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社会科学の考え方のアブダクションと陰謀論

アブダクション(abduction)は、観察された事実に対してそれを最もよく説明する仮説を立てる推論の方法ですが、この手法は科学的な探究だけでなく、陰謀論的な思考にも利用されることがあります。陰謀論的にアブダクションが用いられると、観察された事実を既存の常識や公式の説明とは異なる形で解釈し、それに基づいて特定の隠された意図や計画が存在するという仮説が立てられます。


アブダクションの概要(陰謀論的な利用を含む)

  • 観察: 何らかの事実や現象を観察する。

  • 仮説形成: その観察を最も良く説明できる仮説を考える。この仮説が公式の説明に反する場合、陰謀論的な仮説になることがある。

  • 検証: 仮説が他の事実と一致するかを確認するが、陰謀論的な仮説では選択的な事実や解釈が用いられることがある。

陰謀論的なアブダクションの具体例

ここでは、アブダクションを用いて「アポロ11号が実際には月に行っていない」という仮説を立てる例を考えてみます。

  • 観察1: アポロ11号の月着陸の映像や写真には、影の向きが不自然に見えることがある。

  • 観察2: 月面での動きや旗のはためき方が、無重力環境下で期待されるものとは異なるように見える。

これらの観察からアブダクションを行い、次のような仮説を立てることができます。

  • 仮説: これらの不自然な現象は、実際には月面で行われたものではなく、地球上で撮影された偽の映像や写真である可能性が高い。この仮説が正しければ、影の不自然さや旗の動きが説明できる。

さらに、この仮説を補強するために他の事実や証拠を探します。

  • 追加の観察: ある証言によれば、当時の技術では、月への人間の飛行は不可能だったかもしれないという意見がある。陰謀論的なアブダクションでは、次のような特徴が見られることが多いです:

  • 選択的事実の強調: 仮説を支持する証拠として、選択的に事実や証拠が強調される。一方で、仮説に反する証拠は無視されたり、別の陰謀に関連付けられたりする。

  • 既存の権威に対する不信: 公式な説明や科学的な証拠に対する不信感が強調され、代わりに陰謀論的な仮説が信じられる。

  • 複雑なストーリーの構築: 単純な説明よりも、隠された意図や複雑な計画があるとする仮説が好まれる。

このように、アブダクションは合理的な仮説形成のツールとして有用である一方で、陰謀論的な思考の中で誤用されることもあります。陰謀論に基づく仮説は、科学的な証拠に基づく検証を経ずに信じられることが多く、その結果、誤った結論に至る危険性があります。そのため、アブダクションを用いる際には、仮説が十分に検証可能であり、他の仮説とも比較して最も合理的であるかどうかを慎重に判断することが重要です。

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