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「論語」から、中国デジタルトランスフォーメーションを謎解きしてみよう。第152回

本シリーズのメインテーマは「論語」に現代的な解釈を与えること。そしてサブストーリーが、中国のDX(デジタルトランスフォーメーション)の分析です。中国の2010年代は、DXが革命的に進行しました。きっと後世、大きな研究対象となるでしょう。その先駆けを意識しています。また、この間、日本は何をしていたのか、についても考察したいと思います。
 
陽貨十七の十五~十六
 
陽貨十七の十五
 
『子曰、鄙夫可与事君也与哉。其未得之也。患得之、既得之。患失之。荀患失之、無所不至矣。』
 
孔子曰く、「つまらない男と、共に主君に仕えることはできない。その男は地位が低いときは、地位を得ようと気を病み、地位を得たときは、地位を失うことを気に病む。もし地位を失いそうなら、どんなことでもやりかねない。
 
(現代中国的解釈)
 
フードデリバリーやシェアモビリティのリーディングカンパニー、美団が、ライブコマース部門を強化するという。中国ではショートビデオ界の巨頭、抖音(TikTok)や快手が、ネット通販部門を大躍進させている。その他、女性利用者の多い、小紅書、若者に強いB站など、投稿シェアやコンテンツ視聴を行なうすべてのアプリが、ライブコマースを強化している。出自の異なる企業が 同じ分野に集中する。美団は合併や買収を繰返してきたが、ここのステージでも一定の地位を得る、と決意したのだろう。
 
(サブストーリー)
 
ライバル視する抖音は、共同購入とデリバリー事業の拡大に努めている。9月には、北京、上海、成都など基本6都市から福州、武漢などを追加、24都市へ活動範囲を拡大した。快手も食品個別配達事業のテストを開始、こちらも美団の本丸、デリバリー事業を浸食しつつある。対抗するには、彼らの本丸、ショートビデオ事業に乗り込むしかない。

 
そのため美団は、関連職種の人材募集に注力し続けている。4月には、ショートビデオ関連ポスト80以上を公開募集、ショートビデオビジネス全体をカバーした。最近では、より詳細を極める専門職種にシフトしている。顧客テストやアルゴリズム開発を行なうエンジニア、コンテンツ共同開発や、コンテンツ推奨方法のエンジニア、商業アナリストなど、174もの職位を募集している。
 
さらに美団はアプリのレイアウトを変更し、ショートビデオを中央に配置した。ショートビデオを美団で視聴する習慣を身に付けてもらい、プラットフォームの発展につなげる。美団アプリが投稿ビデオをアップできるようになったのは、今年7月のことである。まだ第一段階に過ぎないが、美団がこのビジネスに賭け、抖音や快手と全面対決するつもりなのは間違いない。ブロガーたちも次々にアカウントを開設している。抖音で80万人のファンを持つ有力インフルエンサーも、美団でのアップロードを開始、こちらのファン数も4万人を超えた。

 結局IT巨頭のアプリは、みな同じような機能を持つことになる。巨頭の地位を守るためには、何でもやる。
 
陽貨十七の十六
 
『子曰、古者民有三疾。今也或之亡也肆、今之狂也蕩。古之衿也廉。今之衿也忿戻。古之愚也直、今之愚也詐而已矣。』
 
孔子曰く、「昔の民には3つの悪い習慣があった。今はもうなくなっているかも知れない。昔の頑固者は直言、今の頑固者はわがまま。昔の自信家は清廉、今の自信家は無法者。昔の愚者は正直、今の愚者は噓つき。」
 
(現代中国的解釈)
 
アリババ創業者の馬雲が、またぞろいろいろな話題を提供している。馬雲ファミリーが、米国証券取引委員会へ長期株主権計画を発表した。これにはアリババ株を売却する場合の前提条件が記載されていたため、馬雲がアリババ株売却を計画している、と解釈され憶測や不安を引き起こした。しかしアリババは、売却をきっぱり否定した。嘘つきというわけではない。ただし馬雲は資金を必要としている。農業や公共福祉プロジェクトの投資するためである。いずれ売却にかかるのは間違い
 
(サブストーリー)
 
その計画の一端が明らかとなった。杭州馬家厨房食品有限公司が設立されたからだ。資本金1000万元、経営範囲、食品販売、貨物輸出入、食品農産品卸売り、日用品卸売り、酒店管理、技術サービス等となっている。株主は馬雲99、5%所有の杭州大井頭弐拾弐号文化芸術有限公司。同社は一米八海洋科技有限公司に10%出資した。この一米八海洋の経営範囲は、農産品のスマート物流設備販売、海水要職と海洋生物資源利用設備製造、漁業、スマート農業管理、サプライチェーン管理などである。そして、かつてのアリババ、アント・グループ系幹部社員が顔をそろえている。
 
馬雲は、農林水産業に高い関心を持っている。過去2年間、オランダ、日本、タイなどで多くの農業、水産プロジェクトを視察した。日本では海洋養殖関係の大学を視察、学習意欲を見せていたという。それらの知見を生かし、ムール貝の養殖から手がけるようだ。
 
アリババは商品開発に熱心だ。淘宝村とよばれる、ネット通販売上1000万元以上、供給商100社以上あるいは家庭数の10%以上の行政単位が7780カ所ある。農林水産関係も多い。これら地方の経済活性化は、間違いなくアリババの功績である。このような商品開発への関心は、楽天やヤフーショッピングには見られない。例えば、楽天の三木谷社長が、農林水産業の会社を作ったところで、誰も気まぐれにしか思わないだろう。商品そのものにあまり興味がないのは、これまでの彼の言動から明らかだ。一方馬雲のムール貝は、自らライブコマースに出演すれば、バズりは確実だ。

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