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映画「グランメゾンパリ」を見てきたけど...
新年一発目映画はグランメゾンパリです!
この予告編の冒頭で「フレンチの本場パリで前人未到の不可能に挑戦した日本人がいた…」というナレーションがあるんですけど、まさにそういう感じで映画が進んでいくんですよね。パリで奮闘してミシュランの三つ星を取った日本人がいて、それは他でもない木村拓哉なのです!という感じです。そのサポーターとして鈴木京香、及川光博、沢村一樹たちがいて、みんなで頑張るぞ!という映画なのです。ストーリーとしては本当にこれだけなので正直これの元となるドラマ「グランメゾン東京」やスペシャルドラマは観てなくても映画を見れてしまいます。よくできていますよね。これはまさにテレビの力を総結集させたような映画です。テレビのヒーローたちが日本代表として世界で戦う!というストーリーは出演している演者が好きな人にとっては絶対見たくなるはずです。テレビ映画は友達が出演している文化祭の映画を見たくなるのと同じ理屈を使って集客する場合が多いので、セオリーとしては完璧ですよね。
それにしてもクライマックス、完璧なフレンチを出したディナーでフランス料理界の重鎮が「君たちの料理の価値は三つ星以上だ。ゴチソウサマデシタ」と言ったり、ミシュラン三つ星の発表会でキムタクが壇上に呼ばれて賞賛されるシーンで隣のおじさんが「おぉ…!!すごい!!」と声を出して本意気のリアクションを見せていたのが印象的でした。こんな見方が出来れば幸せ者なんですけど僕はちょっと興醒めしてしまいました。だって現実では別にキムタクは三つ星を獲得したわけじゃないんですよ。いやいや、もちろんこれはフィクションなのだと重々承知してはいますが、ちょっと虚しくもなりますよね。例えばグランツーリスモというカーレースゲームのプレイヤーが本物のF1ドライバーになって優勝しちゃうという実話をもとにした映画がありましたけど、もしそれが「まぁ現実には本当はそんな人いないんですけどね」ということになってしまえば流石に「えっそうなの??」ってなると思うんです。
…ということで実際どうなのか調べてみると、グランメゾンパリの料理監修を手がけた小林圭シェフは本当にアジア人初の三つ星をパリで獲得した人物のようです。なんだ、ちゃんとモデルがいるじゃないですか!!であるならば、むしろこれを全面に出して、この映画は実話をもとにした物語である…という情報をちゃんと最初に出してから映画を見せた方が没入できるはずですよね。ところがこれはあくまでもキムタクをはじめとするテレビヒーローたちの熱い物語というところを一番見せたい構造になっているから敢えてこの情報は前面に出されていません。あくまでグランメゾン東京のキャラクターたちがパリで奮闘!にしなければならない。しかも主人公がキムタクというキャラクター強すぎの人物ということでさらに現実の小林圭シェフの伝説から乖離してしまいます。
そう考えるとこれは小林圭シェフという"原作"をもとにオリジナルストーリーを書き上げて映画をつくるというテレビ映画の手法に他ならないことに気が付きます。テレビ映画はテレビ映画で良いんですけど、本物の伝説がある分ちょっと虚しくなっちゃいましたね。最後のシーンもリアルなテレビ中継っぽい感じで表彰式を見せてしまうのでより空虚に見えてしまいます。本物っぽくしようとすればするほど、現実を思い出してしまうものなんですね。
とはいえ、映像のクオリティはちょっと高い雰囲気がありました。ちゃんとパリに行って撮ってきたんだぞ感がありましたね。最近流行りの真上からテーブルを写すショットや被写界深度が浅い料理のクローズアップタイムラプスとかそういう映画っぽいですし、シェフの几帳面な性格を表していて良かったです。キムタクが好きな人とっては結構アツい映画になっていると思うのでファンの方は絶対に見た方が良いと思います。料理映画としてはもう少しフェティッシュさが欲しかったな〜と思いました!