【第31回】コメ需給逼迫さらに深刻化 端境期の混乱必至の情勢に
神奈川県で食品スーパーに精米を納入している中堅卸。取引先には今年に入ってすでに3回目の値上げ要請を行なっているという。
経営者は「23年産の出回り始めからすると玄米価格は8000円値上がり。取引先に何回値上げ要請しても間に合いませんね。先方からは値上がりしている理由を説明しろと言われていますが、なぜなのか私にもわかりません」と頭を抱えている。
また、ドラッグストアを主な取引先にしている埼玉県のある中堅卸は、「取引先には当社が現在手持ちしている在庫がなくなったら精米の供給を止めますと通知しました」と終売宣言をしたという。この卸は他の卸に比べると資本力には余裕があるが、それでも異常とも思える市中価格の急上昇にはお手上げ状態で、高い玄米を追いかけるよりも終売宣言をした方が良いと判断した。
秋田あきたこまちなど全国銘柄だけでなく、関東コシヒカリも2万円の大台を超えるまでになった。業務用銘柄も大幅に値上がりしている。小売店では仕入先の卸が玄米供給に制限をかけ始めたことから、日本米穀商連合会(日米連)が需給状況改善を農水省に要請するまでになっている。
引き合いが強まる外国産米カルローズ270円も
日米連が農水省に対策を求めに行ったとき、農水省の担当者は「量販店には通常通り精米が並んでいますよね」と言ったという。暗にコメが不足している状況ではないということと、米穀小売店がコメが足りないというのは事前契約をしていなかったことが原因で自己責任だと言いたかったのだろう。
これはあまりにも米穀小売店に対して酷な言い方であるばかりでなく、現在のコメ政策からしてあまりにもおかしな指摘である。なぜなら全農や大手卸は国から支援を受けて周年安定対策という名のもとにリスクなしで在庫を保管できるようになっており、しかもその在庫がコメの値上がりで莫大な利益を生むという構造が作られているからである。
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