見出し画像

NBAフリーエージェンシー:フライトリスク・ガイド

2024 NBAのフリーエージェンシーでは、フリーエージェントの多くが所属していたチームと再契約すると見られていますが、中には彼らをキャップスペースがあるチームに取られてしまうリスクに直面しているチームもあります。そのフリーエージェントに出ていかれてしまえば補強するためにMLEなどのエクセプションしか使えなくなるため、その代わりを務められる選手を獲得するのができなくなり、戦力が落ちてしまいます。このようにフリーエージェンシーで選手に逃げられてしまうリスクの事をフライトリスクと呼びます。

今回はフリーエージェンシーがはじまる前に、今年のフリーエージェンシーの主なフライトリスクに焦点を当てたいと思います。

ポール・ジョージ

このフリーエージェンシーでファースト・ドミノだと言われているのがクリッパーズのポール・ジョージです。

ポール・ジョージには$48.78Mのプレーヤー・オプションがあり、これを取り下げればフリーエージェントになれます。

ジョージはNBAトップウィングのひとりで、かなりのチームにそのままフィットできるので、ジョージが市場に出ればほぼ全てのチームが興味を持つと思います。優勝争いをするようなチームは少なくてもどうすれば彼を獲得できるか検討するでしょう。その中でももっとも彼の噂が出ているのが、ジョージにマックスをオファーできるキャップスペースのあるシクサーズとマジックです。

これらのキャップチームはジョージがどうするか決めるまでキャップスペースを温存してプランBに動かないため、どうしても市場の動きが弱まります。ジョージが今シーズンのフリーエージェンシーの鍵を握っていると言っても過言ではありません。

クリッパーズとの契約延長

クリッパーズはジョージと今でも契約延長ができます。ただ、ジョージの望む数字をオファーしていないのか、契約延長に合意はありません。

噂によると、クリッパーズはジョージに、昨年の夏にカワイ・レナードと契約した3年$152.4Mあたりのオファーをしていて、それから内容をオファーを良くしていないそうです。

その理由として、ジョージはケガをしがちで契約に見合うポテンシャルを完全に発揮できていないためとか、ジョージは故郷のロスを離れないだろうとか言われていますが、要はクリッパーズはジョージやレナードのアウトプットがマックスに値しない選手だと考えているのだと思います。そうなると、ジョージが他チームからのより良いオファーに行ってしまう可能性が出てきますが、クリッパーズは他チームのオファーにいつでもマッチする事ができます。おそらく、クリッパーズはFA市場でポールがどれだけ得られるのか見極めてからオファーをし直そうとしているのだと思われます。

しかし、交渉の駆け引きのレバレッジをかけられるのはクリッパーズだけではありません。ポールにも大きなレバレッジがあります。それはフライトリスクです。

ポール・ジョージのフライトリスク

クリッパースのサラリーキャップは現在12人で$220M以上(ポール・ジョージとジェームズ・ハーデンのキャップホールド含む)なので、ジョージが出て行ってしまえば、MLEで3&Dウィングを探さなくてはいけなくなります。今シーズンのMLEは$12.8Mなので、その金額ではジョージレベルの選手は得られないのは明白で、しかも指名権もなくキャップスペースにも余裕がないので、戦力補強方法がかなり制限されてしまっています。これでは優勝を狙うどころか激戦のウェスタン・カンファレンスではプレーイン争いにまで落ちてしまう危険もあります。

もしクリッパーズが本気で優勝争いをするとすれば、ジョージをキープするしかありません。いくらかかろうがジョージとの再契約はマストです。2023年の12月時点でスティーヴ・バルマーのマイクロソフトの年間配当金は$999.6Mになると言われていました。今年に入ってマイクロソフトはアップルを抜き、企業時価総額で世界1になっているので、配当金は$1Bを超えているかもしれません。バルマーにとってはいくらタックスを払っても全く問題ないはずです。

ジョージのエージェントのアーロン・ミンツはかなり優秀なので、この契約の後の契約延長も視野に入れているはずです。契約延長は前年度のサラリーがベースになるため、クリッパーズからなるべく高い金額を引き出したいので、市場で他チームからクリッパーズのオファーよりも良いオファーを引き出す事が予想されます。そうなれば、クリッパーズはそのオファーにマッチするしかありません。

クリッパーズとジョージの駆け引きはギリギリまで続きそうです。

ジョージのマックス金額

では34歳のジョージはいくらもらえるのでしょうか?

・クリッパーズとの再契約:4年$221M
・他チームとの契約:4年$212M

その差は$9Mです。オーランドには州税がないので、その差はもっと広がるでしょう。もしクリッパーズのオファーが4年190Mで、その差が$20Mになった時、ジョージはどうするのでしょうか?イーストのチームに移籍するのにジョージが納得する差額はいくらになるのでしょうか。

オプトイン&トレード

最近はもしジョージがオプトインすれば、それはトレード要求のサインだと言われています。

ジョージが優勝争いができるようなチームに行くのは、これが最善手です。サイン&トレードの噂では、ニックス、ウォリアーズ、キャヴァリアーズ、ロケッツの名前が出ていました。優勝を狙うとしたらイーストのニックスかキャヴスでしょうか。ただ、ニックスはもうNBAのトップ3&DのOG・アヌノビーとミケル・ブリッジスを獲得しています。ニックスの線はもうないでしょう。

ジョージのオプトイン&トレードのトレード相手はファーストエプロンのハードキャップになってしまうので、トレード・パートナーも限られます。セカンドエプロンのセルティクス、ナゲッツ、ウルブスとのO&Tは不可能で、バックスやヒートもムリとは言いませんが現実的ではありません。

ウォリアーズはクリス・ポールの契約を保証しなければエプロンを回避できますが、去年はプレーオフすら逃していて優勝候補ではないので、クリッパーズからマックスを引き出すためのレバレッジとして使われるかもしれませんが、ジョージの移籍先としての可能性は低そうです。

サンダーも噂にあがっていますが、もしサンダーに行けば、チェット・ホルムグレンやジェイレン・ウィリアムズがマックス級のサラリーが入ってくる2年後には豊富な1巡目指名権をつけられてサラリーダンプされてしまう可能性もあります。サンダーは避けた方がいいでしょう。

もしジョージがシクサーズ行きを決めた場合、クリッパーズは何らかのリターンを得るためにオプトイン&トレードを頼みたいところですが、問題はシクサーズには契約中の選手がジョエル・エンビードとポール・リードしかいない事です。クリッパーズのようなセカンドエプロン超えのチームは選手をサイン&トレードで獲得する事ができません。ジョージがシクサーズに行くにはフリーエージェンシーとして行くしかないでしょう。

また、ネッツがオールスターでもないミケル・ブリッジスをニックスにトレードして1巡目指名権を5つも獲得しました。まだブリッジスよりも評価が高いジョージには1巡目をいくつ出せばいいのでしょうか?今なら最低でも4つが相場だと思います。この中で4つも1巡目を出せるチームはあるのでしょうか?(Hello, Thunder!! How about you, Pelicans? Spurs?)

ジョージ本人は今後について、「今の時点では必ずしも優勝を追い求めているわけではない…私が追い求めているのは正しいスタイルのバスケットボールをプレーする事だ」と語っていて、何としても優勝したい訳でもないようです。そう考えると、ジョージにとってはお金よりも故郷に残る事が最優先なのかもしれません。

ちなみにジェームズ・ハーデンもジョージと同じようにフライトリスクです。ハーデンについては後述します。

レブロン・ジェームズ

レブロンはレイカーズに戻ると確実視されているので、フライトリスクのリストに入れるか迷いましたが、やはりリーグを代表する選手なので取り上げる事にしました。

レブロンがどうするのかもわからないのに、レイカーズがレブロンの息子のブロニーを2巡目後半で指名した直後は、すでにこのような父と息子が同じチームでプレーするかのような盛り上がりです。

ここまで来てレブロンがフリーエージェントになってシクサーズに移籍したらインターネットが爆発してAIが暴走し出すかもしれません。

仮にレブロンのレイカーズ行きが決まっていたとしても、まだ契約金額や契約年数などをどうするか決めなければいけません。しかし、レブロンがレイカーズとの交渉で有利に立つために、シクサーズのような他チームに行きたい等のリークも出てきていません。これはレイカーズとレブロンが「お互いを尊重する」フェーズに入っているように見えます。これは後述するクレイ・トンプソンとウォリアーズとの関係とは真逆のようにさえ感じます。

ここではレブロンのフライトリスクというよりも、レブロンの選択肢やレイカーズとの契約の注目ポイントについてまとめようと思います。

レブロンの選択肢

レブロンには$51.4Mのプレーヤー・オプションがあり、6/29にオプトインするかオプトアウトしてフリーエージェントになるか決める事になっています。

ここでレブロンが取れる選択肢は3つあります。
・オプトインしてレイカーズと契約延長
・オプトアウトしてレイカーズと再契約
・オプトアウトして他チームと契約

この選択肢別にレブロンが得られる契約内容を見ていきましょう。

まず、レブロンが契約延長を選んだ場合、マックス契約は3年で$164Mになります。

そのサラリーの内訳は:
・2024-25: $51.4M (オプトイン)
・2025-26: $53.9M
・2026-27: $58.3M (42歳)

オプトアウトして再契約した場合のサラリーの内訳は3年で$162Mになります。

・2024-25: $50.0M
・2025-26: $54.0M
・2026-27: $58.0M

オプトアウトして他チームと契約場合のサラリーの内訳は3年で$157Mです。

・2024-25: $50.0M
・2025-26: $52.5M
・2026-27: $55.0M

単純にサラリーだけなら契約延長の方がいいですが、オプトアウトしてからの再契約になると以下の事が可能になります。

  • 契約延長はオリンピック後の8/18までできませんが、再契約には7/6になったらサインできるます。そのため、オリンピックやその練習試合などでのケガのリスクを回避できます。

  • ノートレード条項がつけられる。契約延長ではこれはつけられません。

  • フリーエージェンシーを匂わして、レイカーズにロスターのアップグレードするようにプレッシャーをかけられる。

レイカーズはスター選手を「テイクケア」するというのがオーナーのジニー・バスの方針なので、たとえレブロンが40歳になろうが金額は問題なく払うと思います。今回も「オプトアウトからの再契約」の3年$162Mを払う準備ができていると言われています。そのため、今回のレブロンの契約の見所は、レブロンがレイカーズに戻るかどうかではなく、3年目をギャランティーするかとか、プレーヤー・オプションをつけるかなどの契約ストラクチャーの話になると思います。

はたしてレブロンはノートレード条項を得られるのでしょうか。

クレイ・トンプソン

この夏にフリーエージェントになるクレイ・トンプソンですが、フライトリスクというよりは、優勝4回した生え抜きのステフ・カリー、ドレイモンド・グリーン、クレイ・トンプソンがずっと一緒に同じ球団にい続けられるのかがポイントになりそうです。

ウォリアーズはこの数年でこれまでリーグでロスターにいちばんお金を使って来ていますが、そのような大金を持ってしても昨シーズンはプレーオフ進出ができませんでした。現在も来シーズンの優勝候補には数えられていません。そうなると、そのような大きな金額を使う事はチーム運営の観点からはあり得ません。オーナーのジョー・レイコブもタックスから抜け出さなければいけないと話していました。相当良い選手を獲得できない限り、タックス回避路線が基本になるでしょう。

現在ウォリアーズのキャップスペースは、10人で145Mになります(クレイとクリス・ポール抜き)。タックスまでなんと$27Mほどの余裕があり、2021-22シーズンからタックスを払っているチームにしては新鮮な数字です。

残りのロスターをタックス以下で埋めるためには、クレイには$19Mしかオファーできません。その場合は控えのPGとビッグをミニマムで賄う事になります。それにリピータータックスから完全に抜け出すには、その次のシーズンでもタックスを回避する必要があります。しかし、その時はジョナサン・クミンガとモーゼス・ムーディーの再契約/契約延長も入ってくるので、今シーズンからのサラリーのアロケーションが重要になってきます

しかもヘッドコーチのスティーヴ・カーは昨シーズン最後のイグジット・インタビューで来シーズンについて話した時、クレイはベンチスタートになる選択肢もあると言及しており、優勝も狙えない中で控えの選手に$20Mを使うのは厳しいものがあります。そう考えると、ウォリアーズが昨シーズン前にクレイにオファーした2年48Mの契約延長はかなりリスペクトしたもののように見えます。

実際に、クレイも34歳のシューターで、リバウンドもパスも上手い訳ではありません。1試合で30分もプレーすれば唯一のプラススキルのシュートの質やショットクオリティーに影響しそうです。今のクレイにはベンチロールがベストなのではないでしょうか。

しかし、シンプルにペリメーターのスリーが足りていなく、ディフェンスをそれほど気にしないチームにとってはクレイのスリーポイントには$20M以上の価値はあると思います。もしそのようなチームがクレイにウォリアーズよりも大きな契約をオファーしたら、彼は移籍してしまうのでしょうか。

そうなるとウォリアーズはクレイの代わりをMLEの$128.8Mで探す必要があります。ロスター構成的にはクレイの代わりと言うよりもステフの控えのボールハンドラーやスペースをひろげられるビッグに使うでしょう。

クレイに興味を持っているチームにはマジック、マヴス、シクサーズの名前があがっています。この中でキャップがあるシクサーズはプランAはポール・ジョージで、プランBはブランドン・イングラムだと言われていて、クレイは抑えの抑えのプランDあたりになっていると思われます。また、マジックはクレイや後述するKCPには短期的な2年$50M規模の契約しかオファーしないと見られていて、クレイの希望の3年契約とはかけ離れています。しかもマジックは2年後にバンケロやヴァグナーのルーキー契約マックス延長が控えていて(たぶん)、2年後にはどうなるかまったくわかりません。それならクレイは少ない金額ではありますが、ウォリアーズと契約してステフとドレイモンドと一緒に残った方が良いのではないでしょうか。

こうして見ると残念ですが、ステフ、ドレイモンド、クレイの3人を一緒にキープする以外にクレイと契約する理由が見つかりません。ウォリアーズもクレイの優先順位は低いようで、まずはポールの$30Mでどのような選手を獲得できるかどうか動いているそうです。もしポール・ジョージのようなオールNBA級の選手を獲得できれば、カリーとともにプレーオフ争いができるでしょう。逆に言えば、それはウォリアーズがクレイのことをプレーオフ争いや優勝争いに貢献できる選手とは考えていないことを示唆しています。もしクレイが優勝争いに貢献できて本当にクレイのフライトリスクを恐れるなら、彼が納得いくオファーをすればいいだけの話です。

全体的に見てみると、クレイの需要は大きなものではなさそうなので、クレイはウォリアーズに残った方が良さそうです。注目ポイントはそれがいくらになるのかだと思います。

ちなみにウォリアーズがポール・ジョージをマックスのオプトイン&トレードで獲得するとします。その場合、ウォリアーズはすでにセカンドエプロンのハードキャップになっているので、クリス・ポールの契約を保証せずにキャップをクリーンにした後で、アンドリュー・ウィギンスとムーディーを中心としたパッケージをつくる事になると思います(ポールをクリッパーズが欲しがるような選手とトレードするのもあり)。その時にクレイのバードライトは破棄しなければいけません。そうなるとクレイとはフリーエージェンシーとしてMLEの$12.8Mでの再契約になります。他にやりようはあるかと思いますが、かなりウルトラC並みのキャップワークが必要となります。ジョージ獲得は現実的ではありません。

ケンタヴィアス・コールドウェル=ポープ

KCPが$15.4Mのプレーヤー・オプションをオプトアウトしました。KCPは6/30にフリーエージェントになります。もしKCPを失えば、ナゲッツは昨シーズンのベストラインアップだった重要なピースを失う事になり、戦力低下は免れません。しかもナゲッツのプレースタイルはお互いのプレーの相乗効果によって成り立っています。KCPを失うという事は、チャンピオンシップを失う事と同義だと思います。優勝を狙うチームとしてはそれだけは避けなければいけません。

ナゲッツはレジー・ジャクソンの$5.25Mの契約をホーネッツに3つの2巡目指名権をつけてサラリーダンプをしましたが、それでも現在11人で$191.1Mとセカンドエプロンを超えてしまっています。この状態でKCPが出て行ったとしても、タックスの$171Mを超えているので、彼の代わりの3&Dとジャマル・マレーの控えのPGをミニMLEの$5.1Mで探すか、若手の急成長にかけるしかなくなります。

しかもナゲッツは3PTAが31.2本とリーグ最下位で、KCPはそのただでさえ少ないスリーポイントを撃つ役割を担っています。同時に、KCPはディフェンスでも相手のボールハンドラーを守っています。ナゲッツにとってKCPは変えの効かない貴重なロールプレーヤーなのです。ナゲッツは本当のフライトリスクに直面していると言っていいでしょう。

KCPに興味があるのはキャップスペースがあるシクサーズとマジックだそうです。シクサーズやマジックにKCPを奪われないために、彼に市場価値以上のサラリーを払うと、ナゲッツはセカンド・エプロンを超えてしまいますが、ヨキッチのプライムを無駄にする訳にはいきません。彼がプライムでいる限り、優勝を目指すべきです。KCPの契約は最低でも4年$100M以上はいくのではないでしょうか。NBAのベスト・ラインアップのひとつをキープするためには仕方ありません。

もしナゲッツがKCPを失った場合、ナゲッツはポール・ジョージとの契約延長&トレードに興味があると言われています。そうなるとMPJとジーク・ナジがトレード・パッケージに含まれると言われています。

アイゼィア・ハーテンスタイン

OG・アヌノビーもフライトリスクに入れていたのですが、すでにニックスと5年$212Mの再契約をしたので省きます。ただ、アヌノビーのサラリーはハーテンスタインとの再契約に関わってくるので、少しだけ触れさせてください。

アヌノビーは年間$35M~$40Mの契約を得られると予想されていて、実際に1年目が$36.6Mからはじまる契約にサインすることになりました。なぜこれがハーテンスタインとの再契約に関係してくるのかと言うと、ニックスはネッツからミケル・ブリッジスを獲得した時に、出したサラリーよりも大きなサラリーを引き取ったためにファーストエプロンでハードキャップになってしまっていて、全体のサラリーをファーストエプロンの$179Mを超えてはいけなくなっているためです。

これでニックスのキャップスペースは11人で170.4Mになり、ファーストエプロンまで$8.55Mしか余裕がありません。残りのロスターをルーキー&ミニマムで埋めると、ハーテンスタインには$4Mほどしか払えない状況です。

もしニックスがハーテンスタインをキープしたいなら、まだいくつか打つ手が残っています。再びトレードをして、出したサラリーよりも低いサラリーを受け取れば、ファーストエプロンを超えられるらしいのです。そうなるとせっかく集めた「Nova Knicks」のメンバーひとりを犠牲にするか、ランドルやミッチェルを出さなければいけなくなりますが、ハーテンシュタインはキープできそうです。

他には、まだ正式になっていないミケル・ブリッジスのトレードに3つ目のチームを巻き込んで、マイルス・マクブライドをトレードに出す方法も考えられます。そうすれば、出て行くサラリー($24.7M)が受け取るサラリー($23.3M)よりも大きくなるので、ファーストレプロンでのハードキャップがなくなります。3つ目のチームへの見返りに指名権のお土産は持たせなければいけませんが、ハーテンスタインキープの現実的な道のりが見えてきます。

しかし、そんなニックスに追い打ちをかけるように、ネッツがセンターのニック・クラクストンと4年$100Mで再契約して、ハーテンスタインの市場価値をあげてしまいました。そもそもニックスはアーリーバードのハーテンスタインに最高でも4年$72.5Mしかオファーできないため、彼をキープするのは厳しかったのです。

このような状況で彼をキープするためには、1年契約の$10Mなどの手頃な数字でサインして、次のシーズンにその1年分を取り返せるような大きな5年契約を裏で約束しておく方法もあります。しかし、2年後にはブランソンとランドルの契約延長か再契約のサラリーが控えています。ブリッジスや他のNova Boysたちも契約延長が可能になります。今ハーテンスタインにコミットするべきでしょうか?

実際にニックスはマクブライドのトレードを模索していたようですが、現時点でニックスはマクブライドはキープする意向のようです。イコール、ハーテンスタインは諦めたという事になります。もしハーテンスタインをキープすれば今年はセカンドエプロンを超えてしまい、その後次々とやって来る契約延長に対処しずらくなると判断したのでしょう。サラリーのアロケーションを考えれば、いつまでも全員をキープする事はできません。悲しいですが、これがNBAの現実です。

ジェームズ・ハーデン

来シーズン35歳になるジェームズ・ハーデンですが、クリッパーズは昨シーズン前に彼を獲得するために2つの1巡目指名権、1巡目指名権スワップ、2つの1巡目指名権を手放しています。クリッパーズもこのままハーデンを歩かせるような事はしないでしょう。

そうなると、焦点はハーデンは何年でいくらの契約で戻ってくるかです。

そのベースになるのがカイリー・アーヴィンのマーヴェリックスとの3年$126Mの契約ではないでしょうか。その場合の1年目の$38Mはマックスの$49.3Mには及びませんが、今のハーデンに$35M以上をオファーするチームはいないと思うので、これくらいが妥当なところではないでしょうか。

ハーデン本人も契約年数はレナードとジョージに揃えたいようで、3年という期間も問題ないと思います。

デマー・デローザン

8月に35歳になるデマー・デローザンもフリーエージェントになります。ブルズとの再契約も考えられますが、ブルズが再建かプレーオフを狙うのか方向性がハッキリと見えてこないので、何とも言えません。もちろんブルズとなら他チームよりも大きな契約ができますが、その場合は優勝は狙えないと思います。

ブルズが再建に舵を切った時にデローザンが彼らのフライトリスクになるかどうかはさておき、デローザンの選択肢を見てみましょう。

デローザンはサイン&トレードする事もできますが、前述したポール・ジョージのところでも指摘した通り、優勝候補でS&Tできるチームは限られています。レイカーズも可能はありますが、条件がかなり制限されます。しかも優勝候補チームになると、相手のハードキャップを避けるためにデローザンよりも大きなサラリーを引き受けなければいけませんが、再建になるブルズにそのような大きな契約は必要ありません。そうなるとS&Tの相手はかなり限られます。

噂ではクリッパーズがジョージを失った場合、デローザンをS&Tで狙うというものもあります。その場合のサラリーマッチにはノーマン・パウェルかPJ・タッカーが入るでしょう。

フリーエージェンシーでキャップスペースがあるチームを探してもいいのですが、再建チームが多いので、デローザンを必要としていません。そんなチームから得られるとすれば短期の2年$50M~$60Mなどの契約になるでしょう。

こうしてみると、優勝を狙うならMLE/ミニMLEなどの安い契約を選ぶしかなく、金を取るなら再建チームしかありません。両取りならシクサーズがマジックですが、ここも同じ事を考えているFAとの激戦地帯です。どうすればいいにかもどかしいところです。

ブルズはザック・ラヴィーンをトレードに出したがっているようで、チームづくりはかなり流動的ですが、このままデローザンとパトリック・ウィリアムズと再契約すればタックスを超えそうなところまで来ています。プレーイン争いのチームとしては高過ぎます。ジョッシュ・ギディーを獲得した事ですし、早めに再建に入った方が良さそうですが、一体どうするのでしょうか。早めに決めないと、デローザンの乗ったフライトはすでに離陸してしまったという事態になりかねません。

ディアンジェロ・ラッセル

レイカーズのPGのディアンジェロ・ラッセルも$18.7Mのプレーヤー・オプションを取り下げてフリーエージェントになれます。

レイカーズのキャップスペースは、ジャクソン・ヘイズとキャム・レディッシュがFAになる+レブロンのキャップホールドを入れれば、9人でおよそ$153.6Mになります。

そうなると、もしラッセルが出て行ってしまえば、レイカーズはスターティング・ポイントガードをMLEの$12.8Mで探さなければいけなくなります。今年のPGのフリーエージェントには、ジェームズ・ハーデン、カイル・ラウリー、マーケル・フルツ、タイアス・ジョーンズ、モンテ・モリスがいますが、ハーデン以外は見劣りしてしまいます。そのハーデンもクリッパーズとのバードライツを放棄してまでレイカーズとMLEで契約するような事はしないでしょう。

ここはラッセルを残ってくれるように説得するしかなさそうです。

ラッセルはNBAのPGでも上位15位前後になると思います。それに見合う市場価値は最低でも$25Mくらいはつくのではないでしょうか。マジックが興味が彼にあると言われているので、ラッセルはマジックのようなキャップスペースがあるチームを使ってどこまでレイカーズからお金を引き出せるかが鍵となります。

また、ラッセルはオプトインしたとしても、再契約で残るにしても、レイカーズにいる限り、トレーディング・ブロックに入ったままなのは代わりません。でもトレードならバードライツもキープできます。FAでの契約の内容がレイカーズのオファーとあまり変わらなければ、レイカーズに残った方があとあと良さそうです。

ロイス・オニール

「セカンド・エプロン×バードライツ・トラップ」というキャッチコピーが合いそうなのがサンズのロイス・オニールです。

サンズはオニールを抜きにしても、11人ですでにセカンドエプロンを$17Mも超えているため、彼が出て行ってしまえば貴重な3&Dをミニマムで埋めなければならなくなります

ここはかなり過払いになったとしてもオニールをキープしたいところでしょう。

気になるオニールの市場価値ですが、$10Mあたりだと言われています。オニールのエージェントもサンズの状況を理解して強気な交渉をしてくると思います。サンズのインサイダーのGambo(@Gambo987)も3~4年契約になると言っているので、最低でも4年$40Mは行くと思われます。足元を見て交渉すればもっと取れるかもしれません。

サンズとしても悪い話ではありません。このようなミッドサイズのサラリーは後でトレードで使えるかもしれないので、トレード用にMLEくらいまで払ってしまっても良いのかもしれません。

デリック・ジョーンズ Jr.

ミニマムで契約したDJJはポイント・オブ・アタック・ディフェンスとスリーポイントでマーヴェリックスのNBAファイナルズ進出に貢献しました。しかし、マヴスは現時点でタックスチームです。そのため、マブスがDJJにオファーできるのは$5.1Mと市場価値よりも低い契約になってしまいます。

マヴスがタックスを回避しつつDJJにMLEの$12.8Mのオファーをするためには、AJ・ローソンを切るか、誰かをトレードしてキャップスペースを空けるしかありません。

現在の噂だと、ティム・ハーダウェイの$16.1MをトレードしてMLEを使えるようにする方針のようです。プレーオフの後、GMのニコ・ハリソンもDJJとの再契約が最優先のひとつだと言っていたので、DJJは最低でも$12.8Mの契約がもらえることになります。ただ、他チームがDJJにそれよりも大きな契約をオファーした場合、マヴスはDJJを逃す可能性もあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?