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どんなコメを作付けるのか 生産者たちの難しい判断【第39回 コメ記者熊野のコメ市場情報】



2024年12月18日に千代田区平河町で開催された農政調査委員会主催コメ産業懇話会での意見交換会は圧巻だった。テーマは 「令和のコメ騒動、価格高騰を総括し、来年の展望」。新年度のコメ作付け動向については、高齢化、後継者不足などにより急速に疲弊している生産現場は、増産しようにも設備投資が追い付かず生産拡大には限界があるという見方が示された。

主食用米の価格高騰は続き、その煽りで25年産加工原料米の価格も大幅に値上がり、輸出用米の契約も減少するとの予想もあった。

会場には大規模生産者や農協、卸、原料米搗精業者など流通業者のほか、パックご飯・米菓メーカーなど実需者も参加。ズームでは全国各地の再生協議会や自治体も参加し、意見交換に加わった。実需者からは現在の原料米不足だけではなく、25年産の原料米確保を懸念する声も聞かれた。

コメ相場は投機的様相 完全な売り手市場に

仲介業者が会員向けにFAX送信している売り買いメニューには「売り物がありません」と表示してあった。初めて見た表示だ。

市場取引では24年産米の出回り最盛期のはずなのだが、売り物薄のまま価格だけが上がっている。この状況について卸や仲介業者の中には「ライスマネーゲーム」「空中戦」と表現するところもある。実際、九州の取引会で2等米が置場3万円で成約したが、これを買ったのは関東の業者で、それをすぐに転売して利ザヤを稼げるような状態になっているのだから、一種の投機ゲームとさえ言える。

仲介業者のホームページのコメントでは「軒並み3万円超え」「売り物激減」などの見出しが並んでいる。

また、
(1)23年産米の不足→令和のコメ騒動→24年産米の早食い
(2)不信が募る農水省発表の作況→全国作況101を信用して良いのか? (3)系統にコメが集まっていない→事前契約枠のカットを受け卸の積極的なスポット買い
(4)農家保有米の増加→数量不明
(5)市中相場値上がりを期待した思惑保有

こうしたわかりやすい表現で、市中価格の高騰の原因を説明している仲介業者もいる。

コメ不足の現状については、農水省が主催したコメ産業化のための意見交換会でも年間20万tものコメを使用する大手コンビニベンダーが、いまだに5万t不足しているとし「南海トラフ地震予報のとき政府備蓄米を緊急売却していればこんなことにはなっていない」と農水省の無策を厳しく批判するということまであった。

農政調査委員会では情報交換会開催前に生産者や農協、卸、実需者などに事前アンケートを実施した。

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