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「論語」から、中国デジタルトランスフォーメーションを謎解きしてみよう。第109回

本シリーズのメインテーマは「論語」に現代的な解釈を与えること。そしてサブストーリーが、中国のDX(デジタルトランスフォーメーション)の分析です。中国の2010年代は、DXが革命的に進行しました。きっと後世、大きな研究対象となるでしょう。その先駆けを意識しています。また、この間、日本は何をしていたのか、についても考察したいと思います。
 
憲問十四の二~四
 
憲問十四の二
 
『克伐怨欲不行焉、可以為仁矣。子曰、可以為難矣。』
 
勝利を欲し、自惚れ、怨み、欲を出す、これらを行なわないことで仁といえるでしょうか。孔子曰く、「難しい。仁かどうかわからない。」
 
(現代中国的解釈)
 
強く、立派に見せることで、パワーを高める。中国における、基本動作である。そうしたアピールのためか、最近、ファーウェイは、軍団制を採用し始めた。2021年、5大軍団を旗揚げ、さらに2022年に10軍団を追加し、トータル15軍団となった。それぞれ、はなばなしい結団式を行うなど、派手なパフォーマンスをしている。15ともなると、従来組織をプロジェクトチームに置き換えているかのようだ。勝利を貪欲に求めた結果かも知れない。
 
(サブストーリー)
 
最初の5部門と、税関・港湾、道路、鉱山、データセンターのエネルギー、太陽光発電、である。これらをスマート化するプロジェクトだ。翌年追加された10部門は、電力デジタル化、政務ネット、空港と軌道、ネットメディア、運動健康、提示新核、園区、データセンター基礎、デジタル接点、となっている。
 
そのうち税関・港湾軍団は、昨年開催された、スマート港湾大会において、中国港湾大会協会及び中国通信情報センターと、戦略提携を結んだ。デジタル時代の新スタンダードの制定、人材育成、イノベーションの3つの課題について、それぞれの強みを持ちより、スマートポートの建設を加速させる。
 
さらに、天津港集団など個別の港湾とも戦略提携を結んでいる。天津港集団の楊傑敏氏は、ファームウェイは、通信技術、人工智能、自動運転の知見や専門技術を生かして、スマートポートのイニシアティブを取っている、と評価する。欠くべからざる存在となっているようだ。
 
日本の役所も、国民のためを思うなら、デジタル庁、こども庁などに順次再編し、最終的に本省をお役御免とすべきだろう。
 
憲問十四の三
 
『子曰、士而懐居、不足為士矣。』
 
郷里のことを気にする男は、一人前の男とするには足りない。
 
(現代中国的解釈)
 
功成り名遂げるまで、故郷を振り向くな。孔子の時代は、帰郷するのに何か月もかかっていた。さらに数年にわたる服喪期間もある。葬儀屋出自の儒教にとって、これは譲れない。そうした社会環境下で、いちいち故郷を気にしていたら、門族に仕事などできない、という意味だろうか。現代のような春節休暇は、形を成していない。
 
(サブストーリー)
 
現代では、大みそかに当たる「除夕」の日は故郷に集まり、日本の紅白歌合戦に相当する国民的番組「春節聯歓晩会(春晩)」を見る。春晩は改革開放政策とほぼ同時、1979年に始まった。
 
演目は、歌曲、舞踏、雑技、演武、創意節目、ショートムービー、小品、公益広告等となっていて、紅白歌合戦よりバラエティーに富む。CCTV(中央電視台)を始めとする全媒体の延べアクセス数は110億1100万人に及んだ。そのうち15歳~44歳のユーザーが50.5%を占めた。CCTVの視聴率は20.6%、全媒体の視聴率合計は、76.3%、前年比2.2%アップした。SNS「微博」の#春晩は1376億5000万アクセス、これは前年比74億5000万のアップだった。3年ぶりに帰郷し、故郷で視聴した人が多く、話題として取上げられるケースが増えた。紅白歌合戦に比べ、若者に媚びずとも、若い世代にアピールできていたようだ。
 
憲問十四の四
 
『子曰、邦有道危言危行。邦無道危行言孫。』
 
孔子曰く、「国に道があるならば、言葉も厳正に、行動も厳正になる。国に道が無いとすれば、行動を厳正にし、言葉は控え目にする。」
 
(現代中国的解釈)
 
リーダーはまず、行動で示さなければならない。組織改革を目指す場合はなおさらだ。いかにも世界最古のビジネス書にふさわしい。
 
(サブストーリー)
 
シャオミ(小米)の自動車事業は、創業者・雷軍の言葉、ツルの一声から始まった。それがようやく実体を伴い、見えてきたようだ。ただし公式発表ではなく、スクープである。とにかく行動を示す段階には入ったようだ。
 
雷軍は、自身最後の創業事業として、造車(自動車生産)へ進出した。スマホ、IOT家電、そして集大成として自動運転車へ至る。これは彼のロードマップ通りだ。
 
小米科技園に覆面テスト車があらわれた。ルーフトップにはレーザーレーダーを備えている。ファストバックスタイルにリアスポイラーを備え、ネット上では、ポルシェ・タイカン似、またはポルシェ・パナメーラ似の先進性が見える、と評されている。
 
このスタイルから、最初にリリースする車は、内部コードネーム。Modenaというセダンらしい。エントリーモデル26万元~30万元、ハイエンドモデルは35万元以上、2024年第一四半期に発売されるようだ。クアルコムの次世代、自動運転チップ8295を採用、sy電池は、エントリーはBYD、ハイエンドはCATLと分けている。自動運転システムも分けているようだ。
 
他社がSUVをリリースしているのに対し、スタイリッシュセダンを前面に出す。ライバルはテスラMode 3である。さらに翌年には、コードネームLemansという車もリリースする。
 
自動運転システムでは、国内メーカーまたはエヌビディアのレーダーを使い、そのアルゴリズムを小米が開発する方向だ。
 
しかし、他社に対するアドバンテージがどれほどあるかはわからない。発売する2024年にはEV車に対する政府支援が終わるタイミングだ。また自動運転パーツは米国メーカーに頼っている。セダンは売れるのか、という疑念もある。サクセスストーリーは全く見えていない。控え目に振舞っておくに越したことはない・

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