アイヌ語輪読会レポ #8
こんにちは、北大言語学サークルのちょぬです。
こちらの記事は第8回アイヌ語輪読会の学習レポートです。
今回は、第22課「名詞化辞と形式名詞」、第23課「時間表現(1)―時間副詞と過去、完了の助動詞」、第24課「時間表現(2)―意志、未来、推量の表現」の内容を扱いました。
学習内容
第22課「名詞化辞と形式名詞」
名詞化辞と形式名詞は、共に前の内容を従属節化する機能を持っています。例えば、名詞化辞 ruwe を用いて次のような文が作れます。
poronno cise an ruwe ku-nukar a wa. 「たくさんの家があったのを私は見たよ」(佐藤, 2008:178)
(poronno…たくさんの cise…家 an…ある ruwe…~というの ku-nukar a wa…私は見たよ)
名詞化辞と形式名詞はよく似ていますが、
形式名詞……関係節化を受けて連体修飾句となる
名詞化辞……関係節化を受けず、文そのものを従属節化する
として、佐藤(2008:180)では一応区別されています。
名詞化辞に関する議論はこれまでの輪読会でも何度か交わされています。以下の記事をご参照ください。
第23課「時間表現(1)―時間副詞と過去、完了の助動詞」・第24課「時間表現(2)―意志、未来、推量の表現」
アイヌ語では、時制を標示することが義務的ではありません。時制を示していない文であれば、文脈次第で現在の意味にも過去の意味にもなりえます。
時制を示す際はtane「今」やnisatta「明日」などの時間副詞が用いられます。
第23・24課ではさまざまな時間副詞の意味が解説されています。
英語などと異なり、アイヌ語は時制やアスペクトを標示する特定の形式を持つわけではありません。そのため、文の時間的意味について考えるとき、語が表す意味が特に重要になります。
まとめ
今回の輪読会では、以前からよく話していた名詞化辞の文法機能を中心に話し合いが進みました。
また時間表現については、まずは語彙を覚えることが先決であるという認識を共有しました。その上で、時間表現の意味に対する疑問を徐々に感じられるようになればと思います。
文献
佐藤知己(2008)『アイヌ語文法の基礎』大学書林