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【第95回】いま夢中になれることをとことん突き詰める

コスパやタイパを考えたら本気では遊べない 「将来のため」より「いま楽しい」 好きなことを楽しみながら いつの間にか気がついたら料理人になっていた息子たち

暖冬の予報でしたが
やはりしっかり寒くなり
大慌てで冬支度していますが
限界集落のレストランは
さらに熱を帯びています。

お客さんが増え
知名度が上がるにつれ
いろいろなメディアから取材依頼も増えてきました。

どうして刃物を研ぐようになったのか。
どうして料理をするようになったのか。
どうしてレストランをするようになったのか。

いろいろ聞かれていますが
研ぎも料理も
ほとんど全てが遊びの延長で
ただ面白いから夢中でやってきたというだけなので
いまさら「どうして?」と
その理由を問われても
自分たちでもいまいちよくわからないのではないかと思います。

ただ「遊び」というものは
他の動物の成長過程を見ていても
子供の頃の学びの原点になっていることが多く
生き物にとっては
とても大切なものなのでしょう。

コスパ、タイパ
スマートフォンの発達もあってか
大人だけでなく
子供同士の会話のなかでも
よく耳にする言葉ですが
本気の遊びは採算度外視。

それが何か意味を持つとか
何かの役に立つということを意識しすぎると本気では遊ぶことは
難しいでしょう。

取材の後「どうやって教育されたのですか」と彼らだけでなく僕にも質問が来るのですが
僕もやはり
子育て自体を「遊び」として
夢中でやってきただけなので
コスパ、タイパは二の次三の次。

でも結局はその順番で考える方が
コスパもタイパも良かったように思います。

将来すばらしい料理人になるために
子供の頃から頑張って包丁を研いだというのではなく
刃物が好きで研ぐこと自体を遊びながら楽しんでいるうちに
どんどん夢中になり
包丁もものすごく切れるようになって
気がついたら料理人と呼ばれていたという流れの方が自然です。

つまり「将来のために」いま何かをするのではなく
「いま楽しい」
「いま夢中になれる」ことを
とことん突き詰めることが
結局は良い将来を形作っていくことを
彼らが証明してくれました。

この先時代が大きく変わっても
自分たちが受けた教育をもとに
新しい世の中に合わせた
自分たちなりの教育方法を見つけることを遊びとして
次の世代に繋いでいってくれたらと思います。

『農業経営者』2024年2月号


【著者】山本 晋也(やまもと しんや)
1968年、京都生まれ。美術大学を卒業して渡米後、京都で現代美術作家として活動しながらオーガニックレストランを経営。食材調達のため畑も始める。結婚して3人の子どもを授かったところ、農業生産法人みわ・ダッシュ村の清水三雄と出会い、福知山市の限界集落に移住。廃屋を修繕しながら家族で自給自足を目指す。現在、みわ・ダッシュ村副村長。

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