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ジャ・モラントの出場停止処分とインタビューについて

NBAがストリップクラブで銃のようなものを持ちながらライブストリームしたジャ・モラントの調査を行い、「3月4日にデンバーエリアのナイトクラブを訪れている間に、酔っている状態で銃を持っている映像をライブストリームした」と発表し、モラントには「リーグに対して有害な行為」をしたとして、8試合の出場停止処分の罰則を与えました。

ちょっと待ってください。コロラド州では酔った状態で銃を持つ事は犯罪のため、地元警察がこの件で調査しましたが、警察は「どのような犯罪ででも起訴する証拠がなかった」と発表していました。どうやってNBAは警察が掴めなかった証拠を見つける事ができたのでしょうか。前回翻訳したニューヨーク・ポスト紙の記事でも、ストリップクラブのオーナーはモラントはその夜酒を飲んでいなかったと話しています。それでもNBAは「モラントは酔っていて」&「銃らしきものではなく銃そのもの」を持っていたと結論づけました。また、それが銃であるとわかったからには、NBAはそれが誰の所有物でどこから来たのかもわかっていると考えるのが自然でしょう。この辺りはNBAからの説明がなく、どうなっているかさっぱりわかりませんが、透明性を大事にしているNBAの立ち回りを見ると、何か他に隠しているものがあるのではないかと思わされます。

とにかく、ここでのポイントは「8試合の出場停止処分(無休)」でしょう。銃にまつわる罪を裁判で認めたスティーヴン・ジャクソン(7試合の出場停止処分)やレイモンド・フェルトン(4試合の出場停止処分)への罰則に比べて、法も犯していないモラントに対して8試合は多すぎだと思うかもしれません。しかし、これにはすでにモラントがチームから離れた6試合も含めるので、実質は2試合のみの出場停止処分になります。

ただ、サラリーだけは8試合分引かれる事になり、その総額はESPNのボビー・マークスは$668,659、B/Rのエリック・ピンカスは$668,639と計算しています。モラントはまだルーキースケールの契約中でサラリーは$12.1Mなので、そこまで総額は大きくなりませんでした。

このNBAの処分が下される前にも、モラントの銃に関連したツィッターでの発言が再び取り沙汰されていました。モラントは2022年の5/14に、ツィッターでヘックラー(ヘイター)に「”It's free to see how hollows feel," = 銃弾がどう感じるのか理解するのは自由だ」とリプライして削除していたとの事。

(hollowは銃弾の種類)

他にも誰かがモラントの10年前のインスタアカウントを見つけてきて、「今最高にハイだ」とか「コカインをつくれる」とか投稿しているのが話題になりましたが、これは信憑性がどうか判断できなかったので具体的に取り上げないことにします。

モラントの反省行脚

チームから離れている間、モラントはグリズリーズの警備責任者に付き添われてフロリダのカウンセリング施設に入ったそうです。そこでモラントはセラピストと話をし、レイキ(霊気)・トリートメントを受け、不安を取り除く呼吸方法を学び、ストレスや不安などを「体からリリースしてそれらに対処する」いろいろな方法を教わったと話しています。

その後、モラントはニューヨークへ行き、NBAやNBPAとミーティングをしたそうです。コミッショナーのアダム・シルヴァーはミーティングで、モラントに何を改善すべきかも伝えましたが、それよりもモラントへのサポートを見せたそうです。優しいコミッショナーですね。

そしてモラントは復帰への布石として、ESPNのジェイレン・ローズのインタビューを受けました。内容については、The Ringerのケヴィン・オコナーが「(内容が)何もない20分だった」と言っていたように、ほぼPR対策チームから指示された事を言っているだけなようなものだったので、ここではいくつかの気になる質問の答えのみ直訳で取り上げていきます。

● 取り巻きで誰と一緒にやっていくかというタフな決断はどうだったか?

モラント:「間違いなくむずかしいものだった。私は忠誠を大事にする。言ったように、私は自分のために自分自身でいて、自分を良いポジションに置く必要がある。私は誰が私への準備ができていて、誰が私を常に良いポジションにいれるように助けてくれるのか知る必要がある。それが私がしなければいけない決定で、良いと感じる必要のある決定で、自分がこの2週間で学んだ全ての事をポジティブにしてくれるような決定をしなければならない」

● 銃をライブストリームした時の心の状態は?

モラント:「ほぼ自由になろうとしていただけだった。してはいけない現実逃避としてそれを使ったのはわかっている。それが理由で過去に悪い判断をした。でもそれは人間としての私を説明する事はないし、私はメディアで見せられたのとは全く違う人間だ。それは今私の仕事で、それがより良い自分になるために時間をとった理由だ。それでみんなが本当にジャが本当はどんな人間で、何を大切にしているのか見ることができる」

● 誰の銃だ?

モラント:「それは私のものではない。あれは私ではない。私はどのようなタイプの暴力も許容しないが、自分の行動に全責任を負う。私は悪い間違いを犯した。最近の間違いで自分自身を上塗りしてしまった私のイメージが見える。でも未来には私はみんなにジャが本当はどんな人か、何を大事にしている人なのか、みんなが私に上塗りしたナレティブを変えて行く」

ペイサーズへのレーザー照射疑惑について

モラント:「過去の私が自分自身を置いてしまったほとんどの間違いは、その場にいることでさえも、最近見られているほとんどの出来事は嘘だ。すべては封印(裁判で?)されているのでそれらの状況について多くを話す事はできない。真実を話すことができるのが本当に待ちきれない。私が言える事はどれもが私のキャラクターではない。私は家族を大事にし、私はいつも家族をケアしている。それは私の家族の安全を見ていただけで、私の家族が安全だとわかった後、私はその場を去った」

● 警備員脅迫疑惑について

モラント:「それはほとんど同じ事だ。電話があって、母が無事か確認しに行った。それは私のライフラインだからだ。私を産んでくれた。私は彼女の安全を確認したかった。それがわかった後、私はその場を去った。それもまた真実を言える事が待ち切れない」

● 高校生脅迫疑惑について

モラント:「似たような状況だった。それは私の妹で、電話があって彼女の安全がどうなのか見に行った。彼女の安全を確認した後にその場を去ったという同じ状況だった。ジャが現れて、それだけで皆はそれがなんであれ、皆の好きな絵に塗る事がわかった。それが問題だという事がわかった。自分をその状況に置いてしまった」

● 少年への暴力について

モラント:「封印されたのでほとんど何も言う事ができない。SNSで見る事やそこで起きている事は嘘だ。それは私の立場からやっと言えて、実際に何があったのか真実を言うのが待ち切れない別の事だ。そうなればやっと議論が止まる」

● これから取り巻きとどう進んで行くかについて

モラント:「正直、私は私達自身で過去の間違いに身を置いてしまったと思う。今は私たちは正しい事にフォーカスし、よりスマートでより責任感を持ち、全てにお互いに責任感持つ事に集中する。過去に私たちは何が掛かっているかわかっていなかったと思う。今やっとすべてを理解する時間とひとりになる時間を持って、今それがわかった。私は何を失うか、グループとしての私たちが何を失うのかもわかった。それはもっと責任感を持って、よりスマートになって、悪い判断をしないようにする事が全てだ。悪い判断をせず、誰かが悪い判断をしそうなったら止める」

これらのインタビューでのモラントの答えから見えてくるのは、モラントは「間違いを犯したのは認めているが、それは本当の自分ではないと主張し続けている」事です。出てきている疑惑に関しては否定の立場をとり続けていますが、「まちがった対応をした」だけで、根本的な原因を直そうとしている訳でも、すごく反省して謝罪をしている訳ではありません。そのため、「これから自分が変わる」などの暗に自分が間違った事をしたと認めるような表現よりも、「これから本当の自分を見せていく」という事を終始一貫して主張しています。これはPRチームの大勝利でしょう。グリズリーズとNBAがモラントをチームから離したのは、むしろこれを考える時間を確保するためだったのだと思います。

(インタビューを受けるジャ・モラントとインタビューをするジェイレン・ローズ)

これでモラントの騒動は一旦幕引きになるでしょう。この後は試合に復帰した後のインタビューでいろいろ聞かれるので一時的に話題になるでしょうが、しばらくすれば過去の話になっていきます。しかし、ESPNのブライアン・ウィンドーストが言っているように、モラントが2アウト(ペイサーズへのレーザー照射調査と銃調査)な事には変わりありません。3度目の調査が起きないようにしておきたいところですが、それにはモラント本人の意思だけではなく、チームの協力体制や新たな規則の導入も必要です。

グリズリーズは今回の騒動が起きる前は、こういう事が起きないように警戒していて、ロードで試合が終わったら、宿泊はせずにすぐに街(特にギラついているマイアミのような街)を出るようにしていたそうですが、デンバーで問題が起きてしまいました。そのため、今後はチームもより厳しい行動規則や対応措置を取っていくとも言われています。

モラントに関して言えば、今後このような問題を起こさないだけではなく、本当に変わったという事を行動で示していかなくてはいけません。モラントが生まれ変われば、自分自身だけはなく、NBAや球団、ファン、スポンサー等関係者全員にとってプラスになるはずです。メンフィスに住んでいて、モラントと話をしている人と繋がりがあるThe Ringerのクリス・ヴァーノンは、モラントは今回多くの人たちから非難ではなくサポートを得ていて、それが励みになっているそうです。モラントもそれらの人たちを失望させないためにがんばって更生?して行くのではないかとの事です。信じてくれた人の期待を裏切ってしまう事ほど辛い事はありませんし、信じて応援してくれる人がいるからこそがんばっていけるのだと思います。これからのニュー・モラントに期待です。



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