【第336回】累計4千台を超えてレベラー新製品登場
スガノ農機は5月28日、茨城の本社事務所で直装タイプの新型レーザーレベラーを記者発表した。これは、昨年開かれた国際農業機械展in帯広で参考出品されたものの商品化である。
レベラー本体にPTO駆動の油圧パッケージを備え、さらにすべてのトラクターに装着を可能とする専用コントローラーを持つもので、狭小圃場向けの作業幅2m(適応馬力45~60ps)から5mまでの4タイプの新シリーズである。
今後さらに離農が進む中で大規模生産者や営農集団などは均平作業面積が増え、また合筆作業などの機会も増えていくことから複数台のレベラーを所有するケースも多くなるだろう。そんな場合に高価にはなるが、トラクターを選ばずに作業が可能になることはありがたい改良だと言える。
3mタイプではレベラーの両端を手で折り曲げるだけで2.5mの規定内の幅になり、4m、5mタイプは油圧による折りたたみ式で道路走行も問題ない。
ところで、記者会見で語られた約30年前から販売を続けてすでに累計4千台を超えたという話も、開発当初、秋田県の八郎潟から始まったレベラーの普及を知る者としては、そこまで来たかという感慨を持った。
かつて「こんな高い機械を誰が買うのだ」とまで言われたレーザーレベラーが累計4千台を超える普及を実現し、2.5cmという圃場均平あるいは傾斜均平を可能にし、水田稲作にとどまらず、畑作分野でも新時代を切り開いたスガノ農機の功績は大きい。
水田均平を実現することで除草剤利用の低減や雑草防除、さらには浅水が可能になることでのジャンボタニシの被害軽減にも役立っている。また、畑地でも傾斜均平による表面排水は排水の改善だけでなく、土壌の流亡を防ぐ意味でも価値がある。
しかし、今回の新製品で作業幅2mというレーザーレベラーを登場させたことには少し首をかしげてしまう。同社によるとそういうニーズがあり、それに応えての製品化だという。
水平均平専用のタイプでも税込で約500万円。しかも、作業幅2mということになると均平に要する作業時間もかなりなものになるのではないか。果たしてその導入の経営効果とは如何なるものなのであろう。
もっとも、千枚田と言われるような観光資源として価値のある場所に地域行政の支援も含めた導入で農業エンターテイメントビジネスを発展させようという考え方はあるのかもしれない。
とはいえ、本誌は“最高より最適を選べ”という言葉を使ってきた。もとより能率は低そうな2m幅のレーザーレベラーを使うより、水の力を利用した水田均平法である代かきの前後作業に使うような簡易な補助農具のような製品を作るということもあり得るのではないか。
同社には農道の凸凹や轍を整地するロードメーカーという極めて簡易な人気の商品もある。手練れの高齢農家の知恵を伝える助言を添えてそんな機械も考えるべきではないか。
昔、府県へのプラウ導入が稀であったころ、農家にプラウの指導をして回る同社の営業マンたちを“現代の馬耕講師”だと書いたことのある僕は、この2mレベラーの販売動向も注目したい。
『農業経営者』2024年7月号
【著者】昆吉則(コンキチノリ)
『農業経営者』編集長/農業技術通信社 代表取締役社長
1949年、神奈川県生まれ。1973年、東洋大学社会学部卒業後、株式会社新農林社に入社。月刊誌『機械化農業』他の農業出版編集に従事。
1984年、新農林社退社後、農業技術通信社を創業し、1987年、株式会社農業技術通信社設立。1993年、日本初の農業ビジネス誌『季刊農業経営者』創刊(95 年隔月刊化、98 年月刊化)する。
現在まで、山形県農業担い手支援センター派遣専門家(2004年〜現在)、内閣府規制改革・民間開放推進会議農業WG 専門委員(2006年)、内閣府規制改革会議農林水産業タスクフォース農業専門委員(2008年)、農業ビジネスプランコンテスト「A-1 グランプリ」発起人(2009年)、内閣府行政刷新会議規制・ 制度改革分科会農業WG専門委員(2010年)を務める。