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レブロンから首にしろと言われたプレーイン・トーナメント責任者が、プレーイン・トーナメントについて語る
レブロン・ジェームズや、ウィザースのコーチのスコット・ブルックスから、プレーイン・トーナメントを考え出したやつは首にした方がいいなどと言われてしまったプレーイン・トーナメントの責任者ですが、その当の本人が、Yahoo Sportsのクリス・ヘインズのポッドキャストにゲストで出演し、「プレーイン・トーナメント」について説明していたので紹介します。
レブロンはプレーイン・トーナメントに思うところがある
— NBA レポーター (@NBA_Reporterjp) May 3, 2021
「このS---を考えた人が誰であろうと首にするべきだ」 https://t.co/YQIXfuC6UQ
その首にしなければいけない責任者の名前は、エヴァン・ウォッシ。NBAでバスケットボール・ストラテジー&アナリティクスのエクゼクティブVPとして6年間働いていて、主な仕事はNBAのスケジュール制作だそうです。
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スケジュールづくりは、通常だとシーズン前の4月から動きはじめます(来シーズンのスケジュールを今つくりはじめたところですね)。まずは、アリーナの空き状況を確認しつつ41試合のホームゲームがどうなるのかを見ていきます。6~7月にはいると、全国放送のマッチアップ(特に開幕戦、クリスマス、MLKデー、ABC土曜の夜等)を考えていきます。これらのメインイベントは、プレーオフ、FA、トレードの結果を見ながら、できるだけおもしろくなるような対戦を組んで行くそうです。それからは、それらの試合を中心にしてスケジュールを組んでいきます。最終的には8月中旬にできあがるそうです。
今シーズンのスケジュール組みは、コロナで延期になった試合のリスケや、テキサスの嵐の影響で延期になった試合があり、特に大変だったようです。
なぜプレーイン・トーナメントを導入したのか?
ウォッシによると、世界的なスポーツリーグのコンセプトにティアーシステムという仕組みがあり、それにより、現在の成績よりも常に1~3位あがろうとするインセンティブを与えているそうです。すばらしい競争があるレギュラーシーズンには必ず素晴らしいティアー制度が組み込まれているとのこと。
例えばプレミアリーグには、優勝だけではなく、トップ4チームはチャンピオンズリーグに行ける権利が得られ、次のティアーに入ったチームはユーロッパリーグ出場権が得られ、最下位3チームは降格させられるといったように、20チームで4つのティアーに分かれています。そのため、どの順位のチームにも、少しでも成績を良くするといったインセンティブが生まれています。
しかし、NBAのティアーはこれまで(カンファレンスで)トップ8チームと下位7チームの2つしかありませんでした。一度そのそれぞれのティアーに入ってしまえば、順位を争うインセンティブが低くなります。たしかに4位以上に入ればプレーオフでホームの優位性が得られますが、それだと5位や8位になってしまったチームにはもっとがんばろうというインセンティブが働きません。どちらかというとプレーオフでのマッチアップがインセンティブになってしまい、勝てそうな相手とのシリーズにするために、わざと負けたりするチームも出てきてしまいます。
そうした状況を打破するために生み出されたのが、NBAの「プレーイン・トーナメント」です。
ウォッシは、「レギュラーシーズンの大切さを消さないようにしつつも、どう競争するインセンティブを与えるかが課題だった」と言っています。
このプレーイン制度の導入により、NBAに少なくとも4つのティアーができました。
● 1位~6位:プレーインを避けるために上位6位に入ろうとする
● 7位~8位:そうでなければ7~8位に入ろうとする
● 9位~10位:最悪、9位から10位に入ってプレーオフのワンチャンを狙う
● 11位~:10位が手に届かない絶望的なチーム
(*プレーオフで優位なホームの上位4に入るというものが入るかもしれません)
これにより、特にシーズン終盤での1試合の価値をあげられたそうです。たしかに、例年だとシーズン終盤は選手を休ませたり、意味のない試合もあったりしましたが、今シーズンは、残り2試合になってもあらゆるティアーで激しい戦いが繰り広げられました。
また、ドラフトのロッタリーになっても、ドラフト上位に入れる確率は高くありません。ドラフトでいい指名権を得られないのであれば、球団には10位になってプレーインに入り、プレーオフをワンチャンに狙うインセンティブも生まれてきます。せめて9位に入れば、1試合だけになるかもですが、観客入場料も手にいれることができます。
しかも、プレーイン・トーナメントは、6日間で4回のエリミネーションゲームを生みだすことができるため、プレーオフ前にリーグを盛り上げて、そのままの流れでプレーオフに突入することができるという放送局的な旨みもあるようです。スポーツでいちばん盛り上がるのが、必勝のエリミネーションゲームですからね、ファンも喜ぶでしょうし、ABCやTNTも喜びます。NBAは新たな金が鳴る木を見つけたと言ってもいいでしょう。
バブルのプレーイン・トーナメントと違うのは、ゲーム差がないことです。今シーズンは、9位と10位のゲーム差がいくら大きくても、10位に入ればプレーインに入れるように決めました。これには理由が2つあり、まず1つ目は、コロナで厳しい試合をしたチームも多くなると見込まれていたため、そのようなコロナで影響を受けたチームにもチャンスを与えるため。(ラプターズさん…)
2つ目は、放送枠の確保(広告枠)です。放送する側も、ゲーム差でそれがあるかないか不透明な状況におかれるよりも、あると明確にした方が売上を計算に入れやすいという思惑もあったようです。
また、ウォッシが、レブロンから首にするべきだと言われたことをどう思っているのか答えてくれました。
そもそもプレーイン・トーナメントは、彼がNBAに入る前からあるコンセプトで、自分はそれを考えた人間ではないので、レブロンが言うような首になるべき対象人物ではない。また、アダムが言うように、社会問題に声をあげてよくて、自分のリーグのことに声をあげないのは矛盾している。もちろん、選手たちの懸念は共有されるべきだし、議論されるべきだと思う。そのような議論により、より良いものをつくることができる
まだ来シーズンもプレーインがあると決まった訳ではありません。今シーズンのプレーインはNBA理事会とNBPAが1年ベースで合意したものだそうです。そのため、このプレーインの結果を受けて、NBA、オーナー達、選手達、局で議論をして、また来年も導入するのか、導入するとしたらどんなルールで続けていくのか等を決めていくそうです。特に、選手たちのサラリーはレギュラーシーズンまでのものなので、プレーインでどれだけ選手たちにプラスでお金が入るのかも大きなポイントになりそうです。
なにはともあれ、すでにシーズン終盤が例年よりもかなり面白くなりました。特にこのラスト数試合は順位をかけてアツイ戦いが続き、プレーインも負けたらシーズン終わりなので激しい戦いになりそうです。The Ringerのビル・シモンズは、順位が拮抗しているのはシーズンが72試合と通常よりも短くなったからだと言っていましたが、82試に戻っても新ティアー制度の「どの順位にいても成績をあげようとする」効果は出るのではないでしょうか。
プレーインに入ってしまう選手たちやチームには申し訳なく感じる部分もありますが、いちファンとしては今後もプレーインを続けて欲しいです。
参考サイト:LeBron said fire him; I talk to Evan Wasch, NBA exec responsible for the play-in tournament