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【第243回】放出ならぬ「貸与」という屁理屈で失政隠しに走り出した企画課

11月11日に開催された財務省財政制度等審議会のホームページに「農林水産(参考資料)」としてぶら下がっていた政府備蓄米の放出に関係した資料。「政府備蓄米の運営について」(以下「運営」)と「政府備蓄米放出の基本的なプロセス」(以下「基本的プロセス」)、いずれも農産政策部企画課が作成して財務省に提出したものだ。


備蓄米資料が、財政審ホームページにアップされるやいなや、備蓄米放出に向けて動き出すのかと、マーケットでの期待感が一気に高まった。集荷率が激減した北陸全農某県本部の担当者が、その期待感をこう代弁してくれた。

「備蓄米が放出されるみたい。それも1月に開く食糧部会で正式に決まるようだ」

当初、企画課の“口先介入”ではないかと疑う者もいた。企画課に動機はある。天井知らずの米相場を備蓄米放出で冷やしたいという思惑だ。確かに動機はあると思うが、その目的で口先介入する芸当は、いまの彼らにはない。

マーケットが、備蓄米放出があると思い込んだのは、偶然が重なったからだ。まず財政審ホームページに関連資料がアップされたこと。政府備蓄米の保有数量の削減を求める方向を財政審が打ち出してきたので、農水省が関連資料を提供しただけだったのだ。

「1月に開く食糧部会」のことも偶然だった。確かに食糧部会の1月開催は事実。24年10月30日の食糧部会で決まっていた。備蓄米放出を話し合うためではなく、需給事情のフォローアップのために開かれるものを、備蓄米放出のためとマーケットが早合点したものだった。

このタイミングでの備蓄米放出は100%ないと確信する。ただ一抹の懸念はある。窮鼠猫を噛むの類いで、米卸などに備蓄米を一定期間貸与するという形を変えた放出だ。

作況指数101にもかかわらず、放出にせよ貸与にせよ、マーケットに影響を与えることになれば、農水省にとって、さらなる大失態をさらけ出すようなものだ。

政府備蓄米の放出や貸与があるかどうか、農水省公表資料を参考に読み解いてみたい。

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