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【第30回】ふるい下米の異常高騰 米穀業界最大の関心事に


3月5日に開催された農林水産省主催の食糧部会で初めて「ふるい下米の発生量」のデータが示された(図1)。その下のページに「MA米及び政府備蓄米の加工原料用途への販売について」と題して「平成24年産におけるふるい下米発生量の減少に伴う国産加工原料の不足分に対して、平成25年4月に約2.7万tの政府備蓄米を販売」と記されている。

ふるい下米の発生量

加工原料用として政府備蓄米を販売した過去の例について言及したのは、今後の対応を示唆したとも受け取れるだろう。実際、加工用原料米をめぐる状況は逼迫(ひっぱく)している。

食糧部会や国会でも取り上げられる事態に

23年産米(令和5年産米)のふるい下米の発生量は著しく少なく、農林水産省が示したデータでは32万tで前年産に比べ19万tも少ない。率にすると36%減にもなり、過去に例がないほどの少なさである。このため需給が逼迫して価格が急騰、無選別と称されるふるい下米(くず米・特定米穀)は、キロ200円というこれまでにないような高値になっている。

価格の高騰は無選別などの玄米だけでなく、それを搗精して味噌、米菓、焼酎などコメ加工食品業者に販売されるくず白米も250円以上している。

さらには全国米穀工業協同組合(略称「全米工」)の直近の取引会では、ヤケ米や砕米といった副産物クラスのものが200円以上で買われるという異常事態になっている。

米菓、味噌などコメ加工食品業界は2度にわたって農林水産省に加工原料米の安定価格と安定供給を求めて要請したが、農水省からは「特定米穀(ふるい下米)は発生するものであって生産されるものではない」との理屈で、対策は示されなかった。

しかし、食糧部会のみならず、国会でもこの問題が取り上げられるようになり、政府備蓄米の緊急売却があるか否かは加工原料米だけの世界ではなく、主食用も含めた米穀業界の最大の関心事になっている。

米菓・味噌・焼酎業界では死活問題に

加工原料米は制度によって様々なコメがあり、流通実態も実に複雑である。表1は農林水産省がマンスリーレポートに掲載している20年(令和2年)米穀年度の加工業界別の原料米(うるち米)の使用状況だが、これを見ても業界によって使用する原料米が違うことがわかる。ただ、トータルでは72万tも使用しており、コメの需要者として大きな存在だ。

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