NBAデイリーレポート(11/11, MON)
ウォリアーズのローテーション
ESPNのブライアン・ウィンドホーストによると、ウォリアーズのヘッドコーチのスティーヴ・カーはオリンピックのローテーションをチームに導入しているそうです。(以下、11/8時点の数字)
レイカーズのローテーション
ローテーションと言えば、5試合で1勝4敗中だったレイカーズもスターティング・ラインアップを変えて、PGのディアンジェロ・ラッセルをベンチに下げて、ウィングのキャム・レディッシュをスタートさせてきました。
この動きはヘッドコーチのJJ・レディックが131-114で負けたグリズリーズ戦でラッセルのプレーに激怒していた試合の後だけに、大きく取り上げられていました。
しかし、レディックはその可能性について数日間検討していて、ラッセルのオフェンス力を得点力がリーグ最下位だったセカンドチームにまわして、オースティン・リーヴスと八村塁への負担が大きかったペリメーターのディフェンス力を高めるためにレディッシュを入れたそうです。
レブロンもこの動きについて、「私たちのベンチが得点するための方法を得られずに苦しんでいたのは秘密でもなんでもない。それを変えるベストな方法は、スコアラーをベンチにまわすことだ」と話していました。
ベンチスタートとなったラッセルは、チームの状況を理解していてその役割を受け入れているようです。「私のアプローチは初日からプロフェッショナルでいることだ。プレーを通して、ベンチからの出場を通して、それが何であろうが、私はコミットしている。私にはエゴがない。ただ勝ちたいだけだ」と話していました。
The Athleticのヨヴァン・ブハによると、レディックが夏にいちばん多く話していた選手はのラッセルで、お互いがゴルフが好きなこともあり、関係性を築いていったそうです。。昨年は良く元ヘッドコーチのダーヴィン・ハムと衝突していたラッセルが、自分がベンチに移る決定をバイインしたのは、それまでレディックと役割と犠牲などを話して来たためだったとの事。
ラッセル:「この夏にコーチが変わって、新しいスタッフがやって来た時、私はすべての荷物を玄関に置いてきた。私はできることは何でもするとコミットした。あなたたち全員がそれを見ることになる」
レディック:「彼はいつも私と話している。彼は勝つための本当に強い意思を持っていて、コーチされたいという本当に強い意思を持っている。そして私たちのコミュニケーションレベルは6/20から今日までオープンであり、正直であり、透明性があり続けている。私はそれが続いていくと思っている」
ただ、役割にバイインしたと言えど、ラッセルの契約は来年はプレーヤー・オプションで、より良い役割やサラリーがある他チームに出ていかれてしまうかもしれません。彼を他のアセットに変えるなら今シーズン中になります。B/Rのジェイク・フィッシャーによれば、レイカーズは補強にブルック・ロペスやヨナス・バランチュナスなどのバックアップセンターを狙っているそうです。比較的トレードしやすいサラリー($17.3M)のラッセルをADの控えのセンターに変えるのか、得点力があるラッセルをベンチにキープするのか、それとも両方狙って他の選手をトレードに出すのか…
これからのレイカーズの話題はブロニーからトレードに移って行きそうです。
リム・プロテクション
(数字は11/8時点のものです)
アナリストのセス・パートナウによると、今シーズンのリムでのコンテステッド・ショットは平均64%だそうです。
しかし、ヴィクター・ウェンバンヤマ相手には36%しか決められていません。驚異的な数字です。昨年は53%だったので、これから平均値に向かって数字は均されていくと思いますが、このままいけばリーグのベスト・リムプロテクターとしてDPOY受賞は間違いありません。
これまでのリムで許したFG%のトップランキング(最低30アテンプト)は:
ヴィクター・ウェンバンヤマ(SAS):36%
アイゼィア・スチュワート(DET):40%
チェット・ホルムグレン(OKC):41%
ジャレット・アレン(CLE):43%
ブルック・ロペス(MLE):44%
ウォーカー・ケスラー(UTA):48%
ユスフ・ナーキッチ(PHX):50%
PJ・ワシントン(DAL):50%
エヴァン・モブリー(CLE):53%
ジャイレン・ダーレン(DET):53%
クリント・カペラ(ATL):53%
ジェイ・ハフ(MEM):53%
ルーディー・ゴベアー(MIN):53%
デリック・ライヴリー(DAL):53%
反対に、ワースト・リムプロテクターはニックスのカール・アンソニー=タウンズです。他センターよりも9ポイントも悪い数字になっています。
リムで許したFG%のワーストランキング(最低30アテンプト):
KAT(NYK):85%
ジョッシュ・ギディー(CHI):83%
ジョーダン・ホーキンス(NOP):78%
ニコラ・ヴチェヴィッチ(CHI):76%
パスカル・シアカム(IND):76%
ヨナス・ヴァランチュナス(WAS):74%
サンティ・アルダマ(MEM):74%
アンドレ・ドラモンド(PHI):21%
トバイアス・ハリス(DET):71%
MPJ(DEN):71%
ニコラ・ヨキッチ(DEN):71%
(ちなみにジュリアス・ランドルは昨シーズン65%。ジェイレン・ブランソンは昨シーズン77%)
新たに判明したNBAとAMAZONのメディア権の条項
これまでNBAメディア権を追ってきたNBAレポーターがこの話題を見逃す訳にはいけません。(詳しくはこちら→NBAメディア権、ほぼ完全ガイド)
PUCKのエリック・ガードナーによると、NBAとAmazonの契約には、新しい配信モデルの導入を可能にする「後継技術」条項が含まれているそうです。この条項によると、11年間のメディア権契約の期間中に「新しい配信モデルが出現する可能性」が認められていて、契約の3年目以降にAmazonはNBAの同意があれば、これらの技術革新を採用する選択肢を持っている事になっています。この契約条項は「不合理に拒否されたり、余分な費用を課せられたりすることはない」とされているそうですが、AmazonがPrimeをまだ名前のないベンチャーに統合し、それを『新しいモデル』と称したらどうなるだろうか?NBAはそれをどの程度制限できるのか?など、リーグが『合理的に』拒否する余地はどれだけあるのか?など曖昧な表現があるため、今後AIの進化によって新たな配信方法が出他時には、その都度お互いに相談しながら決めていくと思われます。
また、他にもAmazonは:
11年間の契約の一環として、試合用の新しいテーマ音楽を作成しなければいけない。
NBAのロゴもAmazonの配送用ボックスにプリントされる。
AmazonのCEOであるアンディ・ジャッシーはどの試合でも「一等席」を確保する権利を有する
Amazonは「米国内での最低契約者数を8000万に維持する」必要があり(Prime Videoの契約者数はその約倍に達している)、NBAはこれらの契約者数について監査権を保持する。
Amazonは、今後放送される木曜のNFL生放送中にNBAコンテンツを宣伝することを約束している。これはNBAがNFLレベルの野望を抱いていることを反映しているだけかもしれないとの事。
ここから先はThe Athleticによるセルティクス売却についての記事を紹介します。
セルティクス売却とNBAオーナーシップの現状について
ウィック・グロウスベックがこの夏、ボストン・セルティクスを売りに出したのは、ボストンが18回目のNBAチャンピオンシップを獲得してわずか数日後だった。栄光を掴んだばかりのグロウスベックにとって、球団を売却するという突然の決断は驚きかもしれないが、実際にはリーグ内の多くのオーナーたちにとっても似た流れにあると言えるだろう。今はNBAオーナーとしてこれ以上ないほど好調な時期なのかもしれない。収益が伸び、チームの評価額が急騰する中で、いくつかのオーナーたちは長い間行ってきた投資から大きなリターンを得て現金化することを決意している。
セルティクスのオーナーグループは、22年以上前に球団を$360Mで買収して以来のリターンがどれだけになるかをまさにこれから確かめようとしている。チーム売却の準備は先月からスタートし、JPモルガン・チェースとBDT & MSDパートナーズという2つの金融会社が審査行い、可能性がある投資家向けにオンライン上で見られるデータルームが開設されたそうだ。現在球団の約20%を所有するスティーヴン・パリュウカも関心を示していて、買収のためにグループを組む有力候補の1人になる可能性がある。この取引の進行状況に詳しい人物によると、取引は早ければ来年の初めには完了する見通しだそうだ。
取引が完了すれば、セルティクスもリーグ全体のトレンドに加わることになる。NBAは近年、他の主要なプロスポーツリーグよりもオーナーシップの交代が多く見られている。セルティクスは2019年以降にオーナシップ権の所有が移る9番目のNBAチームとなる見込みで、この間にNHL、NFL、MLBの3リーグでは10チームしかオーナーシップ交代が起きていない。元NBAチームオーナーやスポーツ・インベスターたちは、このトレンドの背景には大きなテーマはなく、むしろ単純な要因があると言う。それは、ここ20年間で球団の評価額が急激に上がり、売却の好機となっていることだ。
ある投資家は「私たちはある種の転換点に達しているのかもしれない」と言った。「どのスポーツリーグにおいても、長く所有してきたオーナーの多くは資産が豊富で現金が不足しているような状態にある。彼らにとって、これらのチームが自分の想像を超えてディズニーのような小規模な経済的帝国や信じられないほどの経済力を持つ存在になるとは夢にも思わなかったことだろう」
この一連の売却の波は、どのタイミングで球団を購入したとしても、大きなリターンを得たオーナーたちによって引き起こされている。
ラリー・ミラーが1980年代半ばにユタ・ジャズを約$25Mで購入し、その家族が2020年にライアン・スミスに$1.66Bで売却した。グレン・テイラーは1994年にミネソタ・ティンバーウルブズを$88Mで買い、マーク・ロリーとアレックス・ロドリゲスから$1.5Bのオファーを受けた(ただし、チームの所有権をめぐる争いが今も続いている)。ロバート・サーヴァーは2004年に当時の記録である$401Mでフェニックス・サンズを買収したが、18年後の2022年に$4Bのバリュエーションで売却した。マーク・ラズリーは2015年に$550Mでミルウォーキー・バックスの所有グループに参加し、8年後にはその持ち分25%を$3.5Bのバリュエーションで売却した。マイケル・ジョーダンは2010年にシャーロット・ホーネッツに$275M払い、昨年$3Bで売却した。
マーク・キューバンは2000年にダラス・マーベリックスを$285Mで買収し、昨年には$3.5Bでチームの過半数の株式を売却した。キューバンは、自分の14歳から20歳の3人の子供が将来的にフランチャイズを引き継ぐか分からなかったために売却を決めたと言った。
「もし引き継がなければ、相続の問題をどうするかは悪夢になる」と彼はThe Athleticにメールで語った。
過去5年間で支配権が変わった8つの球団のうち、1つを除いてすべてのチームが現在のメディア権契約が締結される前に最初に購入されたものだったのは、偶然ではないかもしれない。この契約はNBAの経済を一変させる。また、これらの売却は、NBAが新たなメディア権契約を確定する直前に行われていて、その価値はすでに一部の売却価格に反映されていた可能性が高い。
セルティクスは、そのメディア権契約が完了した後に市場に出た最初のチームだ。この売却には、リーグ全体で高い期待が寄せられていて、最終価格については予測が分かれている。あるNBAオーナーは、匿名を条件に、セルティックスが約$6Bで売れる可能性があると見ていると話した。また、スポーツバンカーの一人は$5.5Bと予測している。投資家の一人は$4.75Bになると考えている。フォーブスはチームの価値を$6B、Sporticoは$5.12Bと評価している。
セルティクスの少数株主であるジム・ブレイヤーは「私は新たな投資家の可能性も追加の購入グループにも大きな可能性があると思っている。セルティクスの売却は間違いなく成功するだろうと確信している。しかし、どの程度の成功かは予測できない。セルティクスは素晴らしい球団だ」と話した。
この結果は、NBA記録を更新するかどうかだけでなく、それが未来にどんな意味を持つかもにも注目されている。あるNBAオーナーが予測するように、もしセルティクスが$6B近くで売却されれば、それがラスベガスでのエクスパンションの価格を押し上げ、バリュエーションは$7Bから$8Bに達するかもしれないという見方もある。
ただし、この取引は複雑なものとなる可能性もある。
グロウスベックはチームのリード・ガヴァナーであり、彼と父のアーヴが球団の約30%を所有していると、セルティクスの所有構造についてブリーフィングを受けた情報筋が伝えている。ウィック・グロウスベック個人の持分は約2%とされている。この件に関して、彼は夏の間コメントを控えていた。
7月の声明でグロウスベックは、チームが売却されるのは家族および相続計画のためだと言っていた。アーヴ・グロウスベックは90歳で、ウィック・グロウスベック(63歳)には複数の兄弟がいる。彼らは売却の際に少数株主も巻き込むことが可能だが、少数株主には独自の権利もある。
「非常に複雑な契約だ」と、セルティクスの所有構造について詳しい関係者の一人が語っている。
グロウスベックはチームを段階的に売却する意向を示しており、2025年冬までに大部分を売却し、残りを2028年まで保持し続ける予定だ。しかしこの方法には難航する可能性がある。今年、NBAコミッショナーのアダム・シルヴァーは、現在のミネソタ・ティンバーウルブズの問題が解決した後は段階的な買収を避ける方針を示している。複数の業界関係者は、買収を希望する新たなオーナーが数ビリオンを投資しても、すぐにチームを引き継げないことに抵抗を示す可能性があると指摘している。
さらに、セルティクスの売却価格には、独自のアリーナを持っていない点も影響を与えるかもしれない。彼らはNHLのブルーインズのオーナーであるジェレミー・ジェイコブズが所有するTDガーデンでプレーしており、現在プロスポーツフランチャイズを不動産として活用することがスポーツオーナーたちの主要な戦略となっている。セルティクスを買収する人物は、TDガーデンのテナントとしての立場を継続するか、もしくは新しいアリーナを建設する必要があり、これには大きな追加費用がかかる可能性がある。
「それがどうバランスを取るのか?」と、ある投資家は話した。「明らかにスポーツ界で最高のブランドの一つだが、数ビリオンに達する規模になると、収益とキャッシュフローが重要になってくる。ただ単に希少性やIPの価値だけでは成立しない」
NBAの規則も影響を与える要因だ。セルティクスは今シーズン、チャンピオンシップを防衛するために2023年のCBAの「セカンドエプロン」を超えていて、そのためにチームづくりに厳しい制限がかけられている。このようなペイロールの閾値を超えたチームには、将来の1巡目の指名権のトレードを禁止するなど、ロスターの改善をほぼ不可能にする厳しい制限が課されている。
しかし、セルティクスは今後数年間で$200Mのペイロールを維持し、タックスレベルを超えると予測されている。新しいCBAではタックス率が引き上げられ、最も厳しい措置は来シーズンから適用される。タックスラインを少なくとも$20M超えた場合、今シーズンでは1ドルごとに$4.75を支払う必要があるが、2025-26シーズンにはこれが$7.25に増加する。
この増加は、セルティックスの新しいオーナーにとって、タイトルを獲得したチームをキープするための支払いをするか、それともチームを解散するかという即決断を迫る可能性がある。
「偉大なチームを維持するのはほぼ不可能に近くなっている」と、匿名のNBAオーナーが話した。「もはやお金の問題だけじゃない。ドラフト指名権をキープし、チームを強化することや、ハードキャップを守ることも重要になってきた。誰もチャンピオンチームや偉大なチームを(セカンドエプロンのハードキャップのせいで)解体しなければならないオーナーにはなりたくないだろう。ファンはそんな事情を理解してくれないし、ただ怒りを向けるだろう。ウィックが売却を考え、契約期限に合わせたタイムラインを設定した理由もそこにあると思う」
また、NBAの球団価値がここ20年の急上昇後に、ようやくその成長が鈍化する可能性があるという見方が一部のスポーツ投資家の間で広まっていて、これは買い手にとっても利益になるかもしれない。評価額は今後も上昇するが、そのペースは控えめになる可能性がある。しかし、いつそのようになるかはわからない。
リーグは「シャンパン問題」にも直面している。フランチャイズ価値が上がると、過半数または少数株を購入できる超富裕層の数が減ってくるのだ。この問題に対応するため、NBAはプライベートエクイティ会社やソブリン・ウェルスファンドにフランチャイズの最大20%、全体で最大30%までの購入を認める措置を講じた。
「価格はこの10年から20年で劇的に上昇した」と、セルティクスの少数株主であるジム・ブライヤーは言った。「NBA球団の価値は、リーグの観点からも、また内在的にも引き続き成長していくだろう。過去10年間の成長と同じペースではないかもしれないが、長期的な経済的魅力は非常に高い。もちろん、TV権がその証拠だ」
たとえ価値の上昇ペースが緩やかになったとしても、売却は止まらないだろう。プロスポーツチームは依然として魅力的な資産であり、大きなオファーが誘惑を呼ぶ可能性が高い。
「ますますこうしたチームがみんなの純資産の大部分を占めるようになっている」と、あるスポーツバンカーが指摘した。「紙の上ではビリオネラーでも、大部分が流動性のないチーム所有で構成されていると、キャッシュプアなビリオネラーになってしまう。でも突然、大きな現金を手に入れるチャンスが訪れるんだ」