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【第237回】“逆張り”ポートフォリオで巨額損失を出した農林中金お粗末事情
農林中央金庫(農林中金)の2024年3月期決算は、報道の通り、有価証券の評価損が2.2兆円で、うち債券の評価損が1.8兆円という惨憺たる結果だった。
25年3月期決算では、収益が悪化した外国債券の売却により純損益が5000億円超の赤字に転落する見込み。リーマン・ショック時に、証券化商品の運用失敗による5721億円の純損失を出した09年3月以来となる。
奥和登理事長は、決算発表(5月22日)の席上、巨額の評価損を出すに至った原因について、
「金利が非常に上がっていく局面、あるいは上がったままの局面は、非常に私どもにとってはアゲンスト(向かい風)だった」
と弁明、自身の経営責任については
「会員の期待をはるかに下回ったことに非常に責任を感じている。報酬は減額する。職務を遂行し難局を乗り切る」
と述べていた。
筆者が会見の場にいたら、奥理事長にこう聞いてみたいと思う。
「それが主たる原因なら、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクは、なぜ過去最高益を出すことができたのか。金融情勢の動向を見誤って、有価証券のポートフォリオの組み方に失敗して巨額の評価損を出すに至ったのではないか」
有価証券には債券と株式の2種類あり、金融機関での運用の主流は債券だ。
理由は、
(1)利子があらかじめ決められている
(2)満期日に元本が戻ってくることが約束されている
(3)株式より値動きが安定している
などメリットがあるからだ。安定性がある反面、株式ほどの高収益が期待できないというデメリットもある。
その債券には、国内と外国の2種類ある。代表的なのは、前者が日本国債、後者が米国債だ。償還期間に応じて4種類あって、短期(1年未満)、中期(1年超5年未満)、長期(5年超10年未満)、超長期(10年以上)に仕分けられる。一般に期間が長くなるほど利回りが高くなる。将来の金利変動リスクを想定したものだ。逆に期間の短いものは、そのリスクがない分、利回りは低くなる。代わりに期間が短い分、投資環境の変化に即応できるメリットがある。
国内債券と外国債券は、当該国の経済情勢・金利・通貨動向などを判断材料に運用する。農林中金の巨額損失は、おもに米国債の運用によって生じたもので、農林中金の説明では、ポートフォリオの組み替えという表現を使っているが、実際は評価損を出した債券の“損切り”という見方が分かりやすい。
過去最高益を出したメガバンクとの違い
まず農林中金の決算資料から整理した表1、2をご覧いただきたい。
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