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仕事と家族、両輪を担う大黒柱が考えること〜燕三条地域と本

ものづくりのまち、燕三条地域には工場が集まって、たくさんのつくり手たちが生まれ活躍しています。そんな動きに目をこらし、丁寧に集め、つなぎ合わせる。まちを新しく編集する視点で日本有数の産地に訪れた。

SANJOPUBLISHING連載「掌に、産業を」

日常で使い慣れた道具。どんなものであっても、製造できる工場や工房が無くなるともう出会うことがない。必要なときにはない、どの時代になっても付き纏うことだ。

燕三条地域では、半世紀以上続く工場が点在するなかで、失われた技術や道具も少なくはない。こうした変化の波で、工場を継ぐものは何を考えているだろうか。

野崎製作所での工場の様子

1902年に創業し、現在は金属プレス加工とスポット熔接を用いた製造を得意とする「株式会社野崎製作所(以後、野崎製作所)」にお邪魔した。今回の話し手は5代目となる野崎翔太郎さん(現:専務取締役)。

野崎製作所は、もともと木製家具の金物部品の製造からはじまり、日用品や産業用機会部品の製造を担ってきた。そのものづくり一筋の家系に生まれた野崎さんは、まさに工場を継ぐ世代といえるだろう。そんな野崎さんのことを知りたい。まず、推し本をお聞きした。

タイトル
最速でおしゃれに見せる方法
書籍情報
出版:扶桑社、著者:MB
内容紹介
ユニクロやGUでもおしゃれな人は何が違うのか?メンズファッション解説の第一人者が明かす「世界一わかりやすい着まわし術」!
推し理由
仕事ではスーツを着ることが多くなり、またプライベートでは子育てにおいても出先での服装を気にするようになりました。シンプルに着こなす、見た目を本当に大切ですから。

仕事もプライベートも見た目は大事、そう語る野崎さん。他にも絵本をはじめ、子ども目線で本を薦める子煩悩な姿に迫る。

就業時間後も忙しいわけ

株式会社野崎製作所5代目の野崎翔太郎さん

働き盛りとなる30代から40代、いわゆる子育て世代に該当する。幼い子どもを育てる親世代の気苦労はたえず、日々忙しいのは知ってのこと。野崎さんは40代になり、自社の責任者としてはもちろん、終業後も我が子を迎えにいくため、一日中忙しいという。

三条市に戻ってからは、製作所での機械の使い方を覚えたり、図面を描いたり。それから13年が経ち、若手社員に対して私自身が得てきた知識や技術を棚卸しながら作業を教えています。

私自身、どれかを任されるのではなく、すべての業務を理解し、伝えていく立場となりました。覚えるというなら、結婚や子育ても同じといえるかもしれません。すべて、はじめてのことばかりですから。

野崎製作所では、工場見学の一環として親子で行えるワークショップなども開催する。

「しばらくは、夜間での地域の集まりや飲み会には参加できないです」と笑う野崎さん。とはいえ、父親の責務を果たすことは、必ずしも仕事にとってマイナスとはいえない。2018年の春に立ち上げた自社ブランド「GRAVIMORPH(グラビモルフ)」の商品開発で経験が活かされた。

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GRAVIMORPH(グラビモルフ)とは、GRAVITATION(重力)とMORPHOLOGY(形態学)という2つの言葉を合わせた造語。シンプルな形のモノとモノとの組み合わせが、自然の力である重力の影響を受けたとき、素朴でユニークな動きと心地よい音色を生みだすもの。

2018年の春に、デザイナーの樋口一成さんが私たちの工場に見学しに訪れたことがきっかけで誕生しました。GRAVIMORPHでは、自分と見つめ合い、自身を向上させ、疲れた心を癒すこと。そうコンセプトを立てられたのも、私たち、働き盛りの世代の苦労を知っているからこそです。

ただ、GRAVIMORPHはコロナ禍をきっかけに、海外の人たちがお家のインテリアで使い始めてくれて。GRAVIMORPHをきっかけにあたらしい業種や取引先からのご相談も増えました。

海外で気づいた、ファッションの重要性

野崎製作所では2023年に入り、コロナ禍の影響が少なくなってきたタイミングで休止していた展示会への出店を再開。「GRAVIMORPHをはじめ、海外にも燕三条地域でつくられる商品の良さを広めたい」と野崎さんはドイツやニューヨークで開催される主要の展示会に飛び回る予定だ。

海外で行われる展示会には以前から足を運んできましたが、向こうって学校教育でファッションを学ぶシステムがあるんです。日本では、ファッションの基本を学校で教えてもらうこともなく、自己流ですよね。

私も、どんどん年を重ねてきて。子どもも育ってきたなかで、こうした海外で得てきたファンションの意義というか、相手方が持つ印象や常に見られていることを子どもにも教えられるように学ばないとは思っています。

辞書で調べると、ファッションとはある時点における広く行われているスタイルや風習のこと。三条の地で120年近くお客様の要望を応え続けてきた野崎製作所とファッションを押さえることはどこか似ているように感じるのは私だけだろうか。

それは、野崎製作所が手掛けるサービス。多品種小ロット生産を続けることと紐づくように感じた。

私たちが手掛ける、農業機械部品や建築金物を製造するために行う金属プレス加工やスポット熔接は、ものづくりにおける王道といえます。ただ今日まで生き残れたのは、同じ道具をつくり続けられている工場であることです。

意外と知られていませんが、私たちに依頼してくださるメーカーや工場によって仕様や金型も異なっていますし、他にはもう……つくれる工場がないこともしばしば。時代は変化し、小さい工場は無くなっていきますから。

一方で、そこには需要があり、つくれないから道具が無くなるのではなく、私たち、社員数13名で創意工夫しながら製造で応えてきた歴史があります。

野崎製作所では、これまでの製造技術に加えて、人材不足が叫ばれる介護業界や建設業界で使用されるロボット開発も検討し、受け皿を用意していきたいと野崎さんは語る。

次を継ぐものは日々忙しいながらも、ものづくりの枠を超えた知見を持って、これからの時代とものづくりへの期待に応え続けていくのだろう。そう予感するひとときとなった。

取材先

藍庭
〒955-0021新潟県三条市下保内3678
電話:0256-64-7565 (営業時間:8:00~17:00 日・祝日休み)
Webサイト:http://ai-niwa.com/index.html

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