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【第191回】災難は忘れた頃にやってくる

ド、ドッカーンで1200万円の損害!!!! 雷は恐ろしいですね。市町村ごとに通り道と呼ばれる危険な地域があるようだ。

地元ながぬまにも大きく3本の雷の通り道がある。その一つは農場の北1.5kmくらい離れて磁方位で東西に20km以上に渡り危険な地域だった。人的な被害を聞いたことはなかったが、テレビが爆発した、電子レンジ、給湯器、なかには電気製品すべてやられた、などの被害に遭うようだ。距離が少し離れていたし、私の農場には実害がなかったので傍観していた、というのが本音だ。

やはり災難は忘れたころにやってくる。10年ほど前の麦の収穫が始まる少し前ころだから、7月25日前後だったと思う。前夜パソコン作業をして電源を切り忘れたようだ。昼のランチ時間に自宅へ戻ったら、スクリーンがボンヤリかすんでいた。ん?っと思いつつ、とりあえずPCの再起動をしてみることにしたが、何の反応もない。ド、どした?となる。もう一度再起動を試みるが、PCはウンともスンとも言わない。

まさか……飛行機仲間でもあるパソコン屋さんに診てもらったら、マザーボード周辺に過電流が流れているとのこと。どうも雷が原因らしい。ハードディスクも読み取りができない状態だったので、修理はあきらめた。バックアップもやられていたが、なぜかその一カ月前に別のバックアップにデータ保存してあったので、最悪の事態は回避できた。そのときの雷被害はPCだけだったし、保険に入っていたので金銭的にも助かった記憶がある。その後10年間は雷様の縁がなく平穏な日々を過ごせた。

しかし昨年、不思議なことがあった。その前の年に倉庫を借金して建てた。広ーい倉庫に、高さ5.5m、幅11mの電動シャッターを3台取り付けた。昨今の安全基準で、シャッターを上げるときは作動しないが、下がるときに人や物でセンサーが作動して止まるようになっている。必要性は感じなかったが、安全・安心が優先される時代になった。

だが、その年のある日、シャッターが3台とも動かなくなった。建ててもらった地元出身の大手シャッター屋さんに診てもらうと、「ミヤイさんセンサー焼けていますよ」となった。

ええっっ!となる。またも過電流らしい。センサー6個が異常をきたしていた。原因は? 面倒なので、センサーなしでシャッターの上げ下げできるか聞いてみた。技術的には可能だが、やはり昨今の安全基準だったり、大手シャッター屋なのでコンプライアンスという横文字が飛び出してきた。しばらくの間、緊急用に手動でシャッターを3個とも上げた状態で新品のセンサーを交換することになった。一個2万円で、計6個必要だから12万円の出費だ。

シャッターの修理屋さんがこんなことを言った。「ダメもとで北電(北海道電力)に聞いてみたら?」。そうすることにした。すると意外な返答があった。「農場のトランスを確認してみます」と。翌日には高圧電気工事屋さんが来て「ヒューズ破損していますね」となり、結局センサー代金を補償してくれることになった。へーである。なんでも雷が原因なのか、トランスが原因なのか判断できないので今回は補償します、というわけだ。このような原因不明のトランス異常は管内(4町)で週に1カ所くらいあるそうだ。倉庫に保険は掛けてあったが使わずに済んだ。

爆弾級の衝撃音の雷 被害総額は1200万円

そして昨年の4月15日午後2時に最悪の事態を迎えることになった。その前日にアメリカから来た40フィート・コンテナ貨物の仕分けを済ませ、関係者は各々がオーダーしたパーツの引き取りに来ていた。小雨が降るなか、午前中の引き取り後、ランチを挟んで午後からも数名が農場にやってきた。
隣町のOさんと事務所で話をしていたところ、ピカッと部屋の中が明るくなった瞬間、「ド、ドッカーン」とまさしく爆弾が落ちたのではないかと勘違いするくらいの衝撃音があった。Oさんは「ミヤイさんのすぐ後ろで、ものすごくピカっていましたよ」と言う。

多分トランスに雷が落ちたのだろうと考えた。その距離10mだ。あ~くわばらくわばら。数秒経って異変に気がついた。石油ヒーターが止まっているのだ。4月のこの頃の北海道は日中でも10度を超えることはない。事務所にはエアコンもついているので、そちらを使用することにした。LED照明は無事だ。次はテレビのスイッチを入れる……ダメだ。洗濯機、冷蔵庫、給油機は大丈夫。

そういえば、前日にトイレを新しいものに換えた。以前の物はアメリカ高級ブランド・コーラー製だったが、便座の一部が欠け、従業員から、日本製のフタが自動で開いたり閉じたりする最新型を強要されていたのだ。まっ、保険で新品にするかと高をくくっていたが――な、なんと事務所は保険に入っていなかったことが後でわかった。

次は倉庫関係の被害を調べてみた。全部やられました。倉庫3個の電動シャッター6台分のモーター、乾燥機のコントロールパネル3台。自宅2軒のエアコン2台、給湯器、テレビ、パソコン……総額1200万円の被害なり。

私の農場だけの被害かと思ったが200m離れた隣の農場の電動シャッターもやはりやられていた。翌日は100m離れた地区の会館の石油ヒーターのスイッチを入れに早朝に向かったが、2台ともやられていた。
ちなみに、24年前に高さ25mの穀物搬送用の昇降機のてっぺんに避雷針を立てた。電気屋さん曰く「避雷針が雷を呼ぶ場合もある」と恐ろしいことを言っていた。

トランスが壊れては電気の供給ができない。北電に電話したら、農場の地域一帯で雷の被害があるので2日後に行きます、と言っていた。ありがたいことに2時間後に来てもらい、トランスを確認してもらったら、「こりゃダメだ」で、週明けに交換してもらった。

その時に工事の方と話をした。「銅線ドロボーっているんですか?」と聞くと、工事の方は「この辺の6600V線はアルミニウム製ですからね」と返ってきた。なんでも20年くらい前から銅からアルミニウムに変わってきているそうだ。保険請求に北電のトランス交換の書類を添付した。一部、多少時間はかかったが、地元JA共済にはお世話になりました。ありがとうございます。

雷の通り道はやはり微妙に数キロ動いているようだ。原因は何なのか? NHKワールドニュースを見ていると、イングリッシュでは「気候変動」と言っているのに、なぜか日本語訳では「温暖化」という。金髪・ブルーアイがたくさんいるロサンジェルスや8月のヨーロッパは冷夏だと聞く。

どうですか他人の不幸は蜜の味ですか? そんな小作人根性のみなさんにも今年も幸あれ。よーし、ヒールミヤイ今年も絶好調だ!

『農業経営者』2024年4月号


【著者】宮井 能雅(みやい よしまさ)
西南農場㈲代表取締役
1958年3月、北海道長沼町生まれ。現在、同地で水田110haに麦50ha、大豆60haを作付けする。大学を1カ月で中退後、農業を継ぐ。子供時代から米国の農業に憧れ、後年、オーストラリアや米国での農業体験を通して、その思いをさらに強めていく。機械施設のほとんどは、米国のジョンディア代理店から直接購入。また、遺伝子組み換え大豆の栽培を自ら明かしたことで、反対派の批判の対象になっている。

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