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【第101回】休むことも忘れずに 絶品銀宝を釣って捌いて

気がつけば休みなしだったこの一年 ほっと一息ついたところで「海が見たい」と舞鶴へ もちろん釣り道具は忘れない 天麩羅タネとして最高級の銀宝を狙った

夜になると
蛍が飛び交う限界集落。

田植えが終わり
ほっと一息ついたところで
家族みんなが口を揃えて
「海が見たい!!」と言うので
久しぶりに行ってきました。

海のある舞鶴までは
車で40分くらいと比較的近く
行こうと思えば
いつでも行ける距離なのですが
農繁期真っ盛りに加えて
息子たちが運営するレストランが
ありがたいことに大繁盛中で
気がつけば1年以上休みを取るのを忘れていました。

みんなちょっと疲れているから
海を見るだけでいいと言いつつも
我が家はついつい「食」ということに繋げてしまうので
海に行くとなると
水着やサンダルを忘れることがあっても釣り道具は忘れません。

初夏の魚というと
この辺りでは
ハモ マアジ イサキ アオリイカなどが有名ですが
食べ物が好きという人たちの間で
非常に評価が高いのが
ギンポという魚。

漢字では「銀宝」と書きまして
天麩羅のタネとしては最高級。

「江戸っ子たるもの借金してでも銀宝を食え」
「銀宝を食べずして天麩羅を語るなかれ」

と言われるほど美味しい魚です。

ハモやアオリイカを
釣ろうとすると
ちょっと本格的な道具が必要で
出かける目的としては
「釣り」というのがメインになってしまいますが
銀宝は場所を選べば
竿がなくても糸を垂らせば子供でも釣れるような魚ですので
海を見に行ったついでに
ちょっと釣りをしたいという時にはピッタリです。

実は舞鶴にその銀宝がよく釣れるポイントがあり
息子たちが子供の頃ちょくちょく釣りに行っていました。

舞鶴での銀宝釣りにはみんな慣れているのと
出かけたその日が満月だったことが幸いして
面白いように釣れました。

昔は釣ることがメインだった息子たち。

今では釣った魚をどう仕立てるかということにも
強いこだわりがあり
今回は簡単な釣り道具に加えて
釣った魚を生きたまま持ち帰る装備を揃えていました。

持ち帰った魚は
ストレスを抜くためエアレーションを施した海水で
半日ほど生かしたあと神経締め。

その後氷海水で急冷したのち
背開きして
見事な天麩羅のタネと
なりました。

包丁の切れ味 揚げ鍋選び 揚げ湯の温度
天麩羅の衣も素晴らしく
改めて息子たちの成長ぶりに感心しつつ旬の魚をみんなで
美味しく楽しくいただきました。

ただ1匹だけ
持ち帰る時に死んでしまった銀宝がいたのですが
生きていたものに比べ旨味が少ない上に臭みも出ており
他の銀宝に比べて美味しくありませんでした。

食味が落ちるのは
ストレスを過剰に受けると生き物の筋肉に乳酸が溜まるのが原因というのは科学的にも証明されているので
おそらくそうだったのでしょう。

人間は食材にはならないにしても
やはり生き物ですから
あまり仕事に夢中になって休むことを忘れると
知らない間に
ストレスによって乳酸が溜まり
気がついたら体を壊してしまった
なんてことになりかねませんので
残りの半年は「休む」ということもしっかり意識して
さらに楽しく仕事をしていきたいですね。

『農業経営者』2024年8月号


【著者】山本 晋也(やまもと しんや)
1968年、京都生まれ。美術大学を卒業して渡米後、京都で現代美術作家として活動しながらオーガニックレストランを経営。食材調達のため畑も始める。結婚して3人の子どもを授かったところ、農業生産法人みわ・ダッシュ村の清水三雄と出会い、福知山市の限界集落に移住。廃屋を修繕しながら家族で自給自足を目指す。現在、みわ・ダッシュ村副村長。

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