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「論語」から、中国デジタルトランスフォーメーションを謎解きしてみよう。第173回

本シリーズのメインテーマは「論語」に現代的な解釈を与えること。そしてサブストーリーが、中国のDX(デジタルトランスフォーメーション)の分析です。中国の2010年代は、DXが革命的に進行しました。きっと後世、大きな研究対象となるでしょう。その先駆けを意識しています。また、この間、日本は何をしていたのか、についても考察したいと思います。
 
子張十九の二十~二十一
 
子張十九の二十
 
『子貢曰、紂之不善、不如是之甚也。是以、君子悪居下流。天下之悪皆帰焉。』
 
子貢曰く、「殷の紂王の不善は、実際には伝承されるほどひどいものではなかった。それゆえ君子は、ガラの悪い地域にいられない。天下の悪がみなそこに帰属してしまう。」
 
(現代中国的解釈)
 
PCの世界は、この10年、谷底を低空飛行しているようなものだった。統計によれば2023年、中国本土のPC出荷台数は4170万台。2022年比で17%も減少した。話題になるのはスマホと半導体ばかり。ハイテク製品としては、ガラの良くない地域に捨ておかれたような状況だった。それがこのところAI PCを前面に押し出し、再び活気付いてきた。PCメーカーの代表、レノボは話題性でファーウェイに圧倒されていたが、再び陽が当たるときが来たのだろうか。
 
(サブストーリー)
 
AI PCとはなにか。それはAIをクラウドではなく、ローカルのCPU/GPU/NPUなど、各種のプロセッサで処理するPCという。一方、AI PCの定義は各社ごとに異なり、NPU(Neutral Network Processing Unit)を使っていればAI PCという解釈もある。それではNPUとはなにか。AIや機械学習プログラムで使用される最も一般的なアルゴリズム、ニューラルネットワークに特化したプロセッサー。グラフィック処理、ニューラルネットワークなど、特定のタスクのため設計されるチップで、効率が高い。
 
2024年1月のデジタル技術見本市CES2024(ラスベガス)では、レノボ、ファーウェイ、アップル、マイクロソフトなどがAI PCのエコシステムを発表、クアルコム、メディアテック、インテル、AMDなどもこの流れに乗っている。レノボの見解ではAI PCには次の5点が必要という。
 
1 ユーザーと自然に対話する最適化されたAIエージェントを実行すること。
2 CPU/GPU/NPUを組み合わせた、多彩な演算能力をもつこと。
3 より多くの個人ライフサイクルのデータを収集し、個人データベースを形成すること。
4 AIアプリケーションのオープンなエコシステムを提供すること。
5 個人データとプライバシーのセキュリティを保護すること。
 
これらの機能により、PCはもはやパーソナルコンピューターではなく、AIパーソナライズコンピューターとなる。そのためAI PCは、大規模モデルにつなぐことも、独立した環境でも大規模モデルを実行することができるのだ。
 
レノボは2017年以来、AIを自社戦略に組み込み、87億元を投じてきた。2023年8月、さらに70億元以上の追加投資を表明した。
 
そしてレノボは、CES2024において10型におよぶAI PCを発表した。世界初のビジネスAI PC ThinkPad X1 Carbon AI、次世代の超小型ThinkCentre neo Ultraなどである。その効果ではないが、2024年第一四半期の出荷量は1370万台、前年同期比7.8%と復調傾向にある。
 
2024年は、レノボ設立40周年の節目に当たる。低空飛行の10年にわたる悪い時間を脱し、再び輝きを取り戻すか。AI PCの成功にかかっている。
 
子張十九の二十一
 
『子貢曰、君子之過也、如日月之食焉。過也人皆見之。更也、人皆仰之。』
 
子貢曰く、「君子の過ちとは、日食や月食のようなものだ。君子の過ちには皆の注目があつまる。君子が過ちを改めると、皆これを尊敬する。」
 
(現代中国的解釈)
 
自動運転は、掛け声ばかりの空回り感が強くなってきた。ロボタクシーは一部地域で実現しているが、商業化の成功というには依然遠い。すでに多額の投資が蒸発してしまった。自動運転の研究開発は、過ちだったのだろうか。注目があつまっている。
 
(サブストーリー)
 
中国では昨年の段階で、少なくとも46社の自動運転関連企業が活動していた。有力どころは「百度」、「小馬智行」、「文遠知行」、「AutoX」、「Momenta」、「図森未来」、「元戒後行」「地平線」などである。
 
このうち「小馬智行」「図森未来」は、主に自動運転トラックを研究している。しかし、図森は内紛で迷走、一方の小馬は、毎年1億元以上の売上をあげるようになってきた。

小馬智行は2016年設立、本部は広州。広州、北京、上海、シリコンバレーに研究センターを持つ。さらにトヨタ、ヒュンデ、第一汽車、広州汽車などの大企業と提携している。
 
小馬の自動運転の実走距離は500万キロ、日常運行距離は2000キロで、いずれも中国最長を誇る。世界最長6時間の連続運行も達成した。中国外運と共同で2020年に設立した「青騅物流」において200台以上のトラックを運用、L4級自動運転における貨物輸送量は、2000万トンキロに達した。西は新彊ウイグル自治区アラシャンコウ、東は上海、北は黒竜江省漠河、南は深センまで、すでに全国を結んでいる。今後は複数のトラックによる、編隊運行を目指す。自動運転でもトラック部門は、過ちを乗り越え、社会実装が進みつつあるように見える。

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