使ったボールキープに入ってはロストの繰り返しで、上手くハマった時はチャンスになりますが、流石にロストすることが多すぎてリスクにしかなっていません。
Weghorstは高さもありますし前線からのチェイシングもとても頑張ってくれるので、いると助かるプレーヤーではあるのですが、純粋にテクニック不足。彼に収まってもそこからの展開ができないことが多く、またチェイシングを頑張りすぎるせいで居て欲しいところにいないケースも散見され、彼の良さが逆に仇となってしまうジレンマを抱えています。
今後もこの形を継続するならZirkzeeの可能性を一つ試してみて欲しい。今回はあまりにも使われ方が良くなかったですから、今後もっと良い形でしっかりと試していって欲しいです。
また、当然ながら今回選出されていないメンバーの奮起にも期待。

②左利きのアタッカーの不在

今回前線を務めたメンバーの利き足が全員右利きのため、単純に攻撃に変化がつけにくい。特に右のウイングの所に右利きしかおけないため、必然的にウイングバックのDumfriesと共に縦、縦の選択肢になりがちで、左サイドのGakpo、Akeペアのように2択を迫りにくく対処しやすい状況になってしまっていました。
これに関しては現状期待できる若手の候補もおらず悩みどころです。今更Berghuisとか呼びなおしても仕方ないですし。

③Van Dijkのラインコントロールの問題

大会当初からずっと指摘してきた彼とDe Vrij、Akeとのラインのギャップの問題は、彼が抜かれないことを優先しすぎラインを下げ過ぎていることにより発生しています。
ディレイは大事なことですから必ずしも悪いことではないのですが、これに甘えて中盤の戻りが遅かったり、前線のプレスバックが行われないことで、どんどん各ライン間が間延びしていってしまい、結果相手に好き勝手やられる時間が非常に長くなっていました。3失点したオーストリア戦は特にこの問題が顕著に出た試合でした。
ここは今一度意思統一を図ってほしいポイントになります。

④守備の仕方の問題

上述のVan Dijkの問題から続きますが、彼が遅らせることを前提としていることもあってか全体的に守備への切り替えが遅く、戻りが遅いシーンが散見されました。”どこでボールを取るのか?”が明確でなく、最後で跳ね返せればいいや、的な守備を見せられるシーンが多く、結果相手にエリアに近いところでプレーされ、セットプレーを与えてしまいそこから失点、と言う形が今大会は非常に多かったです。
前線のタレントがいないのはずっと言われている問題ですが、実は中盤のフィルター役、クラッシャー役がNigel de Jong以後ずっといないことも非常に大きな問題となっています。今大会では主にSchoutenとReijndersが務めましたが、彼らはこのタイプではありません。当然彼らには彼らの良さがありますのでそこは使い方ですが、選択肢として潰し役をやれる選手が一人は出てきて欲しいところ。

⑤組み立ての問題

上述の全体のラインを下げるなら下げるで、いっそのことカウンターの切れ味を徹底して磨くのも一つの手だと思います。前線に足の速いタレントは揃っていますし、中盤も打開力はなくても展開力はある選手は揃っています。
しかしながら、今大会ではそのカウンターが非常に稚拙でした。綺麗に決まったのはルーマニア戦アディショナルタイムのMalenのゴールくらい。と言うかそもそも、やりたい形ができたのがルーマニア戦だけです。あとの試合はどうにもダラダラとパスを回すだけで、たまにMenphisやSimonsが危険なポイントに顔を出してもらっても、そこからがなく戻すか潰されて終わり、のシーンをひたすら見せられました。とりあえずで縦パスを入れたところで次がないのは当然の話ですので、その後どうしたいのかを今一度チームとして徹底してもらいたいところです。
また、イングランド戦最終盤のパワープレイ、あまりにも稚拙で見ていて呆れるレベルでしたので、もちろんパワープレイが必要な状況にならない方が良いですが、イメージの擦り合わせが必要に思います。
これに関してはFrenkie、Koopmeinersの2名の復帰でまた変化が期待できますが、残念ながら今回出番がなかったGravenberchも一つ突き抜けてもらいたいものです。

・大会を通じ良かった点

①GK問題に一つ結論と言える選手が出てきたこと

前回のEUROはStekelenburg、カタールW杯の時はNoppertと、引退が近かった選手と大会直前になって選ばれたGKと、本当にGKに問題を抱え続けてきたOranjeですが、今大会のVerbruggenのパフォーマンスは非常に良かったです。セービングだけに留まらず、無難なだけでなく時に良い縦パスを入れたりと、攻撃面でもチームに良いアクセントを加えていました。今後も基本は彼が使われ続けるのではないでしょうか。21歳と若い彼がこれだけのパフォーマンスを見せてくれたことは非常に明るい話題と言えます。
とは言え、競争があった方が良いのは間違いないこと。今回選ばれていたBijlow、Flekkenに限らず、様々な選手の活躍による全体的な底上げに期待。

②Akeを休ませる選択肢ができたこと

今大会は、やられるシーンも見受けられましたが要所要所で良いプレーを見せてくれ、W杯の時にはチームMVPとも言えるパフォーマンスを見せてくれたAkeですが、それだけに休ませられないのが大きな課題となっていました。そこに出てきてくれたVan de Ven。
Akeほどの器用さはありませんが、彼もまたAkeにはない高さとスピードを持っています。中盤の潰し役の際の話でも言いましたが、選択肢となれる選手が出てくることはとても良いこと。
ケガをして今回は選ばれませんでしたが、Hartmanも大会前は良いパフォーマンスを見せていましたし、出番はありませんでしたがMaatsenもここ最近クラブで良いパフォーマンスを見せています。
少し前まで候補がおらず困っていた左サイドバックにこれだけの選択肢が出て来てくれたことは嬉しい悲鳴ですね。

③全体的な年齢層の若さ

今回選ばれたメンバーは、30歳を超えているのは26名中7名、26~30歳が5名、25歳以下が14名と、非常に若いスカッドでした。
若い選手たちが早いうちにビッグトーナメントを経験できたことは絶対に今後に繋がっていくはずです。

・今後の展望

今大会、スタメンではVan Dijk、De Vrij、Menphisの三人が30歳以上でした。この先のことを考えれば、彼らの力は必要なれど、親善試合等を通じて少しづつ新世代にシフトしていくことが必要になります。特にVan Dijkは33歳。新たなDFリーダーの台頭はそう遠くないうちに必須となります。
監督はKoemanの継続が既に決まっていますから理想とする形は変わらないので、その中で彼らが担った役割をより高いレベルで担える人材が必要になります。
DFに関しては候補がいますし、MFに関しては新たな選択肢は欲しいものの、Frenkie、Koopmeinersが復帰すればレベルは上がります。問題はやはりFW。ZirkzeeやBrobbeyなど候補がいるCFと違い、左利きのアタッカーの台頭は期待したいところ。これがゲームならRobbenの転生とか期待できますが、ここは現実。残念ながらそんなことはあり得ません。

もう9月にはネーションズリーグが控えています。今回選ばれたメンバーから、直前でケガで外れた二人以外で大きく変わらないとは思いますが、むしろFrenkieとKoopmeinersが絡んだら形がどうなるかを見てみたくもあります。
Koemanがどんな選択をしてくるのか、楽しみに待とうと思います。

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