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【第97回】サンタからの贈り物は一度も完成品がなかった
子供たちに完成品ばかり与えると 自分で作るという楽しみだけでなく 失敗というチャンスも奪ってしまうのではないか 成功と失敗の繰り返しこそがプレゼントになる
節分終わって
バレンタインデー
暦の上では春ですが
まだまだ暗くて雨の多い北近畿。
そして山間の寂れた限界集落ともなると
さらに光は少なくて
暗い気持ちになりがちです。
しかし蕗の薹(ふきのとう)が顔を出し
沢のクレソンや
田んぼの芹が
伸び始めたのを見つけると
ぱっと実感が湧いて
やっぱり
そこまで来てるんだ!と
とても明るい気持ちになります。
加えてありがたいことに
レストランには連日お客さんが
押し寄せているような状態が続いていますので
例年のように暗い気持ちになっている暇はありません。
さてその押し寄せているお客さんが
息子たちの仕事ぶりを見て
よくいただく質問に
「一体どういう教育をされたのですか?」
というのがあります。
僕はその時
「彼らのサンタクロースは一度も完成品をくれなかったんですよ」
と答えるようにしています。
どういうことかと言いますと
サンタクロースは普通
おもちゃだとかゲームだとか
パッケージを開けたら
すぐ遊べるようなものをくれると思うのですが
うちの場合
ノコギリだとか金槌だとか
子供たちが欲しがるであろう
そのおもちゃを作る道具が置いてありました
完成品は完成品で
子供たちも喜ぶとは思いますが
僕は
完成品を渡すということは
作るというチャンスや楽しみを
子たちから奪ってしまうような気がしてなりません。
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![](https://assets.st-note.com/img/1738651061-OiGdUenx1LAClcDTYy3rajgJ.png)
また道具があっても
すんなり完成まで辿り着くかというとそうではなくて
失敗はつきもの。
時には自分がノコギリで怪我をしたりもするでしょう。
でもその失敗や怪我をするということもサンタクロースの贈り物だと思っています。
道着があれば
失敗をした原因を考えて再チャレンジすればいいし
怪我をしたら
応急処置を学んだ上で
再発防止策を考える。
完成品というイメージも
与えられたものではなくて
一から自由に考えて
自分なりの完成品を作ることだってできます。
当時は子供たちが可哀想だと言われたりしましたが
完成品を与えて
子供たちから失敗するチャンスを奪う方が可哀想だと
僕は思っていたので
全く気になりませんでした。
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彼らが運営するレストランも
成功と失敗を繰り返しながら
日々一進一退。
限界集落から世界へ!
完成のイメージは
大きく膨らむばかりです。
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『農業経営者』2024年4月号
【著者】山本 晋也(やまもと しんや)
1968年、京都生まれ。美術大学を卒業して渡米後、京都で現代美術作家として活動しながらオーガニックレストランを経営。食材調達のため畑も始める。結婚して3人の子どもを授かったところ、農業生産法人みわ・ダッシュ村の清水三雄と出会い、福知山市の限界集落に移住。廃屋を修繕しながら家族で自給自足を目指す。現在、みわ・ダッシュ村副村長。