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レブロンの引退検討発言とレイカーズのオフシーズンについて

レイカーズがウェスタン・カンファレンス・ファイナルズでナゲッツに4-0で敗退した後の記者会見で、レブロン・ジェームズが引退を匂わせる発言をしました。キングが引退について言及をしたのははじめての事だそうで、各メディアも大きく取り上げていました。そうなるとNBAレポーターとしても取り上げない訳にはいけません。

今回はレブロンの引退発言と、レイカーズが来シーズンにレブロンを満足させるチームづくりができるか見て行きたいと思います。

レブロンの記者会見

レブロンが今シーズン最後となる記者会見のラストの質問で、「これは成功した年だと言いたくない。なぜならこの時点の私のキャリアは優勝する以外の事のためにプレーはしないからだ。カンファレンス・ファイナルズ進出では刺激は受けない。私は何度もそれをやってきた。私にとってファイナルズに関われない事は楽しくない。でもどうだろう、どうだろう、これから先何があるのか様子をみる。わからない。わからない。正直、私はたくさんの事を考えなければいけない。私はたくさんの事を考えなければいけない。個人的にバスケットボールのゲームと今後そうするのか、たくさんの事を考えなければいけない」と言って会見場から出ていきました。

「たくさんの事を考えなければいけない」とはどういう意味なのか?それは引退を検討するという事なのか?ちょっとハッキリしない答えだったので、B/Rのクリス・ヘインズとESPNのデイヴ・マクメナミンがその後アリーナを出る前にレブロンを捕まえて、それは何を意味しているのか聞いたそうです。それぞれのレポーターへのレブロンの答えは以下のようになります。

マクメナミン:あなたが何かを考えなければいけないと言った時、私たちはそれについて何の話だと考えるべきか?
レブロン:もし私がプレーし続けたいかだ
マクメナミン:来年の事か?
レブロン:そうだ
マクメナミン:去るかもしれない?
レブロン:それについて考えなければいけない

ヘインズはレブロンが引退について話した事はこれまでないので、まずは複数の信頼できるソースに連絡をしてレブロンが何を考えているのか聞いたそうです。ヘインズは彼らから、「レブロンは引退を検討していて、彼は2023-24シーズンがはじまる時にチームと一緒にいるかわかっていない」と聞いたそうです。それをレブロンに聞いたら、レブロンはそれを認め、「単にシーズンがはじまる秋に戻ってくるのがわからない。私は多くを考えなければいけない」と答えたそうです。

ヘインズはその記者会見前にもロッカールームでレブロンと話したようで、その時の詳細をポッドキャストで次のように話しています。

ヘインズ:「その時は試合が終わってから45分後だった。ADはまだユニフォームを着ていてロッカールームの席に座って宙を見ていた。時々首を振りながら『信じられない、信じられない』と言っていた。レブロンがシャワーから出て来て、自分の席に座ってから隣にいるADに『大丈夫か?』と聞いた。ADは『ただ信じられないんだ』と答えた。レブロンは『私たちはできる事をやる』と返した。それから、私はレブロンがADに、『ナゲッツはふたりがチームメイトになってから対戦したチームでもベストチームだ』と言っていたの聞いたので、レブロンと話をしに行った。それでレブロンに『それは本当か?』と聞いたら、20秒近く考えて、『そうだ、レイカーになってから上から下までベストチームだ』と答えた。『彼らは層が厚く、ジョーカーのまわりに完全にフィットする選手を揃えている。そして最も重要なのは、彼ら全員がスマートな事だ。私たちもそこまで行かなければいけない。彼らは全員がスマートだ』と言っていた」

ヘインズは続けて、「私はレブロンを10年知っているが、その時の彼はチルしていた。私は『ブロン、私はあなたが負けた時にあなたのまわりにいて、あなたがどう負けを受け入れているのか見てきた。あなたはみんなに怒っていた』と言った。負けた後のレブロンの顔に明らかな怒りが見てとれる。でもそれは今回は見えなかった。彼はとてもチルモードだった。そしてレブロンは『リーグに長くいるとそのような負けもうまく対処できるようになる。でも言わせてもらうが、何年前と同じようにまだ頭にくる。これで私が勝ちたいという欲望に騙されるな』」と言って記者会見に行ったそうです。

そのため、ヘインズはレブロンの引退について「彼が引退するか?そうは思わない。しかし、キャリアのこのステージでそのような事を言うのはまちがいなく警戒すべき事だ…しかし彼はそれ(引退を検討)を認めた」と話しています。

レブロンの記者会見で質問もしたThe Athleticのヨバン・ブハは、レブロンの発言は意図的なものだと考えているようです。理由は、その発言をした記者会見で、レブロンは来年優勝候補になるためには何が必要か聞かれていて、「まだ来シーズンの事は考えていない」と答えたり、20シーズン目を振り返ってどう思うか聞かれ、「それはキャリアが終わった時に振り返るので、今は振り返らない」と答えていたからだそうです。

ヘインズが記者会見の前にレブロンがチルモードであまりエモーショナルでなかったと言っていた事を考えると、ブハの意見に一理あると思います。

ブハがレイカーズ関係者と話すと、それは「どちらかというとレバレッジプレーだと考えている人たちもいるし、負けた後の流れでそう言ったのかもしれない」との意見があったようです。

識者の間でもレブロンがなぜ突然にこのような引退をほのめかす発言をしたのかが議論されていましたが、ほとんどはフロントオフィスへのメッセージかもしれないし、感情的になったためかもしれないというような意見で、レブロンが本当に引退をすると言っている人は知っている限りいませんでした。

レブロンが感情的になったのは、攻守でがんばってもシリーズで1勝もできなかった事実に加え、レブロンの足のケガの負担も大きく、コンディショニングも相当無理をしていたためではないかという意見もあります。そもそもレギュラーシーズン中に足のケガには痛みがすごくあったそうで、ヘインズ曰く、レブロンはトレード後に新しくなったチームがうまくまとまって機能するように早めに復帰したそうです。なにしろ医者からは手術を勧められたほどのケガです。復帰したからと言って完全にケガが治っているとは限りません。(どうやって復帰したのかは、この時のことはこちらの記事でまとめているので、見逃した方はぜひご覧ください)

そして、The Athleticのシャムズがレブロンのシーズンが終わった後で「レブロン・ジェームズはシーズンの最後の数ヶ月は足の腱の損傷を押してプレーしていて、この夏手術が必要かもしれない」とレポートしていています。もし手術をすれば復帰までに2ヶ月はかかるとの事。そんな状態であるにも関わらず、プレーオフでは1日置きに40分以上プレーしてチームをリードして、最後の試合は48分フル出場しています。シーズン後半は私たちが想像する以上に精神的にも肉体的にも消耗していたのではないでしょうか。さすがにキングと言えども、この先自分がどうプレーしていけばいいのか疑問に思う気持ちや不安が生まれてくるのも理解できます。

その後、マクメナミンがレブロンに近いソースから聞いたところによると、「レブロンは21年目のシーズンに戻り、契約を全うする」とレポートしています。そうなると、レブロンはすべてを出し尽くしたシーズンを終えてちょっと感情的になり、「単にシーズンがはじまる秋に戻ってくるのがわからない。私は多くを考えなければいけない」と言ってしいたと考えるのが良さそうです。まだまだトップレベルでプレーもできていますし、ここまで来たらレブロンの夢と言われている長男と一緒にプレーするところまでがんばって欲しいですね。

ただ、そうは言っても、レイカーズがこの夏にやらねばならない事が変わった訳ではありません。レイカーズは来シーズンに向けて、レブロンのプレー時間を30分前後で抑えてもプレーオフ進出できて優勝を狙えるチームづくりをしていく必要があります。

では、レイカーズがレブロンをもっと楽にしてあげれるようなチームづくりはどれだけ可能なのでしょうか?

レイカーズの来シーズンのキャップスペースから見て行きましょう。

レイカーズのサラリーキャップ

GMのロブ・ペリンカの言っているように、若い選手の中心選手たち(プレーオフのWCFに出場していたオースティン・リーヴス、八村塁、ジャレッド・ヴァンダービルト)をキープした場合の数字は、9人で$129Mになります。

内訳は:
・レブロン $46.69M
・AD $40.6M
・ロニー・ウォーカー $7.7M(キャップホールド)
・八村塁 $18.7M(キャップホールド)
・ジャレッド・ヴァンダービルド$4.6M
・デニス・シュルーダー$1.9M
・オースティン・リーヴス$2.1M(キャップホールド)
・マックス・クリスティー$1.7M
・ルーキー$3.5M

これをベースに現実的なロスターを考えていきます。

Yahoo Sportsのジェイク・フィッシャーがレポートしたように八村側は4年$80Mを希望しているようなので、ここはレイカーズは八村さんと3+1の$72M契約をすると仮定します。もちろん八村さんはRFAなので、この数字から前後するオファーシートを受け取る可能性はありますが、とりあえず相場と思われる低めの数字にしています。アリーナス条項が適応されるリーヴスのサラリーは$12.2Mに設定します。その根拠は、RFAのリーヴスは他チームからレイカーズがオファーできる$52Mよりも高い金額をオファーされると予想されていて、レイカーズがそのオファーにマッチした場合、彼のサラリーはMLEと同じ$12.2Mになるためです(1年目$12.2M、2年目$13.2M、3年目$35.5M、4年目$37.1M)。ディアンジェロ・ラッセルはプレーオフでクロージングもできなかったので、FA市場でも今の$31Mのような高級をもらえるとは思えません。ここではこちらの希望金額の年間$20Mで再契約をするものとします。もちろんラッセルと同じようにレギュラーシーズンで使えそうなマリック・ビーズリーをキープする事も可能です。そうなるとキャップは以下のようになります。

現実的なロスター:
・レブロン:$46.69M
・AD:$40.6M
・ディアンジェロ・ラッセル:$20M(再契約)
・マリック・ビーズリー:$16.5M
・ロニー・ウォーカー:$7.7M(再契約)
・八村塁:$18M(再契約)
・ジャレッド・ヴァンダービルド:$4.6M
・オースティン・リーヴス:$12.2M(再契約)
・デニス・シュルーダー:$4.3M(ミニMLEの一部)
・マックス・クリスティー:$1.7M
・ルーキー(17位指名):$3.5M
・ミニマム:$1.9M
・ミニマム:$1.9M
・ミニマム:$1.9M

(最終的にはこれをベースに変更を加えながら考えるのがわかりやすくなると思います)

これで14人で$179.5Mになり、セカンド・エプロンギリギリです。これを超えるとミニMLEが使えなくなるので、シュルーダーをミニマム以外でキープできなくなります(実際はもっとバッファーは欲しいところ)。この場合のタックスの支払いは$54.3Mで、サラリー+タックスの合計は$233.8Mになります。今年の$203Mよりも多いですね。ここでの問題は、ナゲッツにスウィープされたほぼ同じロスターに対して、ここまで高いサラリー+タックスを払うのかどうかです。

レブロンが楽になるかどうかの観点から見ると、今年のプレーオフと同じようにレブロンが中心となってフル回転しないといけなくなり、大金を払う割にはあまり課題解決になっていません。もちろんリーヴスと八村さんがどれだけ成長するかにもよりますが…

このような状況だと、噂になっているカイリー・アーヴィン待望論があるのも理解できます。

カイリーは獲得できるのか

カイリーをゲットする方法はFA契約とサイン&トレードのふたつになります。

FA契約はMLEでの契約もありますが、上限が$12.2Mまでになり、カイリーの市場価値よりもかなり低くなるのでここでは除外します。

キャップスペースを使う場合、リーヴス以外の全員のFAとRFAの権利を取り下げなければ、カイリーにオファーできるレベルの金額を生み出す事ができません。そうした場合、レイカーズのサラリーは6人で$99.3Mになり、キャップスペースを34.6Mまで空ける事が可能です。しかし、カイリーのマックスが$46.9Mなので、この$34.6Mは少な過ぎかもしれない疑問も出てきます。ちなみに、もしカイリーがマブスとマックス契約すると5年272Mになり、4年でも$211.3Mになります。レイカーズがオファーできる4年で$156Mの契約とは$50M以上も違いがあります。

しかも残りのロスターはほぼミニマムになってしまいます。ビッグ3+リーヴス+ミニマム選手でどこまで行けるか?またADが30試合欠場したらどうなってしまうのか?かなりの不安が残ります。ウェストは来年も激戦で、ナゲッツ、グリズリーズ、キングスもいますし、サンズ、ウォリアーズ、クリッパーズも優勝を狙ってくるでしょう。ウルブスもペリカンズもサンダーもマブスもいます。ブレイザーズもロケッツもプレーオフを狙うという噂です。あまりロスターのバランスが悪いとプレーインですら逃しかねません。

ではサイン&トレードはどうでしょうか?それならカイリーもマックス契約もでき、レイカーズも八村さんやヴァンダービルドやビーズリーらの権利をキープしてオーバー・ザ・タックスでチームの競争力を削る事なく戦力を追加できるように見えます。しかし、サイン&トレードには規制があり、サラリーはエプロンの$169.8Mを超える事ができません。そうなると、レブロン、AD、カイリー、ヴァンド、クリスティー、ルーキー+8人のミニマムでサラリーは$159.2Mになり、リーヴスにあげられるサラリーは$10.6Mしか残されていません。

結局、サイン&トレードのシナリオではカイリーには$40Mあたりで契約してもらわないと、レイカーズはリーヴスをキープする事もできなくなります。また、リーヴスがフリーエージェンシーはじまっていきなり$20M以上/年(相手チームにとって)のオファーシートを得る可能性もあり、それにマッチするにはカイリーとの調整もタンパリングなしではむずかしそうです。

また、このサイン&トレードのいちばんの問題は、カイリーの金額調整よりも、トレード相手のマブスの了承を得る事のように見えます。マーク・スタインはマブスはサイン&トレードのピースであるディアンジェロ・ラッセルには興味がないと伝えていますし、Yahoo Sportsのジェイク・フィッシャーはマヴスはレイケーズを助けるつもりはないとレポートしています。こうなるとカイリー獲得はほぼ不可能と考えていいでしょう。

レイカーズにとってベストなシナリオは、ディアンジェロ・ラッセルをサイン&トレードで他チームに送ったリターンで戦力アップをする事です。もしジャ・モラントが長い出場停止処分になれば、グリズリーズとタイアス・ジョーンズや若い選手たちとのトレードも考えられますし、ロケッツのキャップスペースにラッセルをダンプして、タリ・イーソンやKJ・マーティンを得る事も考えられます。またはそれらの選手を3つ目のチームにまわして他のスリーがある選手を獲得してもいいでしょう。それと同時に、それから生まれたトレード・エクセプションでディロン・ブルックス(!!)のようなFAと契約する等が考えられます。他にはその価格帯のレンジでは5アウトが可能なグラント・ウィリアムズ、ジョーダン・クラークソン、キャリス・レヴァート、ゲーリー・トレント、ドンテ・ディヴィチェンゾあたりが狙い目かと思います。その場合、PGはミニMLEの$5Mでシュルーダーにがんばってもらうのがベストだと思います。

この複雑なトレード交渉の問題点は時間がかかる事です。もし交渉が思ったようにまとまらず、MLEが使えるか&どれだけ使えるかわかるのに時間がかかれば、椅子取りゲームをしているシュルーダーは他のイスに座ってしまうかもしれません。

そう言った意味では、交渉に時間がかかるサイン&トレードはセカンド・エプロンぎりぎりのチームには向いていなそうです。少なくともいくつかのバックアップ・プランを用意していないと、交渉でも不利になってしまいます。おそるべし、セカンド・エプロン。



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